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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
龍脈の修復
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修復作業・上

 レオノールは龍脈の側に来ていた。

 大動脈と呼ばれる龍脈の主流は、大河のように巨大で轟々と魔力が唸りを上げて流れている。レオノールはその内の1つに近付くと、えいっと力を振り下ろした。

 その瞬間、流れていた魔力は行き場を失い、大地を削って空高くへと吹き上げた。遠くから見れば、まるで間欠泉のように見えただろう。

 レオノールはといえば……魔力と一緒に空の彼方まで吹き飛ばされていた。物凄い力で打ち上げられていたのが緩やかになり、やがて落下へと転じる。

 風の唸り声を聞きながら、レオノールは背中に植物で出来た翼を生やすと、風を操り飛んでいく。植物のドラゴンを飛ばす事に比べたら、小さなレオノールを運ぶなど簡単だ。


 雲を突き破ると地表が見えてきた。


 ただ随分と遠くに飛ばされたのかアークバルトの気配は遠い……いや、段々と近付いてくる。レオノールもアークバルト目掛けて下降していく。


「ぱぱ」


「レオノール!」


 レオノールがアークバルトの胸にドーンと飛び込んだ瞬間、轟音が鳴り響き、次いで衝撃波が辺りの木々をなぎ倒した。はた迷惑な再会である。


「心配したぞ」


「わたし そらとんだ。ぱぱも とぶ」


 レオノールは自分の翼を消すと今度はアークバルトの背に翼を生やす。風魔法をレオノールが使う前にアークバルトが風を操る。轟っと言う音と共に再び空の住人となったレオノールは文句を言う。


「ぱぱ へた。わたしに まかす」


「くっ!なかなか難しいな」


 右へ左へ上へ下へ、木の葉が風に翻弄されるようにグルグルと回っている。アークバルトからレオノールへ操縦者がチェンジすると、今までの暴走が嘘のように真っ直ぐに飛んだ。


「レオノールは細かい制御が上手いな」


「わたし とくい」


 褒められて満更でもないレオノールはスイスイと元の場所へと戻って行った。


「無事だったか!」


 無事に着地すればザギルが駆け寄ってくる。その後ろにはジェンヌとベルジュも見える。

 ロバートは魔物の暴走を警戒してブリテに戻っているために不在だ。


「わたし だいじょぶ。つづき する」


「少し休んだ方がいいのではないか?」

「無理はなさらないで下さい」

「子どもが危険な目に遭うのは容認できかねる」 


 ザギル、ジェンヌ、ベルジュが次々と止めてくる。どうやら余程心配をかけたらしい。


「だいじょぶ」


 ちょっとくすぐったい気持ちになりながらも、レオノールはニッコリと笑ってみせる。

 基本装備が無表情なレオノールの笑顔に3人の心は撃ち抜かれた。


「「「か、可愛い」」」 


 身悶える3人を放っておいて、レオノールはアークバルトにおねだりする。


「ぱぱ ちから ちょうだい」


「好きなだけ持って行け」


 塞がれた口から力が流れ込んできて、レオノールはそれを溜めていく。やがて体全体から金色の光が溢れ始め、レオノールは唇を離した。


「いってくる」


 レオノールは再び地面へと潜り龍脈へと向かう。さきほど大動脈を断ち切ったために魔力が荒れ狂い、辿り着くまで倍の時間が掛かってしまった。

 溢れてくる魔力に目を細めてレオノールは大動脈を視る。ここで間違える訳にはいかない。


「これと これ」


 まずはルピナス山脈を下る大動脈の修復だ。

 切れた大動脈同士をくっつけて、貰った力を流していく――癒しと活性の力だ。うまく繋がり、魔力の流れが穏やかになった。後はおかしな繋がり方をしている中小の龍脈を切ってはちょこちょこ繋げ替えていく。

 レオノールに出来るのはここまでだ。


「あとは ぱぱにまかす」


 自分の仕事を完璧にこなしたレオノールは意気揚々とアークバルトの元へ戻った。





「レオノールは大丈夫なのか?」

「あれだけの魔力の奔流ですよ!?大丈夫な訳ありません!」

「やはり子どもを酷使するのは良くないと思い申す」


 レオノールが修復作業に専念している時、地上ではレオノールを心配する3人組がアークバルトに詰め寄っていた。


「問題ねぇよ。それにこれは俺じゃ出来ねぇ」


 アークバルトはレオノールの無事が見て取れるので心配はない。そもそも何かあれば自分もくっついて行っている。ここにいるのはレオノールの邪魔をしないためだ。


「本当に無理なのか?」


 疑い深いザギルにしょうがない、とアークバルトは近くに生えていた雑草を引き抜いた。


「もしテメェにこの雑草の根を直す力があるとする。んで、テメェはこの引き抜いた雑草の根と、引き千切られた土の中にある根を寸分違わずにくっつける事が出来るか?俺には出来ねぇ。俺に出来るのは精々が一番太い根を繋ぎ合わせる事だけだ」


 言われてザギルは沈黙する。

 千切れてしまえばどこの根と繋がっていたかなど分かる筈がない。


「そんな大変な事をあの子1人で行っているのですね」


 ジェンヌの言葉が全員の思いを代弁した。

 レオノールの好感度が、本人が知らない間に爆上がりしていた。

 


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