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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
ガザール古代遺跡
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避難シェルター

 延々と続く居住区を抜けると、巨大な広場に出た。天井には魔導具っぽい物が複数取り付けられており、地面は石素材ではなく黒っぽい何かだ。


「これは……当たりだな」


 その言葉に、レオノールとシルヴァがバッと勢いよく振り返った。その目はキラキラと輝いており、顔には説明お願い、と書いてある。


「ここは食料を大量生産する施設だな。こういう遺跡は幾つかあるが、ほとんどが避難シェルターだ。上にある魔導具があるだろ。あれは擬似的な太陽光を放つ魔導具だ」 


「売れるんですか?」


「イーストエンドにあるドワーフの国が高額で買い取ってんな。あいつらは地下で暮らしてんだろ。この魔導具を使えば、地下でも植物を育てられるからな」


「自分たちで造れないんですか?」


 ドワーフといえば物造りだ。分解して自分たちで造れるようになれば、買う必要などない。


「いいか、古代文明の魔導具はな、今の人間の技術力じゃ再現できねぇから高値で売れんだよ」


 呆れたアークバルトの声を聞きながら、レオノールは黒っぽい何かを調べていた。それは砂よりももっと細かい粒子で出来ていて、フッと息を吹きかければサラサラと手から散っていった。

 アークバルトの話では土に代わる何かのようだが、レオノールの感覚ではこれで植物を育てるのは不可能だ。

 まだ何かあるかもしれない、と蔓で黒い粒子の中を探っていく。1メートルほど下に行けば床に到達したので、そこから床を丹念に調べる。

 床の中央に一つ、部屋の角に四つ違和感がある。


「どうした、レオノール?」


「このした なにか ある」


「よく分かったな。部屋の角だろ。成長促進の魔導具が埋まってんだよ」


 レオノールはその説明にも納得出来ずに難しい顔をする。成長促進の魔導具でも植物が育つとは思えなかったのだ。


「まだ たりない」


 植物を育てるための何かが。

 それを見たアークバルトは笑みを深める。


「中央を探ってみろ。レオノールなら分かるはずだ」


 そう言われて、先程違和感があった中央へ意識を向ける。

 何か懐かしい感じがして、深く……深く意識を沈めれば自ずと答えが分かった。


「きんじしの ちから?」 


「そうだ。中央にライオネルの力の結晶が埋められてたのさ。まあ、人間は気付いてねぇがな」


「え?どういうこと?」

 

「なんで ここある?」


 よく分かってない2人にアークバルトは何から説明すべきか迷う。


「おそらくバレンシアガがライオネルに頼んだんだろうな。そしてそれを人間に渡した。緊急時のためにな。現にシェルターがなけりゃ、人間は死の嵐を生き延びれなかった」


「死の嵐?」


「バレンシアガが……神が一柱死んだんだ。その影響が世界に出ないとでも思ってんのか。特にバレンシアガは死を司る神でもある。本来なら、その死と同時にこの世界は一度リセットされるはずだった。それを小賢しいニンゲンは技術力で生き延びたのさ。ライオネルの力を利用してな」


 アークバルトの目に宿るのはニンゲンへの憎しみだ。これは代々受け継がれるライオネルの感情でもある。


 バレンシアガが愛したニンゲンを

 バレンシアガを殺したニンゲンを


 どうして憎まずにいられようか。


「ぱぱ?」


 その声にハッとしてアークバルトはドロドロとした感情を心の奥へとしまい込む。

 心配そうに覗き込むエメラルドの目は、愛してやまないレオノール(バレンシアガ)の目だ。銀色の長い髪をした美しい女が笑いかけてくる。その目は透き通るようなエメラルドで……


「ぱぱ!」


 今度こそアークバルトは正気に戻る。自分の片翼はバレンシアガではなくレオノールだ。自分でないナニカが自分の中にいるようで、アークバルトは頭を振ってその考えを追い出した。


「悪ぃ。何でもねぇよ」


「ぱぱ むりしてる?わたし にんげん きらいじゃない から」


「違う。俺はな、人間が嫌いなこと以上にレオノールを愛してんだよ。お前が人間に関わると決めたなら、俺もそこにいる。これは俺の意思だ。レオノールは自由に決めていいんだ」 


 アークバルトはレオノールの頭をなでて抱っこする。今度はレオノールも嫌がらずにその腕に納まって甘える。

 空気を読んだシルヴァは頑張って気配を消した。


「それで魔導具は持って帰るのか?」


「いらない」


「えー!せっかく見つけたのに!?」


 この魔導具は冒険の証だとシルヴァは主張するが、レオノールの意見は変わらない。無欲なレオノールにぶぅっと頬を膨らませてシルヴァは抗議する。


「いい?きょう わたしたち うそついて いせききた。てみやげ ひつよう。ろいに あげる」


 レオノールは無欲じゃなくて狡猾なだけだった。

 何となく冒険する雰囲気ではなくなったので、生肉を食べて休憩しているとレオノールの蔓に反応があった。

 探索するのが面倒臭くなったレオノールが、蔓でこの先を探っていたのだ。


「へんな とびら ある。したいも」


「ブッ!ゴホッ!」


「汚ぇな!レオノールにかかったらどうすんだ!」


 ササッとレオノールを抱えて、華麗に回避したアークバルトは悪態をつく。


「だ、だって死体って」


「遺跡なんだ死体ぐらいで騒ぐなよ」


「ぼうけん つづき する。こっち」


 新たな発見にやる気が戻ったレオノールが張り切って先頭を歩けば、アークバルトに後ろに戻される。布陣は先頭にアークバルト、その後ろにレオノールとシルヴァだ。迷子にならないようにちゃんとシルヴァの尻尾を掴んでいる。ちなみに、ここで言う迷子はシルヴァのことである。

 蔓を広げているレオノールに死角はないのだ。



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