変異した吸血鬼の使い道とスムージー詐欺!?
【中級忍具作成】のスキルレベルが上がった。
せっかくなので、前回の事件で手に入れた魔石で付与しよう。
これは変異した大柄な吸血鬼の魔石だ。
カプセルを使って肉団子のように変異した個体だ。
トウコに【捕食】させるのは危険だと判断した。
付与に使う分には問題ないと思うが――
お、付与できそうだぞ!
とくにデメリットがありそうな選択肢は出ていない!
候補は――
「おお、これはいいぞ!
【自己治癒】か【ショックウェーブ】が付与できる!」
あの吸血鬼は異常にタフだった。
その魔石が回復能力を持っているのはうなずける。
【ショックウェーブ】は衝撃波による攻撃スキルだろう。
あの吸血鬼は空中を伝わる衝撃波を飛ばしてきた。
触れもせず、目に見えない範囲攻撃。
なかなか強力な効果だぞ!
ううむ。だがな……。
ここはやはり、回復効果がいいだろう!
回復効果は世界の防衛力に危険視されている。
他人を癒したり、劇的な効果を持つポーションはパージの危険を伴う。
しかし【自己治癒】は自分に働く力だ。
【応急処置】と同様、多少使ったくらいで罰則はない。
使ってもバレにくいんだろうな。
それじゃあ、【自己治癒】を付与する対象を何にするかだ。
回復効果だから、武器でなく身につける品がいいだろう。
腰袋でいいか。
これには既に【身体強化・筋力】が付与してある。
ここに【自己治癒】を付与して――
「忍具作成!
付与――自己治癒!」
問題なく成功!
前に付与した通常の特殊効果を上書きした。
一つの装備品に二つのスキル効果を付与しても問題ない。
【身体強化・筋力】はちゃんと機能している。
【自己治癒】の効果が発揮するかはケガをしてみないとわからない。
いざというときの保険と思えばいいだろう。
さて、クローゼットダンジョンでのクラフトはこんなものでいいだろう。
次は草原ダンジョンで作業しよう!
草原ダンジョン産の素材でクラフトを続けていると、リンがやってきた。
「やっと今日の講義が終わりましたー!」
「おう、おつかれ!
ちょうどバオバブのスムージーを作ってたんだ。
飲んでみてくれ!」
材料はバオバブの果実、葉、そしてハチミツ。
酸味と甘み、少しの青臭さがある。
これには滋養強壮効果を付与してある。
リンがスムージーを受け取り、口元に寄せる。
「わあ、ありがとうございまーす!
いい匂いですね!」
そう言うとリンは器を傾け、一口飲む。
「甘くて、すっぱくて、おいしいです!」
「青臭さは気にならないか?」
リンが微笑む。
「爽やかでいいと思いますよー。
もう少し甘くすると、もっといいと思います!」
「それじゃあ、ハチミツや砂糖を好みで足してくれ。
たくさん作ったから、鮮度が落ちる前に収納に入れておいてくれるか?」
俺はペットボトルに入れたスムージーを数本手渡す。
「はい!
入れておきますねー」
リンがスムージーを収納に入れていく。
「へえ、入るのか……!」
俺が驚きに声をにじませると、リンが驚いて俺を見る。
「えっ?
なにか、おかしかったですか?」
「そのスムージーにはバオバブの種で回復効果をつけてあるんだ。
回復スムージーと魔力回復スムージーだ」
リンが口元に手を当てて驚く。
「ええーっ!?
回復アイテムが、普通に入っちゃったんですか!?」
申し訳ない気持ちと、思い通りになった満足感がせめぎ合う。
すまない。
騙すつもりは、あったんだ。
「騙すような渡し方をして悪かった。
食材だと思ってもらえば収納に入るかもしれない、と思ったんだ」
あえて普通のスムージーを飲ませ、その後で回復効果の付いたものを手渡す。
こうすることでリンの認識を騙したのだ。
リンが慌てたように首を横に振る。
「そんな、謝らないでください!
おかげで、貴重な回復アイテムを私が運べるようになったんです!
これで、もっとお役に立てますね!」
リンは心底嬉しそうに、小さなガッツポーズを作る。
「喜んでもらえたならよかった。
俺の【忍具収納】に回復アイテムを入れるのは、限界があるからな!」
リンが頬に指を当て、首をかしげる。
「でも変ですよね?
前に試したとき、ゼンジさんの丸薬は入れられませんでした。
甘いお菓子みたいなものだと思うんですが、どうしてでしょう?」
丸薬は素材によって味つけを変えられる。
リンは甘いものを好むので、クッキーや砂糖菓子のような丸薬を渡している。
「認識のせいだろうな。
あくまでも丸薬として受け取っているからな。
いくら甘くても、薬だと思っているだろう?」
「はい!
その通りです!」
「あとは検証のせいだな。
【忍具収納】に薬が入らないことを調べて、そう認識しているからだ」
俺が収納を手に入れたとき、検証に付き合ってもらった。
そのときに薬を入れられないと刷り込んでしまった。
リンは思い込みが激しく、俺の言うことを信じすぎるきらいがある。
今回はそれを逆に利用させてもらった。
リンが不思議そうな顔で収納からスムージーを取り出す。
「そういうことなんですねー。
でも、うまくいってよかったです!」
「ああ、これでいざというときは回復を頼める。
あ、だけど一つ気をつけてくれ。
うっかりダンジョン外で出し入れしないようにな!」
「はい、気をつけますね!」
外では危険だが、ダンジョンでなら問題ない。
回復手段が増えて安心だ!




