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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
ガザール帝国の陰謀
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建国祭への招待状

 レオノールは鏡の前に立って左耳に輝くイヤーカフス見ていた。そう、ついに完成したのだ。

 アークバルトに「これでレオノールが何処にいるか直ぐに分かるな」と言われたので、GPS機能付きだ。コッソリ悪さする時は外さなければならない。


 銀色に輝くイヤーカフスには炎のようにも花のようにも見える不思議な紋様が彫られており、金色の宝石の中で燃える同色の炎の縁をなぞるように、赤い色がチラチラと走る。まるでアークバルトの髪の色のようだ。

 それが嬉しくて角度を変えながらウットリと宝石を見る。


「きれい」


 朝から度々呟いている言葉を口にし、再び鏡を見る。傍目から見れば立派なナルシストだ。


「あれは……いいのか?」

「どれだけ宝石が好きなんだ」

「レオノール、そろそろご飯食べよう?」


「レオノールは宝石じゃなくて俺が好きなんだよ」


 ドヤ顔でそうのたまうアークバルトに、ロイとザギルは絶対に違う、と言う言葉を飲み込んだ。シルヴァは気にせずスルーしてレオノールを呼びに行った。やはり順応力が高いのは子どもなのだろう。 


 朝のルーチンとなりつつある食事を終えて、ロイが一通の手紙を取り出した。それには招待状と書かれている。


「建国祭の招待状だ。参加するだろう?」


 流石にガザールに1年近く滞在しておいて、不参加はないよね?と圧をかけながらロイが渡せば、面倒臭そうにアークバルトが受け取った。


「仕方ねぇ……」

「わたしたち ふさんか」


 アークバルトの言葉を遮ってレオノールが主張する。意外な展開にロイは目を丸めた。


「わたしたち ふさんか。とちゅうで とうじょうする。みんな びっくり」


 ニコニコと告げるレオノールにロイは頭を抱えた。


「夜の舞踏会はそれでも構わないが、ザギルの立太子の儀には参加してもらえないか?」


 とは言われたものの、真面目な儀式は面白くなさそうなので行きたくない。レオノールはちょっと考えてからアークバルトを犠牲にすることに決めた。


「ぱぱ はけんする」


「レオノールがいないなら行かねぇ」


 駄々をこねるアークバルトの前に、レオノールは通信水晶を無言で置く。じぃじにチクるよアピールだ。

 流石に建国祭を欠席したとなればギルバートのお小言待ったなしなので、アークバルトは仕方がなしに頷いた。


「レオノールも舞踏会に来るんだね。俺も参加するんだ。初めてだから失敗しちゃうかも」


 シルヴァはまだ6歳のため本来なら参加できないのだが、シルヴィアが強く参加するよう求めたのだ。

 理由はザギルが皇太子となる姿を見せ、自分の身の程を知らしめるため。当然ロイは渋った。舞踏会は深夜を回っても続くため、子どもに参加させるようなものではないのだ。本来なら15歳以上でなければ参加は許されない。


 何か企んでいるのではないか、という予感がロイにはあった。ザギル派……いや、今ではシルヴィア派と言ったほうがいいだろう。そのシルヴィア派の貴族が何かしら動いているようなのだ。出来れば尻尾を捕まえたい。

 シルヴァを囮にするのは心苦しいが、側には最も信頼する将軍をつける予定だ。


「心配するな。シルヴァはまだ6歳なのだから誰にも文句は言わせん。私もザギルも側にいる」


「そうだ。こういう事は大人に任せておけばいい」


 不安そうな様子のシルヴァをロイとザギルが慰め、安心したようにシルヴァの耳がピコピコ動く。

 その様子を見たレオノールは、負けじとドンッと胸を叩いて自信満々に告げる。


「しるゔぁ だいじょぶ。せんぶ わたしに まかす」


「うん、頼りにしてるよ」


 何故か頭をなでられるという完全な子ども扱いに、レオノールはぶうっと不満を示した。







「ああ、待ち遠しいわ。ようやくこの時が来たのね」


 シルヴィアは妖艶に笑い、隣にいる男にもたれ掛かる。


「本当に良いのか?自分の子だろう?」


 冗談めかせて男が笑えばシルヴィアの眉がキリキリと吊り上がる。


「冗談でも言わないで。アレは化け物よ。私は見たんだから。アレと血が繋がっているだけでも忌々しいのに。それにお兄様も言っていたわ。ガザール皇家は化け物の血筋だと」


「俺も血縁だぞ?」


「あなたは別よ。だって呪いを受け継いでないじゃない」


 ふわり、と笑ったシルヴィアの表情は無邪気な子どものようだ。その唇にキスをして男は艷やかな髪をなでる。


「今度の毒は大丈夫なんだろうな?」


「間違いなく無味無臭よ。犬人族でも気付かれないわ」 


 シルヴァの毒殺に失敗したのは苦い思い出だ。あれからシルヴァの警護が厚くなり、食事は先にスレイプニルに食べさせてから振る舞われるようになった。


「毒の強さは?」


「一滴でも飲めば終わりね。一瞬で死んでしまうもの。解毒薬もまだ開発されてないわ」


 試してみたもの、とシルヴィアはクスクスと笑う。


「ライオネル殿下の動向は分かるか?」


「ええ、立太子の儀には出席するけど、舞踏会には不参加みたいね。小さな子どもがいるからかしら」


「どちらにせよ好都合だな。計画を崩されてはかなわん」


 不確定要素を減らすために本来なら計画をずらすべきだが、それではシルヴィアが納得しない。それにザギルが急速に地盤を固めてきた。()()を排除するまで国が安定しては困るのだ。

 やはり今しかない、と男は不安に蓋をしてシルヴィアを押し倒した。



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