熱はバレないように燃やせ
英語——それはこの学校の中で多くの者に嫌われている授業である一方、俺は好きな授業だ。
「それじゃ、班の形になって互いに教えあえー」
先生からの合図で教室の机がごごごと動き始める。あちこちで「だりい」「めんど」というネガティブな声が聞こえる。
楽しいじゃん、うれしいじゃんってずっと俺は思ってる。
席が隣になる。今日は単元の総復習で、単語とか文法などの表現の仕方をプリントをもらって、復習する。ただ、大体ほとんどの人は覚えていないわけで、
「俊教えて」
と、隼人以外からも多くの人に案の定頼まれる。俺は、班の形になる前に大体終わらせていたからあと一分もあれば全部終わる。本当は指示される前にやったらダメなんだけど、答えがわかったのだから仕方がない。それに英語のスキルは一般的に見れば俺は得意の部類に入るらしい。俺としては上がいるので全然だと思っているが、少なくともここのクラスでは英語が得意らしい。急いで残りの空欄を埋めて、声をかけてくれた方へ顔を向ける。
「おっけ、いいよ」
隼人のプリントを見ると単語の確認の、3問目ぐらいで詰まってる。他の人は、先生が教えていたり、俺と同じような人らがすでに向かっていた。だから隼人を教える。
「えっとここは、日本語でも使うやつ。料理の作り方ってレシピって言うやろ?」
「あーなるほど。ありがと」
わかったのか隼人は英語を書き始める。スペルも間違ってない。正解だった。そして他の問題も解いていっているうちに前から頭を叩かれた。
「ちょ、答え見せろ」
目の前から答案をせがんでくるのは矢田翔。翔は、まあうん、普通の男子。ちょっと身長低い。あとちょっとうざくて、いじらしくてよく給食さぼる。
「なんで俺のみせないとあかんねん」
正論をかますと、
「はあ?じゃあいいよ。勝手にとるから」
と、俺の手にある紙を半強制的に奪われて回答を移し始める。
「そんなんやからアホやねん」
という愚痴を翔に対して言いながら、また隼人の方に姿勢を向ける。すると、隼人の方から体を近づけて、距離が近くなる。肩と肩が平気でぶつかる距離感だった。この間合いになったらもう隼人のことなんてみれない。心臓が大きく跳ねていることが身に染みてわかる。
ドクドク、ドクドク。心臓の音がうるさい。顔は赤くなっていないだろうか。ばれていないだろうか。ちらりと周りを見る。真似からすごい笑い声が聞こえていたので、少なくとも真似には気づかれているだろう。それでも、君にさえばれていなければ俺はどうとでもなれる。まだ、肩はしっかりと当たっている。
隼人が空欄を埋めるその時まで、この距離感は成立する。
「ここはこうして...」
教えていくほどに、当然だけど、解答欄に文字が書かれる。それはうれしいようで、少し悲しい。
「よっしゃ、終わり!」
その声が俺の耳元で大きく響く。
「お疲れ」
肩と肩が離れる。また、終わりを迎える。
チャイムが鳴って、授業も終わる。それぞれが先を元に戻す。
また、休み時間がやってくる。
「ぐ、ふふ、し、俊さん…ぐ、ふふふ」
後ろから、っていうかほぼ隣から声をかけられる。
教室は喧騒に包まれ、君は他の友達のところへと向かっていく。
せわしない、それでいて少し心地いい、ちょっぴり変な休み時間がまた始まる。
時は二月。もうすぐ、テストが始まる。それもまた、俺にとっての楽しい思い出となろうか。君と、思い出を重ねられるだろうか。
大切な記憶になりますように。




