熱グレネードは一石四倒で!
二十一階層は相変わらずの暑さだ。
「あづー!
でも、新装備のおかげで背中は涼しいっス!」
「ザック越しでも、まあまあ冷たいな」と自律分身。
「そりゃよかった」
思えば俺だけ、氷水を背負っていない。
水忍法は水の状態で持っていないと使えないからな。
暑い……。
マフラーを湿らせて……濃霧!
ふう、涼しい。
実用的なマフラーになったな!
「さて、今日は地図埋めをしよう。
いつもとは違うルートを進むぞ」と俺。
「おう、地図は俺に任せてくれ」と自律分身。
雑用はお任せだ!
「んじゃ、あたしはいつも通り撃ちまくるっス!」
トウコは火力担当!
でも今日は先に進むことが目的ではない。
持ってきた品をトウコに手渡す。
「それもいいが、今回はこれを使ってくれ。
赤ゴブリンの熱手榴弾と、槍だ」
「おおーっ!
グレネードっスね!」
「どんなものか試して感想を聞かせてくれ。
わかってるだろうが……ちゃんと遠くに投げるんだぞ?」
トウコがやれやれと首を振る。
「わーってるっスよ!
新兵じゃあるまいし、大丈夫っス!」
トウコは古参の兵士なのか。
違うだろ。
銃は使えても、投擲は別の技術だ。
【投擲】スキルも持っていないしな。
まあ、ツッコまないでおく。
戦闘には慣れているし、問題ないだろう」
「グレなら、ゲームでいつも投げてるっス!」
「ゲームじゃねえか!
まず、石か何かで練習しないか?」
ゲームで慣れているだけとか……。
爆発物をゲームの経験で語るな!
危ないだろ!
トウコが気楽な様子で言う。
「大丈夫っスよー。
火炎瓶とか投げてるじゃないっスか!」
ふむ。
危険物を投げた経験は十分と言えるか。
心配しすぎたかな。
「……まあ、そうだな。
じゃ、使うタイミングはトウコに任せるぞ」
手渡したのは熱手榴弾二発、槍一本だ。
「あ、槍は邪魔なんでいらないっス!」
トウコが槍をつき返してくる。
「わがままかよ!」と俺。
「なら、俺が使わせてもらうよ」と自律分身。
たしかに自律分身なら槍を使いこなせる。
投擲に不安はない。
スキルを使えない自律分身だが、強力な装備があれば火力不足が補える。
戦術の幅が広がるな。
「今日は俺が先頭に立って索敵するぞ。
少し離れてついてきてくれ。
敵を見つけたら霧を動かして合図する。
まずは手榴弾を試してくれ」
トウコがぐっと親指を立てる。
「リョーカイっス!」
「おう!」と自律分身。
さて、作戦はオーケー。
まず、霧を前方に出す。
これは【水探知】による索敵網だ。
【岩石探知】のナイフを身につけているので、火トカゲも発見できる。
さらに自分の数歩前を分身に歩かせる。
これで敵からは身を隠しつつ安全に進める。
「……トカゲがいたぞ!」
声を出してもトカゲは身を潜めたまま動かない。
隠密タイプはこういうところが弱点だな。
俺は静かに後ろに下がる。
霧を操り、円の形を形成。
トカゲの位置を指し示すマーカーとする。
俺は爆発に巻き込まれないように十分な距離を取ったところで、手で合図を送る。
するとすぐに、闇を切り裂いて銃弾が飛ぶ。
「チャージショットっ!」
強力な一撃がトカゲを撃ち抜き、塵に変える。
俺は思わずツッコもうと振り返る。
しかしすでに自律分身がツッコんでいた。
「おいっ!
手榴弾を検証するんだろ!」と自律分身。
「あっ、そーだったっス!」
ぺろりと舌を出すトウコ。
さすがトウコ。
作戦を聞いてない!
まあ、別にいいだろう。
検証は次の敵でかまわない。
次に現れたのは赤ゴブリンの団体だ。
先ほどと同様、霧で合図。
すかさず、トウコが手榴弾を投げ込む。
「グレネードっス!」
「お、うまいな!」と自律分身。
ちょうど四匹のゴブリンの中間あたりだ。
赤ゴブリンの一匹が、足元に転がり込んだ手榴弾に気づいて首をかしげる。
「ウギ?」
赤熱した手榴弾が爆発する。
破裂音を立て、赤い閃光が広がる。
閃光に包まれたゴブリンたちが瞬く間に燃え上がる。
「アギャー!?」
「おお、全員巻き込んだな!」
「ストライクっス!」
一発で四匹全員を燃焼に巻き込んだ。
少し離れた俺の位置に熱は届いていない。
爆風もほとんどない。
熱手榴弾の攻撃範囲は狭いようだ。
「アギャギャー!」
「ウギィー!」
ゴブリン達は床を転げまわり、火を消そうとしている。
だんだん鎮火してきた。
「火はついたが、倒しきれない感じだな」
「んじゃトドメっス!」
トウコが拳銃を連射して、倒れたゴブリン達を介錯していく。
「よし、戦闘終了だ。
トウコ、使い勝手はどうだった?」
「悪くないけど、威力がイマイチっスね!
どうせならミンチにしたかったっス!」
物騒な!
だけど、せっかくグレネードを投げるなら一発で仕留めたいよな!




