再戦! スピードスター!
男が振り向きながら言う。
「てめえは――見た顔だな!」
「お前は……!
オークのダンジョンで見た吸血鬼!」
犬塚さんとダンジョンを脱出するとき追ってきた男。
足が速いスピードタイプだ!
男が顔に手を当てて俺を指差す。
「思い出したぜ、てめえ……!
だが死んだはずだ。
ウラドさんの光線で貫かれてよォ!」
こいつと戦っているところで自律分身はウラドにやられたんだ。
光線……。
やはりウラドの能力は光!
予想はしていたが、これで確信に変わったぜ!
ペラペラしゃべってくれるとは、ありがたいヤツ!
「さあな。
他人の空似ってやつじゃないか?
俺は特異殲滅課のゴロウって言うんだ」
嘘だけど!
「特異殲滅課だとォ?
さっきの連中の仲間ってわけかよォ!」
「あいつらに会ったのにお前がここにいるってことは……。
逃げてきたんだな?
お前ひとりだけで、仲間を見捨てて!」
俺の言葉に、男が目を見開いて叫ぶ。
「仲間だァ!?
ひひっ!
俺はもう幹部になったんだ!
トロい部下どもは奴らの足止めしてりゃあいいんだよォ!」
男が当然といった顔で言い捨てる。
部下が足止め、か。
ということは、キリトたちは無事だ。
それにしても幹部になった……だと?
こいつは、オークのダンジョンでカプセルを飲んで生き延びている。
あれは奴らにとってのある種の試練。
いわば、昇進試験のようなものだ。
カプセルにより力を得るだけでなく仲間内での身分も上がったということだ。
そうなら、仲間を見捨てるよりたちが悪いぜ!
俺は男に刀を向ける。
「おい!
幹部ってのは責任者だろ!
それならお前が部下を守ってやらなきゃならないんじゃあないか!?
上司ってのは、そういうもんだ!」
男がバカバカしいとばかりに首を振る。
「はっ、違うねェ!
部下ってのは上の奴が使ってこそだ!
トロい奴らは何やっても上へ行けねえ!
だが俺は素早く掴んで這い上がった!
自分の才覚でなッ!」
男の目が殺意を込めてギラリと光る。
そう思ったとき、男はもう一歩踏み込んできていた。
いや、二歩だ!
男の抜き手がすぐ目の前に迫っている!
「は、速い……ッ!」
俺は油断などしていないぞ!?
会話で情報を引き出そうと思ったが、隙は見せていなかった!
特級忍者になったことで俺のステータスは上がった。
敏捷性がAになり、素早くなっている。
だってのに……!
男の速度は俺の想定を上回っている!
以前見たときよりずっと速い!
こいつ、成長しているのか!?
くっ!
余裕がない!
反撃してしとめてやろうと思ったがその余裕はない!
ガードするのが精いっぱいだ!
男の抜き手が刀の上を滑っていく。
俺は刀を握る手に力をこめて捻る。
刃を立てて、腕を斬り落としてやる!
だが男の爪や皮膚は金属のように硬く、刃を通さない。
斬り裂けない!
「しゃあっ!」
男が逆の手で突きを放つ!
俺はのけぞり、背後へ身をかわす。
「うおおっ!」
からくも回避し、手をついてバック転して距離を取る。
男が殺気に赤く染まった眼で俺を睨みながら叫ぶ。
「逃げただとオォー!
俺は逃げてきたんじゃねえ!
用が済んだから帰るだけなんだぜェェ!」
用が済んだ……?
このダンジョンで何か目的を果たしたってことか!
男が突っ込んでくる!
今、なにかを考える余裕はない!
全力でこいつを迎え撃つ!




