熱水晶の作動原理を探れ!
「熱手榴弾は、名前の通り熱を生む効果が主みたいだな」と俺。
「だから爆発力は弱いのか……!」と自律分身。
俺と自律分身の感想はほぼ同じだ。
トウコが不思議そうに言う。
「ゴブリンの手榴弾は小石も飛んでくるっスよね?
あれは何が違うんスか?」
「たしかにそうだな」と俺。
飛んできた手榴弾をまじまじ見る余裕などない。
避けたあとに小石が降りかかってきたと思うが……。
ゴブリンが使う手榴弾とショップで引き換えた『熱水晶の熱手榴弾』は別物なのか?
そうは考えにくいが……。
「それなら、小石も一緒に投げてるんじゃないか?」と自律分身。
「手榴弾に石をくっつけてるんスかね……こんな感じで!」
トウコが包帯を取り出し、手榴弾にくるくると巻きつけていく。
拳銃弾を数発、包帯で挟んでいるようだ。
「ほう、即席の破砕手榴弾か!
ふむ、うまくいくといいが……」と俺。
「ダンジョンはなぜか爆発物が使いにくいからな……」と自律分身。
妙な制限があるのだ。
ダンジョンでは機械や電池が動作しない。
これと同様に、銃や爆弾も使えない。
トウコの銃はスキルだから例外だ。
ここに実銃を持ち込んでも使えない。
花火やカンシャク玉くらいまでは火薬が働くんだけど……。
トウコが白けた顔でため息をつく。
「はー、ケチケチしたルールっスねえ」
「まあ、ファンタジーだからな」
火薬の発明は比較的早い。
強力な兵器に変わったのは近代のこと。
そのせいなのかな。
弱い火薬は作れても、強力な爆発物は無理なのだ。
「現代の高度な道具は使えない……というルールか」
「熱手榴弾が爆発するのは、熱水晶がファンタジー由来だからだな」
熱を生み出す水晶による爆発。
こうしたファンタジーな効果は許されている。
その爆発を利用したトウコの即席破砕手榴弾なら……。
と、期待を込めて試してみた。
結果は……。
うーん、微妙。
完全に失敗とまではいかないが……。
期待外れの威力だな。
「ふーむ。
燃焼範囲が狭まったようだな」
「一応タマは飛び散ったんスけどねー。
んー、威力がイマイチっス!」
弾丸を使ったが、これは誘爆しない。
トウコの弾丸は火にくべても爆発しないからだ。
これは前に試したことがある。
あくまでもスキルの銃に込めて撃ち出す代物なのだ。
破片はちゃんと当たったが、さほどの威力ではなかった。
俺は首をひねる。
「熱の広がりが弱かったのが気になる。
もしかしたら、熱が弾丸に吸収されたんじゃないか?」と俺。
「俺もそう考えていた。
つまり、この手榴弾の特性はあくまでも熱なんだ」と自律分身。
「うぇっ?
どういうことっスか?」
俺は思いついたことをトウコに説明していく。
「つまりだな――」
起爆すると熱が周囲に広がり、近くの物を発火させる。
熱が広がるときに空気も熱される。
そのときに空気が膨張して爆発のような余波ができる。
こんなところか。
「さっきの即席手榴弾だと、巻きつけた弾丸に熱が集まってしまうんだろうな」と俺。
自律分身が思案顔で言う。
「近くの物に熱が集中するってことか……ふむ。
そういうことなら……ちょっとこの槍の熱水晶で試してみたい。
あのあたりに、水を出して固めてくれるか?」と自律分身。
俺は問い返す。
「どんな形で、どれくらいの量がいるんだ?」
自律分身の思い付きは俺と近いものだが、まったく同じではない。
細かい部分は聞かないとわからない。
自律分身が身振りを交えて説明する。
「ゴブリンくらいのサイズ感の人型だ。
形は適当でいい」と自律分身。
「ちょいまち……」と俺。
水袋の水量では足りないので【水生成】を使う。
少し離れた位置に、ゴブリン水像を作っていく。
細部にこだわるとコストがかかるのでザツなつくりだ。
「これでいいか」と俺。
「いいぞ。そしてこの槍をすぐ近くに撃ち込む!」と自律分身。
自律分身が槍を投擲する。
槍が水像の足元に突き立ち、小さな破裂音を立てる。
爆風は小さい。
水像が揺らめくが、強めに固定していたおかげで崩れない。
「うぇっ?
ぜんぜん効いてない感じっスよ?」
トウコが首をかしげて水像を指差す。
「俺の仮説通りなら、その水像はアツアツに熱せられているはずだ」
トウコが水像を指でつつく。
「あっつ!
熱湯ってほどじゃないけど、火傷しそうなくらいっス!」
「気をつけろよ、トウコ!」
トウコはさっと指を引っ込めて、指にふうふうと息を吹きかけている。
俺は薬草丸を取り出して手渡す。
「でも正解だったな!
近くの物体を熱するのが、熱水晶の効果だ!」と俺。
「やはりな!」と自律分身。
俺の言葉に自律分身は満足げにうなずいた。
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