日課は権利! 少年老い易く、忍道成り難し!
「二十一階層の地図埋めはほぼ終わったな!」
「宝箱が一つあっただけっスねー。
渋い階層っス!」
今は二十二階層へ続く滝裏の階段を目指している。
自律分身の効果時間が切れたのでトウコと二人きりだ。
一度、スキルのクールダウン時間を置くために休憩しようと考えている。
帰りは自律分身を出してからにするつもりだ。
「あとは隠し部屋や隠し宝箱だけど……。
今のところは見つからないな」
「壁にローリングしながら進むっス!」
「やめろ、ケガするわ!」
俺とトウコは熱水が流れる川沿いに歩いている。
その川底や岩壁の隙間をじっくり調べながら進んでいるのだ。
ときおり岩壁に火トカゲが見つかる。
たいていはトウコの【チャージショット】でぶち抜く。
当たり所が悪くて生き延びた場合は俺が水矢を放ってトドメ。
進行速度は遅くなるが【濃霧】による索敵網のおかげで安全だ。
「なんもなかったっスねー」
「隠し宝箱はレアだからな。
そうそうあるもんじゃない」
足場のない水路の先とか、水中とか、普通なら行かない場所に隠されている。
隠された宝箱には多少質のいいものが入っている。
劇的に強力なアイテムがあるわけじゃあない。
そこは俺のダンジョンらしい渋さといえよう。
だが毎日必ず手に入る、というのが利点だ。
俺のダンジョンでは、宝箱は毎日復活する。
だから一度見つけてしまえば何度でも取れる。
これは嬉しい仕様である。
回収のために回るのは面倒だが、その努力は必ず報われる。
手間を惜しまずコツコツやっているのだ。
日課が増えていくわけだが……。
うーん。
体がもう一つあったらいいのにな。
いや、既に自律分身がいるけどさ。
【自律分身の術】を成長させる手もあるが……。
たぶん、スキルレベルを上げても効果時間が伸びる方向性なんだよなぁ。
二体目を出せれば便利なんだが。
贅沢すぎるかね?
トウコが感心したように言う。
「しっかし店長はマメっスねえ。
あたしは日課の周回なんてやってられないっス!」
トウコの冷蔵庫ダンジョンは最低限の間引きしかしていない。
毎日挑むのは心理的負担が重いんだよ、あそこは。
「まあ、俺だって毎日はやってない。
日課ってのは、やらなきゃいけない義務じゃなくて、挑戦できる権利なんだ。
やりたいときだけやればいい!」
「おっ、名言っスね店長!」
トウコやリンがいないとき、気が向けばやるくらいだ。
検証やクラフトをする日は宝箱周回に手が回らないこともある。
本格的な攻略をする日はそっちに集中しているし。
今日みたいな、装備の実地試験や地図埋めをする日もある。
「俺にヒマな日なんて一日もない。
時間は有限で、やりたいことはたくさんある。
無駄に過ごす時間なんてないんだ。
少年老い易く学成り難し、ってやつさ」
俺もすでに少年とは言えない年だ。
学業や仕事はさておくとして、忍者道にしろ道半ばである。
ダンジョン攻略にしろクラフトにしろ、学ぶべきことはたくさんある。
トウコがうんうんとうなずく。
「インコ―矢のごとしっスね!」
「そうそう。
淫行していると月日が経つのが早く感じる……。
……って、違うだろ!
光陰だよ、光陰!」
俺はうなずきかけてからツッコむ。
光陰とは光と影、太陽と月であり昼と夜のことだ。
年月は矢のように過ぎる。
一寸の光陰軽んずべからず、というわけ。
「お、滝が見えてきたな」
「そーいえば、ここの滝には隠し宝箱がありそうっスねー」
滝の裏に階段が隠されている……と言えるが、ふむ。
「そう言われてみれば階段を見つけて満足していたな。
もうちょいじっくり調べてみるか」
「リョーカイっス!
お宝探検隊、出動っス!」
トウコがビシッと敬礼のポーズを取った。




