ダブル忍術は暴れ馬で!?
自律分身と意識を合わせてのクラフトは何とか成功した。
その後しばらく試行錯誤を続けていく。
クラフトでは自分の魔力を消費しない。
コストは魔石で支払われるからだ。
だから、どれだけ作っても自律分身が消えることはない。
同じ品を二人で作ればいいものが作れる……と思ったが、結果は違った。
高品質のものが作れるわけではなかった。
むしろ品質は下がってしまう。
これは、俺と自律の間でイメージにわずかなズレが生じるからだ。
同じ記憶と自我を持っていても、身を分けて時間が経てば同じ思考にはならない。
立つ位置やいる角度が変わるので、同じイメージは持てないのだ。
連続してペンを走らせて丸を二度書いても同じものは書けないのと似ている。
完璧に意識を合わせる必要がある。
それに必要なのは【意識共有】だ。
もっとスキルレベルを上げればクリアできそうな気がする。
同じものを作ろうとするからうまくいかないんじゃないか?
という疑問から、分担してのクラフトを試みた。
これはある程度うまくいった。
イメージを分担して、別のパーツを作ってからくっつけるのだ。
俺は上から、自律は下から作っていく。
それを真ん中で繋げるようなイメージだ。
接合部がズレたりバリができたりするが……。
これは練習すればどうにかなりそうだ。
パーツを分けて繋ぐ方法なら、超大型の忍具が作れるかもしれない。
精密で複雑な品も作れるだろう。
一人だと複雑なものは頭で処理しきれなくなるんだよね。
そういうものを分担すれば……。
【忍具作成】で大きな品物を作るとコストが大きくなる傾向がある。
こういう場合に二人で分担する意味があるだろう。
省コストで作れそうな気がする。
とはいえ、今そういう品を作る予定はない。
船のような大物を作る場合に便利かもしれないな。
すぐに役立つ技術というよりはちょっとしたテクニックって感じだ。
まあ、面白い技術を見つけたと言えるだろう!
そんな方向で自律分身と話して、ひとまず作業を終えた。
そこで自律分身が思いついたように口を開く。
「なあ俺。
同じ工程じゃなくて、別の工程を分担すればいいんじゃないか?」と自律分身。
「ん、どういうことだ?」と俺。
自分の言っていることながら、ちょっとよくわからないな。
パーツを分けるって意味じゃなく……?
工程って……。
あ、そういうことか!
自律分身が言う。
「今試したのは、二人で形を作ることだったろ?
俺がクナイを作るから――」と自律分身。
俺は自律の言葉を引き取るように続ける。
「――俺が特殊効果の付与を担当するわけだな!」と俺。
形を作る工程と、付与の工程を分ける!
「そういうことだ!
【忍具作成】と【中級忍具作成】で工程を分けて同時にやるんだよ!」と自律分身。
頭の中にイメージを思い浮かべるのには限界がある。
想像力や演算能力の限界みたいなものがあるのだ。
マルチタスクの限界とでも言おうか。
グラフィックボードやメモリが不足するみたいに、一定以上難しいものは頭で処理できない。
忍具の形をイメージして、付与する効果をイメージして……というのは案外難しいのだ。
こういう頭を使う作業には知力や魔力のステータスが関わってくる。
しかし俺の知力と魔力は並みである。
一般人と同じようにしか考えられない。
前にリンに聞いたところによると、知力のステータスのおかげでダンジョン内では頭が冴えるらしい。
素早くものを考えたり、いいアイデアが浮かんだりするという。
魔法の発動やイメージ力もかさ上げされているのかもしれないな。
ステータスの不足は工夫で補うしかない。
【忍具作成】と【中級忍具作成】を分担してクラフトしたところ、これは成功した!
意識のズレによる劣化はなく、負担も軽い!
「この技術はクラフトだけに留まらないはずだ。
二人で協力して【水噴射】を放てば、威力が上がる可能性があるな……!」と俺。
「んじゃ、やってみようぜ!
といっても、俺はムリだから次になるけどな」と自律分身。
クールダウン時間を待ち、自律分身を再発動させた。
さっきと同じ手順を踏んで、同じ術を同じイメージで放つ。
そしてそれは成功した。
「おおっと!」と俺。
「すごい勢いだ!」と自律分身。
俺たちは水の勢いに思わず倒れかけた。
もともと反動が強くて制御が難しい術だが、さらに荒ぶっている。
「どうやら威力が上がるようだな」と俺。
「反動まで強まるのが玉に瑕ってとこだな」と自律分身。
何度か試したが、反動の制御にはまだまだ練習が必要だろう。
「おっと、エネルギー切れだ!
そろそろ消えるぞ」と自律分身。
【水噴射】は消費コストが高い。
連続して使えば自律分身でも短時間で消滅してしまう。
瞬間水力は強いが、コスパはかなり悪い。
でも、いざというときには頼りになりそうだ!
これは手札として使うためには、練習しておかないとな!




