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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
友との出会い
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大人たちの会話

 誕生日会が終わってアークバルトとロイ、ザギルは別室へと移っていた。隣の部屋ではレオノールとシルヴァが寝ている。

 グラスが全員分用意され、テーブルの上にあるワインが注がれ……ることなくアークバルトがラッパ飲みしている。


「なかなか良い酒だな」


「そう思うなら、私たちの分も残しておいてくれ」


 仕方なしにロイがもう2本棚からワインを取り出し、その内の1本をアークバルトへ放る。


「気がきくじゃねぇか」


「また飲まれては敵わんからな」


 用意が整い、アークバルトは水晶玉を起動させる。レオノールが貰ったものではなく、アークバルトのだ。そう、この男はレオノールを独り占めしたいがために、通信水晶の存在を隠していたのだ。

 ギルバートが水晶に映るとロイとザギルが立ち上がる。


『礼は不要だ。単刀直入にいこうではないか。皇位争い、どう決着をつけるつもりだ』


 皇位争いはシルヴァが生まれた時から存在していたのだが、それが急速に激化してきた。ロイがまだ若く、健在なことを考えれば不自然と思えるほどに。

 火に油を注いだ存在、それがアークバルトとレオノールである。金獅子帝の甥っ子であるレオノールがシルヴァと友誼を結んだことにより、祖霊信仰派の貴族が勢い付いたのだ。金獅子に選ばれたシルヴァこそが正統であると。

 その後、ザギルとも友誼を結んだがその勢いは止まらなかった。それを疎ましく思ったのが王妃を筆頭とする保守派である。


「近々、ザギルを皇太子に任ずるつもりです」


『それで双方が大人しくなるとでも?』


 元々、祖霊信仰派は過激なことで知られている。ザギルは何度となく命を狙われてきた。皇太子となれば、より一層危険になるだろう。

 そして本来正統を重んじる筈の保守派は、王妃の存在によって歪められ、シルヴァの排除に躍起になっている。ザギルが皇太子となっても執拗にシルヴァを狙ってくるだろう。


「本来なら争いが激化するはもっと先の話でした」


「なんだよ。俺たちのせいだとでも言うつもりか?」


「そうではない。私はレオノールに感謝している。あの子と友人になってくれてな。あんなに周りに怯えていた子が、今では兵たちに混ざって訓練までしているのだ。感謝こそすれ、文句を言うつもりはない。これはただ事実を話しているのだ。私は皇帝の座を退くつもりはないし、シルヴァもまだ6歳だ。本来なら、まだ皇位を争う時期ではない。私はな、シルヴァが成人したら逃がそうと思っていたのだ」


「父上!それは……」


「シルヴァを捨てるという意味ではないぞ。シルヴィアがいる限り、あの子が安全に暮らすことは出来ないだろう。それにあの子は先祖返りだ。宮殿に収まるような器ではない。もっと自由に生きさせてやりたいのだ」


『皇位継承権の放棄か』


 皇位継承権の放棄は、シルヴァが成人してから自分の意思でするしかない。そうすれば継承権はなくなるが、皇族としての籍は残る。ガザールでは15歳で成人となるので、それまで待つ必要がある。

 逆に今、皇位継承権をシルヴァからなくそうと思えば、それは放棄ではなく破棄となる。これは皇帝自ら宣言しなければならず、皇族として瑕疵があると言っているのと同義だ。当然、皇族としての籍も残らない。適当な爵位を与えられ、何処かの領地に封じられることになるだろう。

 

「はい。もう少しあの子が大人になったら話そうと思っていたのですが……」


 事態がそれを許してくれそうにない。このまま行けば、ザギルとシルヴァ、どちらかが死ぬことになる。


『皇太子の任命を今行う理由は?』


「ザギルの立場が危うくなってきています」


 これはぶっちゃけレオノールが原因だ。

 訓練場で魔物モドキを作り出し、兵たちを襲った時、ザギルは1体しか倒せなかったがシルヴァは5体倒している。これはレオノールが手加減していたせいだが、果たして周りはどう思うだろうか。

 僅か6歳でザギルを越えたと、そう思うはずだ。獣人族は武力を重んじる傾向があり、今まで中立を謳っていた貴族が祖霊信仰派に流れつつある。この流れを止めるための立太子だ。

 理由を聞いたギルバートは責めるような目でアークバルトを見た。その目はお前が止めろよ、と語っていた。


「楽しそうなレオノールを止めるなんて出来ねぇだろ。それにな、コイツらの命の心配はする必要ねぇよ」


『どういう意味だ?』


 片眉を器用に上げたギルバートに、アークバルトはロイの腕を掴んで見せる。レオノールからの贈り物を。


『それはレオノールの力か?』


「加護だな。シルヴァとロイ、ザギル全員もらっている。特にシルヴァは魂にも加護がついてる。人間が害せるものか」


『ほー、そなたは貰っていないのだな』


「俺にはレオノールがいるから必要ないそうだ」


 ニヤニヤ笑いに、ニヤニヤ笑いで応じるアークバルト。その勝敗は決した。


『くっ!儂も側にいれば!』


 悔しそうにアークバルトを睨むギルバートに、ロイとザギルは困惑顔だ。


「これはそれほど凄いものなのですか?」


 ちょっと呪いの品ではないかと疑っていたザギルが尋ねれば、アークバルトは面白くなさそうに告げる。


「それがあれば死ぬことはねぇよ。襲った相手はどうなるか知らねぇがな」


『だが人間はどこまでも悪辣になれる存在だ。体は守れるが、心や身分は守れん。心せよ』


 例えば大切な者が人質に取られる、例えば大罪を擦り付けられる。やり方はいくらでもあるのだ。


「それでも、子どもたちの命が守られると分かっただけで十分です。いざとなれば逃がします」


 この命に代えても、言葉には出さなかったがロイの覚悟は伝わった。


『いいだろう。その時は儂が受け入れよう。金獅子の名にかけてな。それとアークバルト、そなたザギルと仲良しアピールをするように』


「はあ!?なんで俺が」


『子の尻ぬぐいは親がするものだ』


「……」


 最後の最後で勝利を手に入れたギルバートは、勝ち誇った顔で通信を切った。








 大人たちが重要な会議を開いていた頃、レオノールとシルヴァは布団を頭から被り、ヒソヒソ話を楽しんでいた。


「デュオ・アムーレってどんな所?」


「まもの おいしい」


「他には?」


「きらきら してる」


「キラキラって?」


「かみのちから だいちから ばーって でてる」


「凄い!さすが金獅子様が治める地だね!」


 キラキラは人間には見えないのだが、それを知らないレオノールによって、常識とは違うことが教えられていた。この後、常識人によって訂正されるのを願うばかりだ。

 レオノールによるデュオ・アムーレ講座が一段落ついた頃、レオノールはシルヴァの耳に囁く。


「わたしの ひみつ おしえる」


「秘密?」


「そう。しるゔぁ とくべつ。だから おしえる」


 ゴクリ、と息を呑んでシルヴァは拳を握る。


「絶対に誰にも言わない」


 シルヴァを信じているレオノールはその言葉を疑う事なく小さく頷くと、眼帯に手を掛けた。 

 そこから現れた金色の目にシルヴァは息を呑む。金の目は金獅子の証しだ。


「レオノールは神様なの?」


「そう。わたしの みぎめ らいおねるのめ。ひだりめ ばれんしあがのめ」


「バレンシアガ?」


「らいおねるの ふたごの かみ」


「レオノールは二柱の神様の血を引いてるの?」


「ち じゅうよう ちがう。ちから じゅうよう。わたし ふたつの ちから もつ」


 シルヴァはようやく、アークバルトが何故あんなにもレオノールに過保護なのかを理解した。きっと警戒しているのだ。レオノールを守るために。


「俺、もっと強くなってレオノールを守るよ」


「わたし つよい」


「レオノールは強いけど、何ていうか、ほら、ちょっと抜けてるから」


 レオノールは納得いかない顔をしているが、チョコレートあげるから付いておいで、と言われたら付いていきそうな気がする。宝石なら間違いなく付いていくだろう。 

 シルヴァは破天荒なレオノールを守るアークバルトを、ちょっと不憫に思うのだった。



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