第5話 『運命共同体』
―――2-Jに来るのは珍しい。
いや、初めてだ。
久我さんに呼ばれたのだ、彼女自身は2-H所属だが。
友人というわけではないのだが結構役に立つし『闇の種子』については彼女も興味あるらしい、調べてくれている。
情報交換のためだ。
ついでによく見ると地味だけど彼女も美人だよな。
・・・あと昼ご飯をおごってくれるとのことだったし・・・行くしかない。
「ばっかもぉん!調べなおしてこい!やる気を出せやる気を!」
教壇の上に座っている誰かが数名の取り巻きに叫んでいる、頭がボサボサの生徒だ・・・この教室は床で寝てる生徒数名・・・プロレスごっこしてる生徒・・・窓から飛び降りてる生徒・・・ぶつぶつと宙に向かってしゃべっている女子・・・ん?このバイクはどこから持ってきたんだ・・・天井に張り付いている生徒・・・。
聞いた通りカオスなクラスだ・・・Aクラスとは逆の意味でやばい。
落ちこぼれ集団だ・・・でもまあ・・・ここの大半は異能者の家系で覚醒できない生徒や、問題を起こしたが退学は免れた生徒たちなのだ。
つまり龍王家出身でなければ僕もここが相応しいだろう・・・長いことレベル1だったし。
「あ、景真さん」
「やあ久我さん・・・」
「おお!噂の王様ではないか・・・」
「はい?王様?」
彼は勝手に列強異聞録だとかいうネットニュース・・・東都異能高校・校内生徒向けの情報を勝手に配信している生徒だ、偉そうだが同級生だ。会うのは初めてだ。かなり偏ったゴシップやオカルト記事らしいが読んでいない。
興味ないが・・・勝手に美人ランキングだけは見たことがある・・・久我真白は20位に入っていた。
ボサボサ頭の彼は編集長とよばれているようだ。
編集長を霊視してみる・・・無属性・・・レベル2・・・なあんだ。
(どうでもいい・・・)
「わがニュースを見るがよい・・・真実を追求しておるのだ。もちろん未確認情報も載せておるがな・・・」
(ああ・・・どうでもいい)
「それにしてもあれは災難だったのう・・・王様・・・」
「景真でいいよ、それから時々久我さんを借りるよ・・・久我さんて編集部員なの?」
「うんまあなし崩し的にね・・・あとゴメン・・・あの」
「それより王様よ・・・龍王家を貶めるような記事、断じて許せん。歴史も現在も未来も歪めておる・・・」
あああれのことだ、あれとはマスコミの書いたゴミ連載だ、そこそこ話題になっているようだ。
しばらく前に『1000年にわたる龍王家の光と闇』とかいう連載が有名雑誌・・・ネット上の特集だが・・・があって散々こき下ろしてくれたのだ。前半はいかに1000年にわたって悪魔を蹴散らして異能者を束ねていったかで、問題の後半は権力と財力を得るために光属性の異能を駆使して1000年もの間、人々を従わせ惑わせたというのだ。
要は龍王宗家一族はレアな属性魔力もちというだけで詐欺師一族なんだという結論だ。
(まあ現在では何の力もない異能者の元王の家系なんてそんな扱いで仕方ないが・・・先祖と父と母までを間接的にバカにしていた。紅羽家から継母が嫁いで所有していた神社や土地を国に返した。そして代々続いた無意味な権利を剥奪され、国へ譲渡し龍王家が貶めた人々に謝罪していると最後は締めくくっていた・・・異能者の貴賤とは龍王家による贖罪なんだそうだ)
こんな特集記事は小学生の時からたびたびある。
あのころは嫌で嫌で仕方なかったが・・・もちろんいじめられた、それも散々に。
でも今はそれほどダメージはない。
無能と呼ばれようが、なにせすでに底辺を生きているからな。
生き延びなくては龍王家の名誉回復なんて二の次だ。
―――ボサボサ頭の編集長に部室に連れ込まれた、旧校舎なんてもっと行ったことがない。
ところどころ壁が剝げているじゃないか。
暗めの古い教室に二人きりだ。
「ここならゆっくり話せるのである・・・我々は似ておる。異能者の落ちこぼれ・・・失うものは何もないが絶望的な状況だとしても目は生きておる・・・らんらんと輝いておる、まるで獲物を狙うハンターであるな・・・この密談の目的はであるな・・・真なる真実を追求するためである。必要なモノがあれば用意できるのである。ただしこちらも情報が欲しい…なるべく深淵にいたるものを、であるな・・・」
「・・・龍王家のことをあれこれ書かれると困るんだよね、今は目立ちたくない」
「手を組まんか?闇の種子の出どころ探してやろうではないか。なぁに・・・ギブアンドテイクである。こちらはよく売れる記事を書ければいいのである。バラまいている奴らに記事が目に止まれば何らかのリアクションがある。聖魔大戦前夜の悪魔の先兵現るという見出しにするわけである!闇の種子をバラまき光の能力者を蝕み喰らうという副題のゴシップ記事である、一般生徒が見ても何の害もないのである」
まだよくわからないが敵ではないみたいだ。
今は味方が欲しい・・・非公式新聞部の編集長なら普通ではたどりつけない情報を持っている可能性もある。
「いいよ、手を組もう」
これはだめだと思えば距離を取ればいい。
編集長はニヤリと笑った。
「いいであろう・・・では一旦運命共同体である。で・・・まず一つ情報提供である」
「?」
「能力向上委員会・春季集中講座の受講者名簿を手に入れた・・・それと、講座が終わったあとも希望者は週に一度程度集まっておる。教員は三人である」
僕は思わず顔を上げた。
「どこから?」
「企業秘密である」
紙を受け取る。
そこに並ぶ名前。
磐城瑠璃華。
そして――。
僕が見つけた二人の闇の種子保有者。
全員の名前があった。
やっぱり偶然ではない可能性が高い。
霊視はかなり近づく必要があるし複数人同時には見れない。
この名簿で被害者を絞れる。
「やっぱりな・・・」
「うむ。どうやら犯人は絞れそうであるな」
そうか被害者が絞れれば加害者も絞れる・・・。
「期待しておるぞ、臨時編集部員・・・」そう背中で言って編集長が去る。
「王様じゃなくて臨時編集部員か・・・部員にされてしまった。うん・・・面白い」
―――校舎へ戻る。
名簿はもう頭に入っている。
まだ昼休みだ・・・。
集中講座受講者を重点的に霊視・・・こんな講座44人も受けているのか。
まあ主属性とかサブ属性とか関係なくとりあえず霊視だ。
一人。
二人。
三人。
見覚えのある闇の種子。
思ったよりヤバくないか・・・。
3人を霊視して全員に闇の種子がある。
能力向上委員会の受講者、もしかしてほぼ全員では・・・。
僕以外には見えない闇の産物・・・どう見ても邪悪な寄生体。
異能者の肉体の中で育つ・・・だがその成長スピードは個体間で差があるようだ。
法則を見つけなければ・・・。
そして恐らくは犯人はまだ校内にいる・・・。




