共同、協同、協働! 二人羽織クラフト、成るか!?
翌日。
俺はクローゼットダンジョンの拠点で一人、検証をしていた。
一人と言っても、自律と一緒にやるんだけどね!
「自律分身の術!
スキル付与――【忍具作成】!」
「よう、俺!
んじゃ、さっそく始めるか……忍具作成!」と自律分身。
事前に考えていた通り、自律分身がクラフトを始める。
素材や魔石はもう忍具作成台に用意してある。
作業内容は傷んだ装備の修理だ。
壊れてもいいようにユニークな品は扱わない。
結果は――成功だ!
「おお、うまく作動したな!
しっかり修理されて、新品同様になったぞ!」と俺。
「忍具作成君は俺のことも本体同様に認めてくれたようだな!」と自律分身。
「スキルレベルが落ちるからあまりうまみはないが、手分けして作業はできるな!」と俺。
「ああ、じゃあそっちは薬術で薬の補充を頼む!」と自律分身。
「うむ。
たしか魔力回復丸が不足していたんだったな。
クローゼットダンジョンなら薬草のストックもあるし、すぐ大量生産できる。
どんどん作っていこう!」と俺。
「おう!」と自律分身。
自律分身でもクラフトスキルは作用する。
イメージが重要な忍具作成でも問題なく、これと言った劣化はない。
やはり自律分身は普通の分身とは一味違う。
手分けをしてサクサクとクラフトを進めていく。
「そう言えば、俺。
ちょっと思いついたんだが、いいか?」と自律分身。
「ん、どうした?」と俺。
「二人同時にクラフトできないか試してみようぜ。
同じものを思い浮かべて、同じ素材に対して【忍具作成】をかけるんだ!」と自律分身。
自律分身の言いたいことはすぐに理解できた。
まるで自分が思いついたことのように、スムーズに頭に入ってくる。
同じようなアイデアは既に頭の中にでき上っていたのだ。
「分業じゃなくて協働か!
ふむ、面白そうだな!」と俺。
協業とか協力プレイと言ってもいい。
力を合わせて一つの品物を作るということだ。
といっても、成功するかはかなり怪しい。
だが試す価値はある!
別に失敗しても損はない。
できないことを知ることに意味がある。
成功の前にはいくつもの失敗がつきものだ。
一歩ずつ着実に外堀を埋めていくことが大切なのだ。
イメージが関わる作業を二人で同時に行うには、まず意識を合わせる必要がある。
二人で違うものを思い浮かべていては成功は見込めない。
自律分身が言う。
「じゃあシンプルに、いつものクナイを作るぞ。
俺は【中級忍具作成】がないから、付与はなしだ。
普通のクナイを作る」と自律分身。
テーブルに鉄鉱石と魔石を乗せる。
クナイ一つ作るのに十分な量だ。
同時に二つ作るのではなく、二人で一つ作るのだ。
俺はさらに確認する。
言わないでもわかっているが、念のためだ。
「トビクナイじゃなく、近接戦闘用のクナイだな。
じゃあイメージを固めてくれ。
スキルを発動させるのは五秒後だ。
五、四、三……」と俺。
「二、一……」と自律分身。
「ゼロ!
忍具作成――クナイ!」
俺と自律分身が声を揃えてスキルを発動させる。
タイミングは声がハモるくらいに完璧だ。
スキルは発動した。
妙な手応えがあったが……どうだ?
素材が輝き、光を放つ!
「これは……!
一応発動したが……微妙だな」と俺。
「二つのクナイを雑に重ねたみたいないびつな感じだ。
発動できたことがむしろ驚きだな!」と自律分身。
二つのクナイを重ねて、少しずらしたみたいな品ができ上っている。
当然、装備としては使い物にならない。
「俺とお前のイメージはほぼ同じだったが、座標がズレていた感じか。
うーん、これはかなり難しそうだな!」と俺。
「複雑な品を作るときに、イメージを分担できそうな気はするが……。
そんな品は作ったことがないし、今のところ必要がないよな」と自律分身。
「とはいえ、微妙ながら物は作れた。
あとはイメージを完璧に重ね合わせられれば……」と俺。
なにかに使えそうな気はする。
こういう知識の積み重ねがイノベーションを生む……のかもしれない。
革新なんて、そうそうできるもんじゃない。
「イメージのズレは【意識共有】を鍛えれば何とかなりそうだな」と自律分身。
「たしかにそうだ。
今度は【意識共有】にもっと集中してみよう。
読めるのはそっち側の強い意識だけだから、イメージを強めにして、俺に送信するイメージで頼む」と俺。
分身が難しい顔で言う。
「むむ。
作る品を強くイメージするといっても難しいな。
危機感とか、怒りとか、そういうのとは思考の方向が違うっていうか……。
まあ、やってみるか!
忍具作成――クナイっ!」
自律分身が念じるように叫ぶ。
声をデカくしただけじゃあないのか?
と疑問が頭をよぎったが、わずかにイメージが伝わってきた!
「お、少し伝わってきたぞ!
作るイメージは一致している。
作る座標もわかった!
じゃあカウントダウンを頼む!」と俺。
「三、二、一……忍具作成!」
「作成!」
今度は成功した!
完璧なクナイが忍具作成台の上に生成されたぞ!
一人で作った場合とほぼ同等だ!
使い道は微妙かもしれないが、なにか進展したような気がする!
本来は受動的なスキルである【意識共有】を能動的に使えた感じがあった。
普段使わない筋肉を使ったような手応え!
ストレッチをして可動域が広がったような気持ちよさがあった!
へえ、ここがこんなふうに動くんだ!
みたいな感覚だ!
スキルレベルが上がりこそしなかったが、熟練度はかなり蓄積したんじゃなかろうか。
脳トレならぬ、スキルトレーニングって感じだな!
【意識共有】を育てれば、二人羽織クラフトも可能かもしれない!




