帰国
レオノールはそのままデュオ・アムーレへ帰る予定だったが、金眼の暴走で死んだ大地がまだ3箇所――魔術都市メルプーレ、ミネルバ王国、イルミカ王国――あると知って、そこに寄ってから帰ることにした。
現地に行けば、死の大地が周りの大地からエネルギーを吸収しており、広範囲に影響が出ていた。アークバルトの仕事のサボり具合にプンプン怒りながら、レオノールは全ての大地を元に戻して行った。
その副産物として近隣の国からは盛大に感謝され、金獅子の評判はうなぎ登りだ。
こうしてガザールを出発して一月、レオノールはついにデュオ・アムーレへと降り立った。
「レオノールゥゥゥゥ!会いたかったぞ!!」
ギルバートから抱きしめられたレオノールは盛大にキスをされて、何故か匂いをクンクンと嗅がれる。しばらくの間そうされていると、痺れを切らしたアークバルトによって定位置である腕の中へと戻された。
「もう少し位良いではないか」
「お父様、まるで変態のようでしてよ」
マリアベルにそう酷評されたギルバートは恨みがましそうな目でアークバルトを見た後、渋々と諦めた。
「お帰りなさい、レオノール。色々と噂は聞いているけど元気そうで嬉しいわ」
「ただいま。まりー おみやげ」
ギルバートは渡す暇がなかったので一番手はマリアベルだ。
宝石で出来たウサギの置物を見たマリアベルは「可愛い!」と大喜びだ。レオノールも嬉しくなって一緒に笑うと、マリアベルに「ありがとう」とお礼を言われて額にキスをされた。
それを見てソワソワし始めたギルバートの影からギィが飛び出す。
「クルルッ!」
「ただいま」
お互い挨拶をしてグリグリと顔を擦り付ける。ギィはペット扱いなのかアークバルトは何も言わない。まあ、実際は乳母だが。
「これ おみやげ」
レオノールはギィに首輪……というか、ネックレスをかける。サイズが調節できる魔法がかけられているのでピッタリだ。
「わたしの めのいろ」
細かい金の繭に包まれた、緑の宝石を見てギィも興奮して鳴いている。
「ヒヒイロカネを糸にしたのか」
「アダマンタイトより柔らかいとは言え、あの硬い金属をここまで細くするなんて、凄い技術だわ」
これにはギルバートとマリアベルも大いに興味を惹かれたようだ。
話がヒヒイロカネの糸への活用方法へと移り変わっていったので、レオノールは気を引くために蔓でチョイチョイとギルバートを突付く。
「これ じぃじに」
オルゴールを渡すと、感激して近付いて来たがアークバルトに阻止されている。
キラキラと輝く深い青色のオルゴールは、太陽の下でみるとより一層美しい。レオノールのお宝センサーがビンビンに発動したので、間違いなく良いものだ。
「とって まわす」
「そうだな。早速、聞いてみよう」
ギルバートがクルクルと取っ手を回せば、ゆっくりとメロディーが流れてパカリとオルゴールの蓋が開く。そこから現れたのは眠る金の獅子と小さな銀の竜。寄り添う2体は種族は違えど、まるで親子のように見える。
「じぃじと わたし なかよし」
レオノールがそう説明すると、ギルバートは目頭を強く押さえた。
「……最高の贈り物だ」
今度はアークバルトに邪魔される事なく、ギルバートの腕に抱きしめられた。レオノールは未だにきつく目を瞑っているギルバートの頬にチュッとキスをする。いろいろと心配をかけたお詫びだ。
「儂のレオノールが尊い」
「俺のレオノールだ」
アークバルトに上半身を引っ張られ、ギルバートは下半身を掴んで離さない。レオノールが落ちないようにと、その下に入り込んだギィが一番大人なのかもしれない。
引っ張られても全く気にしていないレオノールは、マリアベルに疑問に思ったことを尋ねる。
「にぃには?」
何故か迎えの場にサイフィードがいないのだ。キョロキョロと辺りを見渡しても、影も形も見えない。
「サイフィードは学園を卒業したから領地に戻ったのよ。今はアクアネル領にいるわ」
そう、デュオ・アムーレ学園は基本的に3年で卒業となる。ガザールに行っている間にサイフィードは卒業してしまったのだ。
今では書類三昧の日々を送っている。
未だに引っ張り続けている2人を蔓でベシンと振り払い、レオノールはギィの背中へと降り立った。
「わたし にぃにのとこ いく」
レオノールの意を酌んだギィが走り出そうとするが、アークバルトに尻尾をムンズと掴まれて動けない。不満気な声を出すギィを無視して、アークバルトはサッとレオノールを抱き上げた。
「先ずはゆっくりしてからだ」
ガザールで無理をした後、大地を癒して回ったのだ。疲れていない筈がない。ちなみにアークバルトが癒さなかった理由は、仕事が大雑把だとレオノールにクビにされたからだ。
その後、誕生日プレゼントの宝石をもらい、レオノールは2人に手を振って別れた。そして琥珀宮に運ばれ……ずに通り過ぎて湖へと向かい、ポチャリと水の中へと入れられた。
「わたし げんき」
「少し力が不安定だ。しばらく寝てろ」
指摘されて両手を見つめるが、自分ではよく分からない。
「レオノールはまだ幼体だ。本当はデュオ・アムーレを離れるのもよくねぇんだよ。成長が遅れる」
ギルバートがレオノールを外交に連れ出すのを渋ったのもこれが理由である。外にいる間はアークバルトが力を補填していたのだが……レオノールがバンバン力を使うために補いきれていなかった。それか長い眠りとなって現れていたのだ。
衝撃の事実にレオノールは眠ることにした。シルヴァにこれ以上置いていかれる訳にはいかないので。
髪の先からシュルシュルと蔓を伸ばして、レオノールは眠りについた。




