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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
ガザール古代遺跡
61/62

街中散策

「どこか行きたいところはある?」


「ぼうけんしゃぎるど みたい」


 初っ端から無理のある注文にシルヴァは髭を下げた。


「冒険者ギルドは平民街にあるから、貴族街にはないんだよ。何で冒険者ギルドに行きたかったの?」


「こだいぶんめい たのしかった。ぼうけん したい」


「古代文明かぁ。確かにワクワクしたよね。でも冒険者は魔物退治が仕事で、あまり遺跡にはいかないみたいだよ」  


「そうなの?」 


「うん。ほら、冒険者は古代語読めないから」


 衝撃の事実である。

 確かに古代語を読めなければ、宝物庫の地下にあった扉を開けることが出来なかったので、そんなものなのかもしれない、とレオノールは納得した。

 ただ実際には遺跡を専門とする冒険者は存在し、貴族の3男や4男だったりする。勉強は重要なのである。


「取り敢えず歩いてみよう。はい、手」


 肉球を差し出されたレオノールは、しっかりと尻尾を握った。


「まあ、いいけど」


 流石は包容力のあるシルヴァだ。その姿もばっちりカメラに納められている。

 ぶらぶら歩いていると服が飾られている店が多く見られる。雑多な雰囲気はなく、整然とした街並みだ。ただ残念ながらシルヴァは服にたいして興味はなく、レオノールはサイズがないっぽいのでスルーした。


「あそこ はいる」


 レオノールが指さしたのはおもちゃ屋だ。

 子どもらしいチョイスにシルヴァは思わず笑ってしまった。レオノールにも子どもらしい一面があったのだと知って。だがこの後、シルヴァはここに来たことを後悔することになる。

 

「いらっしゃいませ。お坊ちゃま、お嬢様」


「あれ みたい」


 そこにあったのは大量の獅子のぬいぐるみだった。そう、金獅子ムーブである。

 色々な表情をとっているぬいぐるみ達を見定め、レオノールはその内の1つを選ぶ。目付きの悪い獅子だ。


「これ、ぱぱに にてる」


「ぷっ!うん、似てると思うよ!」


 その悪どそうな顔が、とシルヴァは心の中で付け加えた。

 そしてふとレオノールが横を見れば、巨大な白虎のぬいぐるみがあった。


「しるゔぁも いた!」


 思いっきり抱きついたら、お腹にポヨンと受け止められた。しかもフワフワ。しばらくグリグリとぬいぐるみを堪能していたレオノールは、意を決して顔を上げる。


「わたし きめた。せきにんしゃ よぶ」


「え?あ、し、少々お待ち下さい」


 子どもの戯言だと聞き流そうとした店員は、後ろに従えている黒い笑顔のジルとバーニャを見て、慌てて店の奥へと引っ込んでいく。

 シルヴァは嫌な予感をヒシヒシと感じた。


「お待たせ致しました。私は……」


 責任者っぽい人物が丁寧に挨拶をしてきたが、レオノールは途中でぶった切って構わず告げる。


「わたし このみせ かう。いくら?」


 余りの大人買いにシルヴァの毛が逆立った。


「ちょ、よく考えて?お店とかいらないよね?」


「きにいったみせ あったら かってこい ぱぱ いってた」


 心の中で、盛大にアークバルトに文句を言ったシルヴァは悪くないと思う。責任者っぽい人も汗をダラダラかいている。


「レオノール様、こちらを」


 そう言ってジルが差し出してきたのは虹金貨――1枚一億円――の山だ。


「これ たりる?」


 ヤバい本気だ、とシルヴァと責任者っぽい人は思った。


「よく考えて?店ごと買っちゃったら選ぶ楽しみがなくなっちゃうよ。買い物は選ぶのが楽しいんだから」


 6歳とは思えない切り返しに責任者っぽい人も乗っかった。


「そうでございますよ、お嬢様!ここは特別なお友達を選ぶ場所ですから!」


「とくべつな ともだち」


 そう言ってレオノールはシルヴァを見た。レオノールの心は決まった。

 片手に持っている目付きの悪い獅子をポイっと捨て、おっきな白虎の手を掴む。


「わたし このこに する。なまえ しるゔぁ」


「うん、分かったよ。でも、あの子も連れて帰ってあげよう?」


 命の危険を感じたシルヴァは、目付きの悪い獅子をレオノールに握らせる。

 こうしてシルヴァは波乱のおもちゃ屋を後にしたのだった。



 

 


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