トカゲ手袋はファンデルワールス力で!
引き換えた火トカゲの足をしげしげと眺める。
これは左前足だな。
細かなウロコの生えた表側はいいとして、変わっているのは手のひら部分だ。
「滑り止め付きの軍手みたいな……。
これが火トカゲが壁に張りつく秘訣ってわけだな」
火トカゲではないが、ヤモリがなぜ窓などに張りつけるのかを調べたことがある。
ヤモリの足指には細かな剛毛がびっしり生えていて、
さらに毛の先端は枝分かれして、非常に細かくなっているという。
この細かい毛が、垂直な壁面の凹凸に入り込むことで、
力が生じて張りつくことができるのだそうだ。
この毛のような器官は趾下薄板。
張りつく力のことを分子間力という。
原理としては電子や原子や磁場が関係しているらしいが……。
まあ、細かいことはさておこう!
つまり、粘着液や爪先を使わずに壁にくっつけるわけだ。
指で趾下薄板を撫でてみる。
ふむ、滑りにくさを感じるな。
「ほんとに軍手みたいだよな。
これで手袋を作ったら、グリップ力が高まりそうだ。
……トカゲみたいに、壁にも張りつけるかもしれないな」
しかし、俺には【壁走りの術】や【登攀】がある。
なんなら【吸着の術】すらある。
壁登りのプロとは俺のことだ!
ということで、俺には不要。
でもリンとトウコの役に立つはず。
断崖エリアを登るときに便利そうだからな。
忍具作成によれば、特殊な付与効果はつけられない。
つまり、このアイテムにスキル的な接着能力はないわけだ。
こだわらず、さくっと手袋を作ってみよう。
ほぼ素材をそのまま使ったトカゲ手袋だ。
壁に登ることを考えて、脱げないようベルトでしっかり固定できるようにしておく。
壁登り道具は忍具だよね!
トカゲも忍者っぽいしな!
「いざ――忍具作成!」
これもすんなり完成!
今日はクラフトが捗るぜ!
試着して壁に手を当てて……。
「おっ?」
なかなかのフィット感。
壁のでっぱりを軽い力でつかめる。
これがファンデルワールス力!
ファンデルワールスパワーだ!
強そう!
ロッククライミングが捗りそうだ。
モノリスでさらに『火トカゲの足』をいくつか引き換える。
出てくる足は一本で、部位はランダム。
火トカゲのガチャだ。
三個目で右腕が出た。
他には、左腕がかぶって、右足が出た。
こうなると左足も欲しくなるが……まあ、今はいいだろう。
右手袋を作って嵌めてみる。
武器を抜いて素振りしてみる。
ふむ、違和感はない。
軽い力でグリップできるので、武器がすっぽ抜ける心配がなくなる。
これは結構便利だ。
「投擲は……むむ」
棒手裏剣を投げようとすると、指に引っかかってうまくいかない。
微妙な力加減が狂い、手裏剣は狙いを逸れてしまった。
クナイやナタでも同じ結果だ。
手を離すタイミングや角度を調整すれば何とかなりそうだが……。
まあ、練習しても仕方がない。
これは壁を登るための専用アイテムだと割り切ろう。
「せっかくだから、壁を登る練習をしておくか」
拠点の壁の突起に手を添え、腕に力を込めて登る。
スキルを使わなくとも、簡単に登れるぞ!
わずかな壁の突起に手をかけて、すいすいと壁を登る。
なんなら天井も行けそうだ。
さすがに足パーツがないとかなりムズい!
腹筋や背筋に効くぜ!
「ただまーっス!
ん、なにしてんスか、店長?」
おっと、天井に張りついてプルプルしているところを見られてしまった。
何事もなかったように、俺は華麗に天井を離れた。
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