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7-4

 クイの手がかりが得られぬまま、静かに夜が更けていった。

 兵が明かりを灯して回ったが、オレリアスは、じっと地図を見つめて動かない。会議室にブラッドが入ってきても、オレリアスは、顔を上げる気にもならなかった。

「オレリアス、大丈夫かい?」

 何度、同じことを訊かれたか。

 オレリアスが黙っていると、ブラッドは、小さく嘆息して、手にしたコップを差し出した。

「睡眠薬が入っている。少しは休まないと、体に毒だよ。」

 オレリアスは、そのコップに顔を背けた。

「必要ない。」

 すると、ブラッドは、いつになく真剣な顔で、オレリアスの肩をつかんだ。

「聞くんだ、オレリアス! この先、お前は、マーティンと戦うことになるだろう。こちらの戦力で、マーティンの相手に足るのは、お前だけだ。なのにお前は、マーティンの策略にはまって、振り回されている。お前は、今の状態のまま、あのマーティンとやりあうつもりなのか?」

 疲弊しているつもりはなかったが、オレリアスは、ため息をついて目を伏せた。

「……そうだな。」

 オレリアスが知っているのは、少年期のマーティンだけだ。だが、マーティンが強いことは分かっていた。国王軍で異例の出世をしていることも知っていたし、もともと、少年の頃から様々な才能を持った男だった。そんな男が国王軍を従えて、オレリアスの前に立ちはだかっている。

「わかったよ。俺が悪かった。」

 言いたいことはあったが、オレリアスは、ブラッドから睡眠薬入りのコップを受け取った。中を覗きこむと、薄茶色のはずのお茶が、底の方で赤く濁っている。

「……ブラッド、これを飲むのか?」

 すると、ブラッドは、いつもの笑顔に戻って、

「もちろん!」

と朗らかに笑った。

「新しい情報が入ったら、すぐに起こすよ。大丈夫!」

 そう言ってポケットから取り出した小瓶の薬は、猛烈な悪臭を放っていた。

「ほら、気付け薬も用意してある。」


 オレリアスは、コップを手に会議室を出た。

 会議室の隣には仮眠室があって、そこには、一人用のベッドと小さなテーブルが置かれている。

 オレリアスは、仮眠室のベッドに腰掛けると、大きく息を吐き出して、睡眠薬入りのお茶を飲み干した。匂いも味も、薬臭いということもなかったが、飲みたくないものを飲んだという不快感だけがのどに残る。

 オレリアスは、深呼吸をして自分を納得させると、コップをテーブルに置いて、ベッドに横になった。

 睡眠薬とやらは、いつ効いてくるのだろう。

 まだ思考はクリアで、少しも眠れそうにない。ただ、横になってみると、体のあちこちが凝り固まっていることに気が付いた。一日中、同じ姿勢でいたからか、思ったより筋肉が疲労している。オレリアスは、その筋肉の開放感に浸りながら、ゆっくりと目を閉じて、薬が効いてくるのを待った。

 過去の記憶、現在の状況、未来への希望。

 そんなものが、一度に頭に思い浮かんで「早く、早く」とせきたてる。

 こんなに、はやる心で眠れるのだろうか。

 だが、そう思ったのも束の間、オレリアスの意識は大きく引っ張られた。

 現実に残ろうとする意思を引き剥がすかのように、大きな力が、オレリアスを夢の中へと引きずりこむ。


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