積み上げられた災厄と危うい均衡!?
公儀隠密の隠し階層へやってきた。
パスワード管理された部屋のさらに奥。
閉ざされた深部へと足を踏み入れた。
その部屋には異様な光景が広がっていた。
様々な荷物が乱雑に積み上がっている。
スーツケースやタンス、ロッカーにカラーボックス。
中には年代物の葛籠や玉手箱もある。
年代やサイズ、形は様々だ。
だが共通点がある。
すべて箱、入れ物に分類できる品だ。
拠点の奥深くで厳重に管理する意味はおのずと知れる。
趣味で集めた品……ではあり得ない。
老人――金建さんがタンスの一つに近寄っていく。
まるで今日着る服を選ぶような気軽な足取りだ。
「この辺でいいかの……ホレ!」
金建さんがタンスに鍵を差し込む。
いや、よく見ればその手に鍵は握られていない。
取り出すそぶりも見えなかった。
老人が鍵をひねる動作をすると、ガチャリ、と音が聞こえた気がする。
タンスが開くと、そこには黒々とした転送門が渦巻いていた。
「やはり、ダンジョンか……」
「ということは、ここにあるものはすべて、そうなんですか?」
「悪性ダンジョンが山積みっス!
大丈夫なんスか、これ!?」
爺さんが緩んだ顔で言う。
「それが大丈夫なんじゃよ、トウコちゃん。
儂がしっかり鍵をかけておるからな!」
「つまり、金建さんが、異能で封じているんですね?」
「そうじゃ!
どうだ、すごいじゃろ?
かっこいいじゃろ?」
老人は俺に答えると、トウコにドヤ顔で迫る。
「凄いっス!
ただのスケベジジイじゃなかったんスね!」
「いつも言っとったじゃろ。
儂が死んだら、世界が滅びるかもしれんって!」
鍵をかけて封じる異能……。
そして術者が死ねば能力は解除される、と。
トウコが感心した調子で言う。
「へー、本当に凄いんスね!
冗談かと思ってたっス!」
「わかったなら、もっと尊敬して敬うんじゃな!」
老人が長く伸びた白いあごひげをふぉっふぉとしごく。
俺は笑う老人から視線を外して部屋を見渡す。
部屋を埋め尽くすほどに積み上がっている箱の数々。
この全てが悪性ダンジョンだとすると……。
とんでもないことだぞ!?
世界が滅びるかまではわからないが、この拠点は間違いなく消滅する。
周辺一帯を巻き込んだ大規模パージが起きることは間違いない!
以前の事件では三つか四つのダンジョンで、街の一区画を包んでいた。
この数となると街ごと消えてもおかしくはない!
この老人は気難しいと聞いている。
頼み事もめったに聞いてくれないと御庭は嘆いていた。
今、機嫌を損ねたらヤバいのでは?
頼むぞ、トウコ!
空気を読むんだ!
老人の言葉にトウコが眉を顰め、口を尖らせる。
「うぇー?
でも爺はゲームはへたくそだし、あたしが手伝わないとぜんぜんダメっスよね!
いまさら尊敬とか、ないっスね!」
ダメだ―っ!
トウコが空気を読むはずなかった!
トウコは爺さんの面倒を見ているといっていたが、それはゲームの話だ。
現実では上司の上司みたいなものなんだぞ!
だ、大丈夫なのか!?
「フム……」
トウコの言葉を聞いた老人が顔色を変える。
老人が表情を一層緩めて、猫なで声で言う。
「そうじゃのぉー。
またトウコちゃんに手伝ってもらわないとのぅ」
トウコが腰に手を当て、歯を見せて軽く笑う。
「しょうがないっスねえ。
暇なときならいいっスよー!」
よくわからないが、トウコは妙に気にいられているようだ。
世界の命運はトウコに委ねられた……のかもしれない!




