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【新章開始】社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
六章 章タイトルはおいおいで!

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隠しコマンドと師匠と相談役と!

 リンとトウコを伴い、エレベーターに乗り込んだ。


「開くボタンを押しながら一階のボタンを三回押すらしいけど……。

 お、点滅した。

 これで目的の階に行けるらしいな。

 なんだこの隠しコマンド……」


 エレベーターで間違えて階を選んだとき、連打でキャンセルできる場合がある。

 メーカーによって二回か三回か違ったりする。


 リンが思いついた顔で言う。


「あっ、御庭さんのことですし、忍者屋敷みたいで面白い、って思ったのかもしれませんよ!」

「あー、だからっスか!

 言われてみればそうっスね!」


「拠点をおもちゃにするなって話だが、セキュリティ対策なのかな。

 どうせパスワードがないと開かないドアだらけなのに、意味あるのかコレ」

「念には念を入れているのかもしれませんねー」


 そうこう言っている間にエレベーターが止まる。

 見た目は他の階と同じだ。

 ここが何階なのかを示す表示はない。


 階段は見当たらないし、火事にでもなったら困るだろ。

 違法建築じゃないか?


 まあ、忍者屋敷が法令順守で作られている訳もないか。

 って、納得してどうする。


「この部屋っスかね?

 今日のパスワードは、えっと……ポチポチっと!

 お、正解っス!」


 トウコが廊下の端末にパスワードを入力してドアを開く。

 自動ドアが開いたところで、壁をノックする。


 こういう場合の作法は、ちょっと混乱するな。

 ドアをノックしてからパスワードを入力すると間が開いてしまうし……。

 そもそも、自動ドアの場合はノックは要らないのか。


 室内には御庭とナギさんがいた。

 先ほど捕まえた吸血鬼が担架に寝かせられている。


 それと……しかめっ面の爺さんもいる。

 誰だ……?


 御庭が笑顔で俺たちに手を振る。


「やあクロウ君、待っていたよ!」

「ああ、それで魔石を取り出すって言っていたが、どういう――」


 と言いかけたところで老人が面倒そうに言う。


「じゃあさっさと済ませるぞい!

 なにかと言えば老人をこき使いおって!

 (わし)はもう楽隠居(らくいんきょ)しとるんじゃからな!」


 御庭が笑顔で諫める。


「まあまあ、師匠!

 そうおっしゃらずに、お力添えをお願いします!

 クロウ君、こちらは公儀隠密の相談役で、キンダテさん。

 黄金のキンに、建物のタテと書くんだ」


 金建(きんだて)さんか。

 変わった名前だな。


 金と建の二文字をつなげて書けば鍵になる。

 それで鍵爺ってあだ名なのか。


 続けて御庭が俺たちを金建(きんだて)さんに示す。


「こちらはクロウ君、リン君、トウコ君で――」


 御庭が老人を示し、次いで俺たちを紹介する。

 そこでトウコが驚いた顔をする。


「あれ?

 (じー)!?」


 老人が長い眉毛を動かし、トウコを見る。


「ありゃ?

 トウコちゃんじゃないかい。

 さっきぶりじゃの!」


「こんなところで何やってんスか?」

「何って、お仕事じゃよ、お仕事。

 頼まれたら断れないたちじゃから、(わし)


 先ほどと変わって好々爺(こうこうや)といった、朗らかな調子で笑う爺さん。

 豹変したな。


「ええと、トウコの知り合いか?」

「この人がさっき言ってた爺っス!

 なんか用事があるとか言ってたけど、これっスか?」


 老人がうなずき、御庭を指差す。


「そうなんじゃよー。

 この小僧がこき使いよるんじゃ!

 トウコちゃんからも何とか言ってやってくれんか!」


「爺って社長の師匠なんスか?

 で、店長に用事っスか?」


 なんか、ぜんぜん誰が何なのかわからん会話だな。

 謎の老人はトウコのゲーム友達で、御庭の師匠にあたるのか。


 公儀隠密の相談役ということだが……。

 どうやら偉い人らしい。


「師匠とか相談役てーのは、小僧が勝手に呼んでるだけじゃ。

 まー、たまには色々教えてやるがの。

 いつも用事があるのは小僧のほうじゃがな」


「はは、師匠のお力添えあっての公儀隠密ですから!」

「おべっかはいらんわ!

 それで、お前さんが噂の店長か」


 じろり、と老人が俺を値踏みするような顔で見る。

 長い眉毛の下からのぞく眼光は鋭く、ただ者ではない雰囲気を醸し出している。


 俺の噂というのは、トウコから聞いたのかな?

 御庭からかな?

 妙な噂じゃないといいが。

 特にトウコは余計なことを言っていそうだが……。


 そんなことを考えつつも、俺は礼儀正しく頭を下げる。


「どうも、クロウゼンジです。

 トウコがお世話になっています」

「オトナシリンです。

 よろしくお願いいたします」


 俺に続いてリンも自己紹介をして頭を下げる。


「おお、そっちはリンネーちゃんじゃな!

 噂通りの美人さんじゃのぉ!

 ふぉふぉっ!」


 老人が何やら機嫌をよくしてリンに笑いかける。

 なんか、俺とぜんぜん態度が違うな。


 鋭い眼光は消え、だらしなく目じりが下がる。

 ただ者でない雰囲気がすっかり消えて、もはやただのエロじじいになっている。


 ナギさんがいつも以上に硬い表情なのはこの人のせいか。


 そう言えば前に、公儀隠密には隠居したご意見番が居ると言っていたっけ。

 セクハラがひどいのでナギさんは苦手だと聞いていた。


 いつもなら御庭を守るように毅然(きぜん)と立っているのに、今は御庭の陰に隠れて距離を取っている。

 ナギさんがごほんと咳払いする。


 御庭が老人を促す。


「それで師匠。

 魔石の件ですが、お願いできますか?」


 この人が魔石をどうにかしてくれるってことか?

 それでここへ呼ばれたのか。


 例の吸血鬼は担架に乗せられ、固定されて身動きが取れない状態だ。

 目だけをぎょろつかせて冷や汗をかいている。


 その上で凶悪犯罪者に着せる拘束服を着せられている。

 これなら肉を斬ろうが骨を断とうが、逃げられないだろう。

 ちょっと哀れな感じだ。


「じゃ、さっさとやるかの!

 奥の部屋へいくぞい!」


 そういうと金建さんはドアを開けて奥の部屋へ入っていく。

 俺たちも後に続く。


「……これは!?」


 奥の部屋には異様な光景が広がっていた。

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