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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
ガザール古代遺跡
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遺跡を探索しよう

 レオノールは"遊び"という名目でシルヴァを城から連れ出し、飛空艇で目的地まで向かっていた。そう、遺跡へと。

 レオノールの指示のもと、飛空艇は森の側にある草原へと降り立った。それは魔の森ではなく普通の森で、時折動物たちが顔を覗かせている。


「ここに遺跡があるの?」


「もりのなか いりぐち ある」


 レオノールはシルヴァの尻尾を掴むとトコトコと森へ向かって歩いていく。そうしたら行く手を倒木に遮られた。

 ムムッと足を止めて倒木を睨むと、ザワリと森が揺らめいて道を開けていく。目の前にあった倒木も今では根を張り、立派に枝を広げていた。


「うわぁ。すごい」


 レオノールとシルヴァは目の前に出来た道を行く。その後ろからはアークバルトが気配を消して付いてきていた。アークバルトが側にいると冒険気分が味わえないから仕方ないのだ。

 しばらくすると木が折り重なって倒れている所に出た。


「こっち」


 小さい体を活かして隙間をスルスルと進むレオノールに、体の柔らかいシルヴァが続く。アークバルトは出入り口をウロウロしている。

 奥に行くとそこが洞窟のような場所だと分かった。いや、地表から地下へと向かっているのだから地下道と言うべきか。

 奥へ行くにつれ天井は高く、幅は広くなっていく。土だった道もコツコツと音のでる石のような材質へと変わっていった。


「この石、継ぎ目がないよ」


 まるで1枚の岩から切り出したようだ。

 今の技術力では不可能な古代文明の名残りである。


「もうすぐ とびら ある」


 2人が足を止めたのはそれから直ぐのことだ。それは取っ手もなにもない白い板のように見える。


「これが扉なの?」


「かべ かも」


 レオノールも遠隔ではこの中に入れなかった。胞子を入れる隙間すらなく、中にも植物の気配はない。完全に封じられた場所になる。


「文字もなにもないね。せめて扉か壁か分かるといいんだけど。ちょっと掘ってみる?」


 このまま白い板が続けば壁、ここだけなら扉だ。


「わたしに まかす」


 レオノールは土を操り扉(仮)の周りを掘り出していく。掘った土は邪魔になるので遠くの地面から地表へ出しておく。ここに魔術師がいれば、その離れ業に驚愕したことだろう。


「扉っぽいね」 


 白い板の周りは材質が変わり、それがずっと続いているようだ。つまりそっちが壁だ。

 レオノールが白い板、改め扉を押してみるがビクともしない。取っ手がないから引くことは出来ない。


「こわす?」


「それは最後の手段だよ。仕掛けがないか探してみよう」


 2人でペタペタ扉の周りを触ってみるが、全く動く気配がない。困り果てたそんな時、後ろから咳払いが聞こえた。アークバルトである。

 地面をくり抜いてきたのか、穴の空いた天井から太陽の光が降り注いでいる。


「いいか、こういう時はな先輩に聞くもんなんだよ」


 レオノールとシルヴァは顔を見合わせ、冒険仲間にアークバルトが加わった。


「ぱぱ あけれる?」


「こういう扉は魔力に反応するもんだ。ただ個人指定してある場合は壊すしかねぇな」


 スッとレオノールとシルヴァが拳を握り、勢いよく前へと出した!


 レオノールはグーでシルヴァがパーだ。


 地団駄を踏むレオノールに拳を突き上げるシルヴァ。勝敗は決した。

 シルヴァが代表して魔力を込めれば、扉が淡い光を放ちふっと消えた。レオノールがパッと後ろを見れば、扉は復活していなかった。今回は本当に消えたようだ。


「こだいぶんめい ふしぎ」


「本当だね」


「油断するんよ。遺跡によっては扉を守るガーディアンがまだ動いている場所もある」


 ハッとして冒険者っぽく武器を取り出そうとしたが、残念ながらレオノールは武器を持ってはいなかった。シルヴァを見ればメリケンサックを装着している。


「わたし ぶき ほしい」


「レオノールの武器って蔓と根っこじゃないの?」


「かっこいいの ほしい」


「植物を操るのって格好いいと思うけど。凄い魔術みたいだもん」


 レオノールは蔓を出して構えてみる。


「わたし かっこいい?」


「レオノールは格好良くて可愛いよ」


 シルヴァは将来、女たらしになるかもしれない。


「俺のレオノールを目の前で口説くとはいい度胸してんな」


 安全を確認してきたアークバルトはシルヴァの頭をガっと掴む。


「わあ!イタタタ!」


「オラ!行くぞ!」


 そのままシルヴァを引きずったアークバルトがレオノールに優しく手を伸ばせば、サッと避けられる。今は冒険者ごっこ中なので抱っこはNGなのだ。

 アークバルトはしょんぼりしながら危険がないか見に行った。


「罠や仕掛けの類はなさそうだな」


「それってどうやったら分かるんですか?」


「発動すりゃ嫌でも分かんだろ」


 つまり何の策もない体当たり戦法だ。

 シルヴァは師事する相手を間違えたことを悟った。



 

 遺跡の中は壁が仄かに発光していた。


「この光も魔導具なんですか?」


「壁自体が魔導具だと言うのが専門家の意見だが……周囲の魔力を吸収している、ということ位しか分かってねぇな」


 随分と歩いたが、廊下と部屋が並ぶ光景がずっと続いている。部屋には鍵がかかっておらず、中には朽ちた家具の残骸が散らばっていた。ちなみに、部屋の中の壁は発光していなかった。


「ここは居住区だな」


「なにも ない」


「重要な施設には必ず保存の魔法が掛けられてんだ。居住区はどこもこんなもんだ。たまに魔導具自体に保存の魔法がかけられてるヤツもあるがな」


 それを聞いたレオノールは蔓を今まで覗いてきた部屋に伸ばしていく。何か見逃しがあるかもしれない。


「何か見つけた?」


「なかった」


 レオノールはションボリと成果を報告した。


「ハハッ!気を落とすな。遺跡探索はそんなもんだ。だがな、当たりの遺跡の方が危険も多い」


「そうなんですか?」


「ああ、偶にだが古代人が封印した危険なモノが眠ってる時がある。そん時は逃げ切れずにパーティーごと全滅するパターンがほとんどだな」


 ぞくり、と身を震わしたシルヴァの尻尾を、レオノールは元気づけるようにグワシッと握る。今度はシルヴァは別の意味で震えた。痛みを堪えるその目には涙が浮かんでいる。


「わたし いる。たいじょぶ」


「滅多にあるもんじゃねぇよ。ほとんどの遺跡はハズレだ、ハズレ。」


 夢も希望もないことを言うアークバルトをレオノールは睨み、シルヴァはそっと尻尾を取り戻した。

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