宝物庫へGO!
レオノールとシルヴァの再会はそれはもう酷かった。暴走する蔓に、逃げ惑うシルヴァ。両手両足を拘束されて後は触手プレイを待つばかり……となった頃に、ロイとザギルによって救出され、レオノールはアークバルトに捕まった。
「ぱぱ じゃましないで」
「いいか、シルヴァは人間だ。お前が本気でジャレついたら死んじまうぞ」
その言葉にようやく正気を取り戻したレオノールは、トコトコとシルヴァの前まで行くとバンザイする。
「だっこ」
今更ながらの可愛こぶりっ子にロイとザギルは呆れ顔だが、器の大きいシルヴァは違った。そのままヒョイっと抱き上げたのだ。出来る子どもである。
「おかえり」
「ただいま」
シルヴァの匂いとモフモフを堪能すべく、グリグリと顔を擦り付ければ、レオノールの髪をプニッとした肉球がなでる。
「ありがとう。ガザールを助けてくれて」
「わたし がんばった」
「うん。知ってる。ここからでも金色の光が見えたよ」
それはアークバルトの力で、レオノールの力ではないのだが……シルヴァがホッペをくっつけてきたのでどうでも良くなった。シルヴァはホッペもモフモフなのだ。
「それでな、お礼としてレオノールに宝物庫を開放しようと思う。好きなものを1つ選ぶといい」
宝物庫と言えば国宝も納められている場所だ。1つとはいっても、物によれば金銭に替えられない程の価値がある。まあレオノールは宝石にしか興味がないので、その点は安心だとロイは思っている。
「へぇ、太っ腹だな。んで俺にはねぇのか?」
ロイの首に腕を回し、アークバルトが強請る。全く力を入れていないように見えるが、ロイの首は徐々に締まってきている。もう首を折られるのは真っ平ごめん、とロイは慌てて口を開く。
「ライオネル殿下には特別な魔導具を用意している」
「ほぅ、それは俺が満足できる物なんだろうな」
「保証しよう」
やけに自信満々なロイにアークバルトは興味を惹かれる。
「ザギルはレオノールを宝物庫に案内してくれ。シルヴァも付いて行っていいぞ」
パッと笑い合ったレオノールとシルヴァが走り出し、ザギルが慌てて後を追いかける。レオノールなら確実に宝物庫に侵入できる、とザギルは確信している。何が何でもレオノールより先に行かなければならない。
そんな子どもたちの後ろ姿を、ロイが眩しそうに見つめていた。
「ほー!!」
宝物庫を開けた途端、奇声をあげたレオノールが突入し、その後ろに物珍しそうなシルヴァが続く。
「シルヴァも初めてだったな」
「はい。兄上は入ったことがあるんですか?」
「数回だけだがな。宝物庫は滅多に開かれない」
箱の中にドーンと詰め込まれた金貨があれば、ガラスケースに入っている宝石もある。中でも珍しいのは、棚に並べられた古文書や用途不明な魔導具であろうか。
「これって使えるんですか?」
用途不明な魔導具を指さして尋ねるシルヴァに、ザギルは苦笑しながら答える。
「誰も使い方を知らんのだ。重要かどうかも分からないが、ずっと宝物庫にあったものだ。きっと価値があるんだろう」
「それ しんぐ」
ザギルが振り返……いや、足元を見ればレオノールがいた。
「しんぐとは?」
「かみの どうぐ。これ きんじしのだと おもう」
ジッと神具を見れば神の文字が透けて見える。それは豊穣を約束するものだ。この世界に神は二柱しかいないので、豊穣といえぱ金獅子なので間違いない。
レオノールが説明するとザギルが恐る恐る神具を掴んだ。
「もしかしたら、先代金獅子帝の妹君が嫁いできた時の物かもしれないな。目録が一部行方不明なのだ。これは動いているのか?」
「しんりょく きれてる」
貸して、とレオノールが神具を手にして力を込めれば、キラキラと光り始めた。
「光っているな」
「凄い」
「きらきら みえる?」
最近、ようやく人間にはキラキラが見えないことに気付いたレオノールは不思議に思ったが、神具なのでそんなものなのかもしれない、と思い直す。神力を注いだので、しばらくの間は豊穣が約束されるだろう。
それよりレオノールは尋ねたいことがあって戻ってきたのだ。
「わたし あっち いきたい」
レオノールが案内してきたのは壁の前だ。
「待て待て待て!もしかしてこの向こうに何があるのか?」
波乱の予感にザギルの胃がキリキリと痛みだす。
「もしかして隠し扉?」
「たぶん そう」
「こういうのは何処か押したり動かしたりすると開くんだよ」
シルヴァが冒険者あるあるを語り、レオノールが辺りをペタペタと触り始める。
ザギルは宝物庫の中の好きなものを1つ、との約束に2人を止められないでいた。
「あそこの天井少し窪んでない?」
シルヴァの言葉に上を見ると、確かに丸く色がくすんでいる気がする。レオノールは翼を生やして浮かぶと、その丸い部分に指を突き入れた。蔓で押さなかったのは気分である。
――ポチッ
ゴゴゴ……と言う音と共に扉が開き、中を覗けば階段が見える。
「おいしそうな におい する」
「そう?カビ臭いだけだと思うけど」
楽しそうな2人とは裏腹に、ザギルの顔色は蒼白だ。
「待て!危険かもしれない。父上とライオネル殿下を呼ぼう」
本当に呼びに行きそうなザギルを蔓で縛って、レオノールとシルヴァは階段を下って行く。
「良かったのかな……」
「ぼうけん ぎせいが つきもの」
蔓を光らせているので明かりは問題ない。というかレオノールにはそもそも明かりは必要ないので、これはシルヴァのためのものだ。いくら夜目の効くネコ科だとは言え、真っ暗では何も見えないのだ。
恐る恐る下りていくシルヴァに抱えられながら、レオノールは早く早くと急かす。
「きづかれる まえ みつける」
「ええー、こういう展開には罠があるんだよ」
「わたし ふせぐ。だいじょぶ」
情緒もへったくれもないレオノールに苦情を言いながらも、シルヴァは歩みを早めるのだった。




