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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
龍脈の修復
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龍脈の確認

 翌日、レオノールは早速作業に取り掛かった。作業とはいっても、今日は状況の確認だけで本格的な修復は早くても明日以降になる。

 ザギルは場所が国境周辺なので、ルピナス連邦国と話し合いの席を設ける、と言って内蔵されている小型の飛空艇で旅立って行った。ちなみに運転手はジルで護衛も兼ねている。どこまでも優秀な男である。


「わたし いってくる」


「あまり無理はすんなよ。時間になれば合図するから帰ってこいよ」


 気合い充分なレオノールにアークバルトは心配顔だ。

 心配症なアークバルトに頷くと、レオノールは力を使う。地面に波紋が広がり、とぷんとレオノールは沈んでいく。深く深く沈んでいくと龍脈が見えてきた。

 近くで見るとこんがらかっているのが良く分かる。どうやらここは大動脈が複数個行き交う交差点みたいな場所のようだ。2つはちゃんとくっついてるので大丈夫そうだ、とレオノールは残りの2つに目を向ける。

 パッと見、ルピナス山脈を下るように通っている大動脈は問題なさそうに見えるが、その奥に切れた大動脈が見える。ルピナス山脈の大動脈に邪魔されてガザールの方へ来ることが出来ないようだ。


「なんか へん」


 他の大動脈に挟まれているためガザールの大動脈は動かせず、どうやっても繋ぐことが出来そうにない。

 レオノールが目を凝らせば、龍脈の色が僅かに違っている事に気付いた。


「じぃじ まちがって くっつけてる」


 レオノールがガザールの大動脈だと思っていたものが本来ルピナス山脈を下る大動脈なのだ。つまり、今のルピナス山脈の大動脈は間違ってくっついている事になる。こちらがガザールへ繋ぐべき大動脈だ。


「いっかい きらなきゃ だめみたい」


 思ったよりも大仕事になりそうだ。レオノールは報告すべく地上を目指した。

 レオノールが地表に顔を出せば、空は茜色に染まっていた。どうやらもう夕方のようだ。


「丁度良かった。そろそろ合図を出そうと思ってたところだ」


 アークバルトにヒョイっと抱きかかえられたレオノールは、もの凄い速さで運ばれていく。


「どこ いく?」


「前にレオノールが休んだ湖があるだろう?しばらくそこを拠点にする」


 レオノールが良く休めるようにとの配慮である。

 飛空艇もどうやら移動したようで、切り開かれた湖の畔に鎮座していた。


「ざぎるは?」


「日程の調整に数日はかかるそうだ。それまではレオノールもゆっくりしておけ」


「わかった。きまったら おこして」


 レオノールは英気を養うために、しばらく湖で眠ることにした。





 次にレオノールが目を覚ました時、主要人物が集まっていた。

 前に会ったことのあるマヤレンテ代表ジェンヌ・カッサンドラにダンガスト代表ベルジュ・キコノックス、ブリテ代表ロバート・イルミだ。

 ザーライン代表がいないのは、ヒュドラの件の責任を取らされ、マヤレンテに併呑されたからだ。ワン・ジンはダンガストとブリテに接収され、ルピナス連邦国は今では3カ国に減っていた。 

 このルピナス連邦国の3名に加え、今回主催国であるガザール帝国のザギル、そしてアークバルトとレオノールの6名でテーブルを囲んでいる。場所は飛空艇の中だ。


「まず龍脈の修復によりどの様な影響が出るのか、その予測だが、昔はルピナス山脈からガザールの北部を通って海に抜けるまで魔の森が連なっていた。ルピナス山脈にある魔の森も今ほど巨大ではなかったようだな」


「つまり龍脈を修復すればブリテにある魔の森が縮小すると考えていいのか?」


 目を輝かしてそう質問したのはロバートだ。

 ルピナス山脈にある魔の森には、特に強い魔物が生息する変異の森と呼ばれる場所が存在する。その大部分はブリテと元ワン・ジンに接しており、魔物の襲撃には苦慮していた。元ワン・ジンも今ではブリテに接収されたため、ブリテにかかる負担は増すばかりだ。

 もちろん、マヤレンテとダンガストも兵や物資を出しているが、変異の森の魔物は普通よりも巨大で力が強い。まるで別の種のようだと他所から来た冒険者は口をそろえて言っている。


「これはあくまで過去の資料を元にした予測に過ぎない」


 そう言ってザギルは用意した資料を配っていく。

 それは過去の地図と魔物の分布図、植生など様々だ。


「今回の贄は何を差し出せばよろしいか?」


 覚悟を決めたベルジュがグッと拳を握る。ベルジュを始めジェンヌとロバートも、金銭や宝石など報酬となるものは用意して来たが贄となると話は別だ。鬼気迫る表情の3人にレオノールは告げる。


「にえ ひつようない。りょうみゃくの かんり かみの しごと」


「毒の大地を元に戻すのとは違うのですか?」


「どくのだいち じょうたい かわるだけ。だいち いきてる」 


 どうやら今回は前回と違うらしい、とジェンヌがロバートとベルジュを見れば、2人もホッとした表情だ。


「龍脈の詳細だが……」


 そう言ってザギルがチラリとアークバルトを見れば、アークバルトはチラリとレオノールを見る。皆の視線を一身に受けたレオノールが、アークバルトの膝の上に立ち上がる。

 ルピナス連邦国の代表たちは、ちんまいレオノールを見て何か言いたそうだったが、賢明なことにそれを呑み込んだ。

 デデンと広げられた地図――持っているのはジル――にレオノールが細い棒の先を当てる。そこは変異の森の中心を指していた。


「ここ りゅうみゃくの だいどうみゃく あつまってる」


 レオノールは説明を始めた。

 大動脈の1つが切れたままの状態で、もう1つが間違って繋げられていること。直すには間違って繋げられている大動脈を切って正しく接合し直すしかないことを。

 

「切ればどうなるのでしょうか?」


「まりょく ふきだす」


 龍脈と言われてもいまいちピンとこないジェンヌの質問に、レオノールは何を当たり前なことを言ってるの、と言わんばかりに返す。

 だが、ジェンヌの聞きたいことはそういう事ではない。


「具体的に何が起こるかわかりますかな?」


 ベルジュが助け舟を出したが、良く分かっていないレオノールはその船をアークバルトへ渡した。


「短期的に魔の森が拡大して魔物が凶暴化するぐらいだ。問題ねぇだろ」


 端的に起こることを述べたアークバルトに、全員が顔を歪めた。特に変異の森があるブリテの代表であるロバートにとっては大問題だ。

 ただ人間にとっては大問題だがアークバルトには関係のないことだ。これ以上レオノールに負担をかけることは許さない。アークバルトが放つ剣呑な雰囲気に誰も言葉を返すことが出来なかった。


「ほか しつもん ある?」


「ガザールの魔の森が復活するまでどの位かかるだろうか?」


「はやいと おもう。でも きぼ ちいさい」


 龍脈が通ればすぐ魔の森は出来上がる。ただ、それが広がるのは土地の魔力が回復してからだ。魔物も魔力が極端に薄くなっている森の外にはでないので、しばらくの間は森に入らない限り安全だ、とレオノールは太鼓判を押す。


「いつから始めるのですか?」


「すぐ」


「その、少し待ってもらう訳には……」


「黙れ。これ以上人間の都合を俺たちに押しつけるな」


 何とか期日を延ばそうとしたロバートだったが、それはアークバルトを怒らせるだけに終わった。このまま何もできずに終わるのか、と拳を握ったロバートに救いの手が差し伸べられる。


「まもの しんぱいない。わたし たべる」


 大きな力を使うのだ。その分回復のために喰らわねばならない。強い魔物が生まれるのはレオノールにとっては好都合だ。

 その後、レオノールはロバートからたくさん宝石をもらった。




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