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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
ガザール帝国の陰謀
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レオノール暗躍

 会議室に集まったのは以下のメンバーだ。

 デュオ・アムーレからはアークバルトとレオノール。ガザールからはロイとザギル、宰相、そして急きょ呼ばれたターナだ。シルヴァは隣の仮眠室で眠っている。トライランドからはラシーヌとイルミカが参加する。


「それでは今日の国王暗殺についての件だが、知っていることを話してもらいたい」


 暗殺された国王が主導する、珍妙な会議が幕を開けた。

 一番の注目株は黒幕(?)と思われているレオノールだ。宰相は紙とペンを用意し、聞き漏らすまいと構えている。


「なに しりたい?」 


 出来れば全部知りたい。

 どこから掘り下げて行くべきか悩んだロイは無難なところから攻めることにした。


「毒薬はシルヴァの部屋にあったのか?」


「そう。おうひのへや から しるゔぁのへや いどうした。わたし もとのばしょ もどした」


「自分の子ども相手にありえないわ」


 同じ母親として許せないのかイルミカが怒りを露わにし、ラシーヌがそれを宥める。


「あの女ならやりそうだ」


 そう辛辣に吐き捨てたのはザギルだ。

 もともとシルヴィアのことを嫌っていたザギルは、最近シルヴァを可愛がっていることもあり、今回のことは腸が煮えくり返るような怒りを感じる。自分があの時何も出来なかったことも、ザギルは許せそうになかった。

  

「レオノールはシルヴィアが毒薬を持っているのを何故知っていたのだ?」


 ロイの疑問の答えは単純だった。

 レオノールは自分が毒が好きなこと、シルヴィアの部屋に知らない毒があったのでコッソリ舐めていたことを話す。


 これにはアークバルト以外が絶句した。


 どうやって侵入したのか、何故毒の場所がわかったのか、聞きたいことは山程あったが、ロイはその全てに蓋をした。話が進まなくなるので。


「シルヴァのポケットから出てきたのが水だったから良かったものの、もし毒が出てきていたらシルヴァの部屋に毒がなくても犯人にされていただろう。今度からは先に相談して欲しい」


「そうね。大人に相談することは大切だわ」


 ロイとイルミカが優しく言い聞かせるが、ここでターナが言いにくそうに手を挙げた。


「あ、あの。中身を水にすり替えるように指示されたのはアクアネル公子なんです」


「ん?どう言うことかな、レオノール」


 ロイの顔が僅かに引っつた。その顔はまさかコイツ……と疑っていた。


「わたし たーなが おどされてるとこ みた。ろいに ほうこくしようと したから とめた」


「待て待て待て!何で止める必要があるのだ!」  


 ザギルが口を挟んできたが、レオノールは何も分かってない彼に説明してあげた。


「げんこうはん たいほ きほんよ。それに たーな あいてのかお みてない」


「申し訳ございません。魔導具で動きを封じられてしまって……」


「いや、ターナが謝ることではない。むしろ謝るのは私の方だ。ラグナを人質に取られたのだろう?居場所が分かればすぐに助け出す。約束しよう」


 人質が生きている可能性は低いと知りながらも、ロイはそう約束することしか出来なかった。せめてラグナの亡骸をターナの元へと返してやりたい。


「それなのですが……」


 ターナが更に言いにくそうにレオノールを見る。


「わたし たすけた。らぐな りきゅう いる」


 そう、脅されている場面を目撃したレオノールは犯人に胞子をくっつけ、犯人に報酬を渡した相手に胞子をくっつけ、黒幕まで辿り着いていた。


 後は簡単なお仕事だ。


 影を呼び出し捕らえられているラグナの身代わりをするように命じて、本人を離宮に運んで治療したのだ。ついでに病気も治してあげた。レオノールはラグナとターナを気に入ったから。何故なら……


「たーな ろい えらんだ。らぐなも ろい えらんだ」


 ターナはロイに報告しようとし、ラグナに至っては水すら口にせずに自害を選んだ。


「たーなと らぐな しるゔぁに ふさわしい。だから たすけた」


 つまり、相応しくなければ助けなかったという事だ。幼い子どもの冷徹な思考にラシーヌとイルミカは絶句したが、シルヴァ至上主義なのを知っているロイとザギルは納得顔だ。

 ターナに至っては誇らしげに胸を張っていた。流石は忠義の臣の直系なだけある。


「そうか……ラグナを助けてくれたこと礼を言う。ありがとう。しかし、だな。レオノールは私が毒殺されることを知っていた、そうだな?」


「そう」


「シルヴィアが毒を隠し持っていた時点で、こちらは処罰する大義名分が立つ。これは分かるか?」


 レオノールはツーンとそっぽを向き、ロイの額に青筋が浮かぶ。

 それでは逃げてしまうネズミがいるのだから仕方ない、とレオノールは思ったが、言えば更に怒られそうな気がする。そこで先程もらった伝家の宝刀を抜く!


「ろい おこらない やくそく した」


「グッ!」


 全てがレオノールの手の平の上だった。

 ロイ暗殺から犯人の捕縛まで、レオノールの筋書き通りに全員が踊っていたのだ。


「あはははは!アクアネル公子はロイより一枚も二枚も上手だね」


「あきらめなさい。ロイが敵う相手じゃないわ」


 大笑いするラシーヌと憐れみの目を向けるイルミカに、ロイは仏頂面だ。ザギルはすでに諦めている。

 今まで黙ってペンを動かしていた宰相が不意に顔を上げる。


「アクアネル公子は全てご存知の様子。今回の件で動いた貴族を教えていただけませんか?」


 それに答えたのはアークバルトだ。

 レオノールはコクコクとコーヒーを飲んで休憩していたので。


「バサラ・デューン・ドミニク、シグマ・シフォン・グレイグ、エリック・ワンダルサス。主なのがコイツらだ。あとは雑魚だな。レオノール、雑魚を出してやれ」


「わかった」


 レオノールが2回パンパンと手を叩くと、ドスンっと音を立ててグルグル巻きの男が2人転がった。


「こっち たーなに どく わたした。こっち しるゔぁ に どくいりぐらす わたした」 


 展開の速さについて行けないロイとザギルが天を仰いだ。タイミングもバッチリ一緒だ。


「コレの尋問は後でするとして、グレイグ公爵が関わっているのか?彼は祖霊信仰派の貴族のはずだが」


 だからこそシシリィを降嫁させたのだ。シルヴァへの嫌悪が少しでも収まればと思って。


「らぐな さらったの ぐれいぐこうしゃく」


「賭博でスッてんな。かなりの借金がある。それとテメェの娘はどれだけ贅沢なんだ?公爵家の金を随分と食いつぶしてやがる」


 呆れたようにアークバルトが報告書をロイに投げる。それによれば、公爵家の資金は凄まじい勢いで目減りしており、その分税金を釣り上げているようだ。


「金で動いたか」


 先代は堅実な人柄だったが、子育てを間違えたようだ。人のことをとやかく言えないロイは自嘲した。



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