確実な一歩で壊れゆく日常に備えよう!
スムージーに回復効果を付与して【食材収納】へ入れられるかを試した。
結果は成功。
食材だから入って当然!
と考えてもいい。
医食同源。
医と食はもともと似ているのだ。
【食品収納】のほうが【忍具収納】より高性能……というわけではない。
【忍具収納】さんが頑固すぎるせいじゃあないと断言する!
食品というカテゴリが忍具よりも概念が広いんだ。
性能差ではなく専門分野が違うだけ。
でもそれだけじゃあないと俺は思う。
これは、リンが俺を無条件に信じてくれた結果だ。
良くも悪くも、リンは俺を全面的に信じてくれるからな!
収納に薬を入れられないと刷り込んだのは俺だ。
そして、薬を入れられると信じさせたのも俺。
食べものと認識されるスムージーなら、
冷蔵庫にスーパーで買ってきた食材を入れるように気軽に、当たり前のように収納できる!
そもそもリンは前から特殊効果の付いた食材を収納していた。
【火耐性】の卵料理とかね。
特殊効果が付与されていようが、収納は可能なのだ。
そんなことを考えているところに、リンが声をかけてきた。
「そう言えばゼンジさん。
スキル付与はすごーく便利でしたね!」
「ああ、そうだな。
まだまだ調べることや組み合わせを研究したいと思っている」
「ということは、新しいスキルはまだ試さないんですねー?」
「そうだ。
一日二日で把握できるスキルじゃないからな。
じっくり取り組むさ」
「そうなんですねー。
急ぐことはないと思います!
私も一緒にお手伝いしますね!」
ほほ笑むリンに笑い返す。
「ああ、ありがとう。
検証は続けるが、特級忍術のスキルを一つ取得しておこうと思う」
「スキルポイントを使うんですねー。
選ぶのは中継ですか?
それとも分身数増加ですかー?」
「分身数増加を選ぶつもりだ。
自律分身を増やせば付与の検証が捗るからな。
経験値や熟練度を稼ぐにも効率がいい!」
「いいですねー!
私も賛成ですっ!」
「では、取得するぞ!」
俺はスキルウィンドウを開いて【分身の術:分身数増加】を選択。
迷いなく指を振り下ろして確定させる。
これで自律分身を使った検証が倍速で進むぞ!
そこへトウコが帰ってくる。
「ただまーっ!
んじゃさっそく行くっスか?」
「今日もワニ養殖の仕込みだ。
柵を増設して、ウサギを追い込むぞ!」
「最近こればっかりっスねー!
まあ、ずっと検証しているよりは楽しいっス!」
「俺は分身で検証しながら作業するけどな!」
「頑張りましょう!」
俺たちはいつも通り、ダンジョンでの作業に取り掛かる。
派手ではないが、少しずつ進歩していく毎日。
トウコは地味だと文句を言うこともあるが、こんな日々が俺は好きだ。
新しいスキルを試し、疑問を解消し、分かったことを活かす。
そんなことが性に合っている。
リンとトウコと二人でダンジョン食材を料理して食卓を囲む。
なんて事のない毎日。
幸せは、あとになって気づくと人は言う。
でも俺は目の前にある幸せを見落とさない。
リンが俺に向けてくれる真摯で切実な気持ち。
隠されても重すぎても、俺はそれを見過ごさない。
絶大な信頼と期待のまなざし。
できる限り拾い上げ、受け止めてやりたい。
トウコはいつでも危なっかしく、目を離すことができない。
ふざけた態度の蔭に隠した不安を俺は知っている。
誰もが見捨てても、俺はトウコを見捨てない。
どこまでも見守ってやりたいと思う。
些細な出来事を共に考え、くだらないことで笑い合う。
そんな日々がずっと続けばいいと、俺は思っている。
今日という日は今この時しか味わえない。
だから、やるべきことをやる。
できることを積み重ねる。
過ぎてしまえば、もう昨日だ。
二度と変えることはできない。
その日に帰ることは二度とない。
平和な明日が来る保証がないことを、俺はよく知っている。
日常は簡単に崩れ去る。
そのときになって悔いても、もう遅い。
あの時ああすればよかったと考えても間に合わない。
そうならないよう、俺は今を生きていく。
地味でも退屈でもいい。
必死になってがむしゃらにやるばかりが正解ではない。
細かいことを調べ、楽しみながら暮らす。
無理をせず、安全第一で進む。
俺は俺のやり方で、来るべき未来に備えている。
だから俺は後悔をするつもりはない。
いつでも全力で、確実な一歩を進むのだ!




