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金の獅子と銀の竜  作者: じゃっすん
友との出会い
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狩りに行こう!

 太陽が燦々と輝き、雲一つない青空が彼方まで続く。今日は絶好の狩り日和だ。

 保護者はアークバルト、参加者はレオノールとシルヴァだ。


「その格好で狩りをするの?」


 シルヴァに問われて、レオノールは自分の服に目を向ける。今日は水色のワンピースに、背中に大きな濃紺色のリボンが結ばれており、それが天使の翼のように見える。セットで付いていた日傘はアークバルトの腕輪の中だ。


「くろ にする?」


「大丈夫だ。着替えは入れてある」


 完璧な回答に、レオノールはシルヴァを振り返った。


「もんだい ない」


「ええー、そういう問題じゃなくて、ズボンの方が……」


 いいんじゃないのか、と言おうとしたシルヴァは鋭い金色の目に沈黙を選んだ。賢い選択である。


「森まで飛ばすからな捕まっていろ」


 アークバルトはしっかりとレオノールを抱きしめ、適当にシルヴァの襟首を掴むと足に力を込めた。

 ダンッ!と勢いよく飛び出したアークバルトの足元には城下町がもの凄い速さで通り過ぎていくのが見える。その後、何度か建物を踏み台にして飛ぶように走り、レオノールは街の外に降り立った。

 もちろん加減はしてあるので建物は無事である。ちょっとヒビが入ったかもしれないが。


「まち ひと いっぱい いた」


「レオノールは街に行ったことがないの?」


「ない」


 デュオ・アムーレにいた頃は完璧に琥珀宮に引きこもっていたし、他の国に行った時も飛空艇から行き来した位だ。


「じゃあ、今度案内するよ。ガザールには珍しい物が沢山あるんだ。お土産を一緒に選ぼうよ」


「おみやげ なに?」


「えっと、遠くに行った時に、家族に買って帰るんだよ。こういう物がありましたってプレゼントするんだ」


「ぷれぜんと」


 そう言えば、レオノールはプレゼントを貰ったことはあるが、したことはない。


「ぱぱ!わたし じぃじと にぃにと まりーに ぷれぜんと かう」


「ああ、一緒に選ぼうぜ」


「うん。しるゔぁも いっしょ いく」 


「うん!お出かけかぁ。楽しそうだよね」


 ニコニコと笑うシルヴァに、内心舌打ちした心の狭いアークバルトは「行くぞ」と一言告げて再び地を蹴った。






 レオノールはふんふん鼻歌を歌いながら、ご機嫌に歩いていた。ガザールの魔の森はデュオ・アムーレとは植生が全く違い、知らない植物が沢山あったのだ。遠い所は根を伸ばして吸収して、近い所はトテトテ歩いては収穫している。


「きのこ みつけた」


 小さくフワフワとした綿毛の可愛らしいキノコにレオノールはご満悦だ。


「ちょ、ちょっと待って!それ寄生茸だから!」


 胞子を生き物に吸わせて体内から繁殖する恐ろしいキノコだ。当然行き着く先は死である。

 シュルリ、とキノコを吸収したレオノールは次の獲物――真っ赤な細長いキノコに手を伸ばす。採っては見せて吸収するを繰り返すレオノールに、シルヴァは悟りを開いた。心配するだけ無駄である、と。 


「だいぶ奥に来たな。そろそろ狩りを始めるか」


 アークバルトが森の奥に目を向けると、シルヴァの背が自然とピンと伸びて、ぶるりと体が震える。レオノールはアークバルトから日傘を受け取ってさした。


「まずはシルヴァの訓練からだ」


 レオノールに頼まれたのでアークバルトも殺る気満々だ。レオノールもペタンと座って根っこを伸ばし、食事用に罠を複数個作っていく。


「始めるぞ」


 アークバルトの姿が消え、遠くから獣の嘶きと共に足音が近付いてくる。獲物を追い立てているのだ。

 シルヴァが体勢を低くして拳を構える。訓練を始めたのが最近とは思えぬほど、その姿は堂に入っていた。


 ――ブオオオオオ!


 木をなぎ倒す音と共に現れたのは巨大な猪だ。牙は大人の背丈ほどあり、当たればひとたまりもないだろう。

 シルヴァは恐れる様子もなく猪と対峙した。猪がシルヴァに目を留めると、勢い良く突っ込んでくる。ヒラリと余裕で回避して、腹に一撃をお見舞いするが全く効いた素振りがない。


「弱点がどこか考えながら戦え」


 いつの間にか木にもたれ掛かって観戦していたアークバルトに頷くと、今度は鼻先にお見舞いすると同時に吹き飛ばされた。


「馬鹿が!正面からいく奴があるか!」


 呻くシルヴァの右腕はおかしな方向に曲がっていた。まあ、あの巨体を避けることなく殴りつけたのだ。骨折だけで済んだのは幸いだったと言えるだろう。もし牙が掠めていれば致命傷だ。

 アークバルトはシルヴァの傷を治すと、猪の正面へと投げる。


「避けた瞬間を狙えねぇなら周りの物を利用しろ」


 成程、と思ったシルヴァは大きな木の前まで猪を誘導する。突進してきた瞬間に飛び退き、木にぶつかって動きが止まった猪に踊りかかる。

 殴る、殴る、殴る。シルヴァはそれしか出来ない。顔を振る猪の牙が脇腹を掠めるが、それでも殴り続ける。やがてドゥっと猪が倒れ、その振動でシルヴァも尻餅をついた。


「や、やった」


「やったじゃねぇよ」


 シルヴァがアークバルトの方を見れば、猿型の魔物が6体死んでいた。


「視野が狭すぎる。他の魔物が来たことにも気付いてなかっただろ。それと弱ぇくせに魔物の弱点を知らねぇのは勉強不足だ」


 散々なダメ出しにシルヴァの髭が下がる。その通りなので何も言えない。


「それとな」


 クイッと顎をしゃくった先を見れば、血塗れな日傘をさしたレオノールが直ぐ側に座っていた。


「ひがさ やくに たった」


「仲間の位置ぐらい把握しとけ」


 シルヴァは唖然とレオノールを見る。


「ずっとそこにいたの?」


「そう」


「レオノールの冷静さでも見習うんだな」


 レオノールは冷静なんじゃなくて図太いだけだと思ったが、声には出さずにガックリと膝をついたシルヴァだった。


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