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訓練所を見渡せる木の根元までやってくると、オレリアスは、見上げもせずに、
「スフィア、警戒を解除して、兵たちに休みをやってくれ。」
と呟いた。兵たちに休みをやれるのは、久しぶりだ。
すると、木の上から、スフィアの声が降ってきた。
「最低ね!」
その言葉にオレリアスは笑った。
予想通りの言葉。
オレリアスは、そのまま、
「あとは任せる。」
と言って、その場を離れた。
「任せるって、クイをあのままにするつもりなの?!」
スフィアがいつもの調子で責め立てていたが、オレリアスは、何も答えず、足も止めなかった。
まとわりつく煩わしさを振り払うように、オレリアスは、通いなれた道を無心で歩く。
ひたすら歩き続けていると、麦畑の向こうに中心街が見えた。
(……言われなくても、分かっている。)
実際、クイは、充分すぎるほど結界士として働いていた。
彼女がウテリア領の結界を整えたお蔭で、領内に瘴気を感じなくなっていたし、魔獣の目撃情報も聞かなくなった。それに、彼女が結界術を教えたお蔭で、あのヒューが生き生きと仕事をする姿を初めて見た。
(教えてやればよかったんだ。)
ウテリア領民が、クイをどう思っているか。
だが、オレリアスは、それすらクイに教えてやることができなかった。
(くそっ。)
今もなお、後悔よりも、怒りが先に立っている。
オレリアスは、やり場のない怒りにのまれて、中心街をにらみつけた。
(俺だ。俺なんだ! 軍将になってからの四年間、このウテリア領を守り抜いてきたのは、この俺なんだ。)




