第6話 ジオラマ計画
紅茶だけ頼むと、余り物のパンの耳の揚げパンをご馳走になる。
「ジオラマの件。」
と、店長のおばちゃん。
話の内容は、イベントで飾るジオラマの件。
どうやら、本当に作るのだが、ジオラマの設計や製作を自分に手伝ってほしいという。
別に断る必要はないし、断る理由も無い。むしろ、光栄に思う。
費用もお店と爺さんの模型屋、更にはJRも少し持ってくれるという。
「あの、イベントの後のジオラマってどうするのですか?」
「まぁまぁなスペースよねぇ。倉庫に置けるけど、動かしたりメンテナンスしたりしないとだから―。」
要するに、自分の家で保管して欲しいと遠回りに言われた。
「テーマは前聞いたよね。それに沿って、制作して欲しい。」
(要するに、頼むだけ頼んで、後は全部自分に丸投げ―。)
と、自分は思う。
「君の銀河鉄道を作ればいい。」
と、年上の女子大生が言う。
「自分の―。」
自分は一瞬、脳裏に紅いDD51ディーゼル機関車が牽引するブルートレインや、ぶどう色の旧型電気機関車がぶどう色や青色の旧型客車を牽引する列車、貨物列車が走る様子が浮かんだ。
「何となく、頭には浮かんでいるのですが、上手く表現できない上、形が良く見えなくて―。」
「ねっ!この日空いてる?」
と言うが、今日は4月の終わり。女子大生が言うのは来週、5月の第1周。要するに大型連休の日を差している。
年上の女子大生が言う日は、確かに予定はない。
「碓氷峠鉄道文化むら行こう!何となく浮かんでいる物が、しっかり「これだ」ってなるヒントが見つかるかもしれない。」
大宮の鉄道博物館に行くよりは気軽に行ける。
それに、大宮の鉄道博物館はどうも都会のごちゃごちゃしたJR線の中にあるように感じるので、自分の描く銀河鉄道を形にするには難しい。
碓氷峠鉄道文化むらは、峠越えの鉄道をメインに扱っているが、電気機関車が大量に展示保存されているし、ジオラマも鉄道博物館のそれと違って、あまりごちゃごちゃしてもいない。
「是非、行きましょう。」
と、自分は答えた。