第4話 『闇の種子』
なんて無理ゲーだ。
「インハイで上位16人に入る」
よく考えたらてんでもない無理ゲーだよ。
東日本で8位以内に入らなければならない。
個人戦も、団体戦も、ダブルスも。
いやだいたい全国トップクラスはレベル25以上はあるだろう。
全国最高レベルはクラスメイトである悪名高い九条烈華のレベル33だ。30超えているのは去年はその烈華だけだった。
うちの高校の個人戦代表枠は3名だ。
校内戦にエントリーして勝ち続けないといけないし、これはもう全く無理だ。
1年から3年まで男女混合・・・。
ライバルが多すぎる。
団体戦はどうだろうか。
インターハイ団体戦は5対5で10人入り乱れて直接戦う。
勝ち抜き戦ではないのだ、それはまた別の大会だ。
団体戦3人はレギュラーが決まっている。
個人戦と団体戦は同じメンバーが出られる、そして出場しない理由がない。
つまり団体戦の2枠を目指すか。
レベル12で?
厳しいな・・・。
サポート能力者とか回復要員ならどうか?
そもそも全国で1位か2位の実力のあるうちの団体戦選抜メンバーに回復要員入れる必要ないだろうしサポート能力もいるだろうか。
補欠・・・つまり2軍争いも全然無理な気がする。
ではマネージャーする方が現実的か?
自分の能力なら相手の弱点とか得意魔術とか分析できる上にケガすれば回復もいける。
レベル12になり詠唱可能な術は増えているのだ。
きゅんちゃんとの特訓の成果だ。
・・・でも霊峰息吹にマネージャーって入れるのか?
考えているとあっという間に午前中の授業は終わる。
昼休み・・・いよいよ今日はうるさかった。
協会本部に見学に行ってドウマンに襲われた連中が今日から登校しているのだ。
本当は自分も行くはずだった。
・・・ドウマンの出現を予知したために行かなかったのだ・・・というか・・・行ったのだが。
まあ未来予知とは根本的に魔術理論は異なる能力なのだ・・・。
行けば殺されていた・・・初回は・・・全滅だった。
出現が分かって行っても殺された、全滅だった・・・僕は術の発動準備中に殺された。
霊峰息吹の頂上神殿へ大人のエージェントを連れて行ったが3回目も全滅。
4回目は霊峰息吹には誰も登らなかった・・・ドウマンは出現しなかった。
5回目・・・僕の術はドウマンを貫いたが巻き込まれてクラスメイトは全滅・・・ドウマンも殺せなかった・・・魔晶石を奪われた。
6回目・・・自分だけ霊峰息吹の神殿に遅れて入った・・・クラスメイトはもう全滅していた・・・ドウマンは魔晶石を台座ごと喰っていた・・・僕の術は避けられてドウマンは聖域結界を破って逃げて行った。
失敗・・・失敗・・・失敗だ。
47回目・・・ドウマンを結界の外側から殺すことにぎりぎり成功・・・クラスメイト死亡・・・協会本部は大爆発、生き埋め多数。
88回目・・・クラスメイトも死なず・・・魔晶石も破壊されず・・・ドウマンを討滅・・・やっと成功。
だがこの能力開放によるバックフラッシュで僕の右腕が消し飛んでいた。
そのため検証は続いた。
その後も数百回、成功した未来を繰り返した。
発動速度、威力、軌道、魔力効率――。
少しでも精度を上げようとすれば右腕が消し飛ぶ。
何度もやり直した。
体感では半年近く、僕はドウマンと戦っていた。
―――あれ以来・・・。
不思議な女子の久我真白と金髪美人の磐城瑠璃華先輩とはほぼ毎日会っている。
向こうから会いに来るのだ。
(あんまり堂々と来てほしくない・・・)
心のどこかではひっかかっている・・・集団になれば目立つからだ。
孤独ではなくなってしまう。
二人とも喫茶店やファミレスに誘ってくれる。
決して・・・決してタダ飯に釣られているわけではないのだが小遣いくれない継母が悪いのだ。
だいたい弟の恒一は月に20万も貰っているのだから・・・恨んでも仕方ない。
「命の恩人なんだからこれくらい当然よ・・・」
磐城先輩の金色の髪が景真の肩に触れている。隣に座って、少しもたれかかってくるのだ。
肩と肩も思い切り触れている・・・派手な美人で彼女は人目を惹く。みんな制服だし。
「景真さんに足をからませないで、真面目にやってください先輩」
「そんなことしてないでしょう」
なぜか放課後喫茶店で左右を女子に囲まれている。
『闇の種子事件』と名付けたのだが3人でこの件について調べることになったのだ。
磐城瑠璃華は地属性でサブ属性は光だ・・・全国でベスト16になり霊峰息吹で光属性の魔晶石と契約したからだ。主属性は変えられない、サブ属性は契約によって変更できる。また加護や能力アップも見込める。
(光属性の異能者の身体に侵入して成長する『闇の種子』・・・まるで伝え聞く悪魔の能力そのものだ。光を喰い奴らは成長する・・・だとすれば他人ごとではないし僕にしか感知できないなら自分でするしかない・・・それにひょっとして教員が・・・)
もう数名見つけていた。
4人だ。
うち3名の『闇の種子』は発芽していない。
残り1人は2-Aのクラスメイトだ・・・『闇の種子』は生きているが磐城先輩よりずっと小さい、匂いもないので様子見るしかない・・・現時点ですぐ危険でないなら観察するのも重要だ。
彼は風属性。サブ属性は光。
やはり去年、団体戦で全国16位以内に入っている。
だれが『闇の種子』をバラまいているのだろうか、単独犯とは決められない。
「あたし非公式の新聞部に所属してるんだけど調べてみるね・・・要は最近調子悪い人よね」
不思議な魅力の久我さん。
この子は真面目だな。聞き込みも上手い。
(なんで手伝ってくれてるのか分からなかったけどひょっとして書くネタが欲しいのなら、関係は切るべきだな・・・)
しかし何せマスコミは嫌いだ。
僕の実家は歴史ある龍王家・・・異能者の王の家系・・・今では誰でも知っていることだ。
マスコミは面白おかしく龍王家を記事にしたり動画のニュースをでっちあげてくれる。
異能者は世界中にいるが龍王家の歴史は古くまたこの国の人口当たり異能者数は50人に一人の割合、つまり2%と異常に多いのだ、もちろん覚醒しているものはずっと少ないのだが。
異能者の王・・・龍王家のゴシップはそこそこ閲覧数が稼げるのだろう。
最近もネットで龍王家のなんとかって連載記事が出て辟易しているのだ。活字にすると真実だと思う愚か者は多いのだ。
また僕の腕を掴んでくる磐城先輩はスキンシップは多いが自分が被害者だったのもあってこの件には前向きだ。
「また明日も明後日もどこか行こうね・・・運命の人・・・景真君」
「ちょっとあたしもついて行きますからね、先輩・・・ぬけがけはさせませんからね」
―――情報は少しずつ集まった。
やっぱり久我さんは優秀だ、すぐに聞き込みしてくれる。
磐城先輩は例の化学の先生を調べてもらっている。
闇の種子持ちは僕が4人見つけている。磐城先輩を入れると5人というわけだ。
(さてここで分析が必要だ・・・彼らの属性は・・・やはりサブ属性で光だな、これは同類項だ)
「学年主任は忙しくて会ってくれなかった、けど、あんまり会いたくないのよね。向こうも避けているみたい」
「もし犯人だとすれば種子が無くなっているのがバレているかもね・・・」
「あたしも調べたわ、この3人は部活は別々で化学も専攻していないわ、血縁者でもない、出身中学も違う、属性は景真君が見てくれたけどバラバラ。でもサブは光。それから校内の能力向上委員会の春季集中講座を受講しているわ・・・」
「くわしいね久我さん」
「あたし間違いませんから・・・」
「え、それも関係あるかもね、磐城先輩はこの3人覚えてますか?」
「分からないわ・・・あ、そうだ会ってくれない学年主任が主催してたはずよ・・・ああ!待って栄養剤みたいなのを飲んだわ・・・」
「いま思い出したんですか・・・何か怪しいもの食べたり飲んだりしてないか聞きましたよね・・・しっかりしてくださいね」
ピンっと二人の女性の間の緊張が高まる、今日何度目だ。
なんとなく久我さんと磐城先輩はあまり仲が良くない。
「悪かったわ。景真君・・・忘れてた・・・」そう言って先輩は腕を僕の上腕に滑らかに巻き付けてくる。なぜか久我さんから殺気が漏れていた。
「忘れるように術をかけられてるかも・・・それよりも春季集中講座を受講した生徒を調べてほしい、それからやっぱりその化学の先生は怪しいね。大河原先生だっけ?」
二人の視線はバチバチスパークしている。
うーん関わりたくない。
(そもそもそんなに興味なかったけど光属性能力者を狙ったテロなら僕が一番危ない・・・主属性が光だし・・・インハイも考えないとだが・・・闇の種子の目的は何だ?なんのメリットがある?証拠をつかんだら先生でも異能警察でも異能士協会相談所でもリークすればいいけど学年主任が主犯だと学校に伝えるのは危ないな)
(さらに検討が必要だ。他の光属性持ちは誰も気づいていない。異能士の先生方も、この国すべての霊障を探知している日本異能士協会も発見できていない。聖封教団も同じだろうか)
(なんで僕だけに見える?)




