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【新章開始】社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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霧ときどき刃! ところにより糸が降るでしょう!

 忍び寄る大アミグモの気配を感じて小声でつぶやく。


「……いたぞ」


 俺は静かに柱の一本を指さす。

 リンと自律分身がうなずく。


 もっとも、位置的に目では見えない。

 死角になる柱の裏側に潜んでいるからだ。


 霧を通じてクモの輪郭(シルエット)が浮かび上がる。

 八つの目と四対八本の毛の生えた足。

 輪郭だけではわからないが、目は禍々しい赤色だったはずだ。


 正直、感じられるのが輪郭だけでよかった。

 あまりまじまじと見たい相手ではない。


 俺は【水生成】で水を出し、それを操って水蛇を作る。

 充分なサイズになったところで、地面を走らせる。


 クモはじっとしたまま動かない。

 俺に捕捉されていることなど知りようもないからな。


 バレていると気付かずに隠れている隠密使いは無防備だ。

 哀れですらある。

 だから俺は【隠密】に頼らないようにしているのだ。


 俺は柱の陰に水を回り込ませ、クモのすぐそばへ送る。

 クモがそれに気づき、逃れようと動く。

 だが遅い。


「【水刃】!」


 水蛇が伸び上がり、鋭い刃を形成する。

 鋭利な先端がクモの体に突き刺さり、深くえぐる。


 完全な不意打ちに【暗殺】【致命の一撃】が発動する。

 決まったな!


 クモの腹からぼたぼたと体液が流れ落ちる。

 声もなくクモが身をよじる。

 クモには悲鳴をあげる発声器官がない。


 その痛みを現すように、剛毛の生えた足がわさわさと動く。

 うーん、キモい。


 おっと、クモが動く。

 思いのほか素早く、柱の陰から飛び出してくる。


 そして糸を吐きかけてくる。

 分身……いや、水で盾を――


「ッ――!」


 その迷いが一瞬の遅延を生む。

 放たれた水が盾を形成するより早く、糸が俺に降りかかった。


 リンが悲鳴を上げる。


「ゼンジさんっ!」

「――あっぶねえっ!」


 だが俺は糸に巻かれてはいない。

 硬質な盾は作れなかったが、体との間に水膜を作ることには成功した。

 薄い水の(ころも)だ。


 水の膜が糸を防いでいる。

 しかし、クモは糸を吐き出し続ける。

 水の膜が吹きかけられる糸で白く濁っていく。


 このままではまとった水膜ごとからめとられてしまう。


 自律分身が動く。


「ていっ!」


 と放たれた(ワイヤー)分銅がクモの尻を打つ。

 糸が止まる。


 俺はそのスキを突いて、水膜を脱ぎ去るようにして背後へ跳ぶ。


 水の薄衣を脱いで、粘着糸から脱出する。

 さながらセミの抜け殻のように!


「これぞ、空蝉(うつせみ)の術……ってやつだな!」


 古事記にも……いや、源氏物語にも書かれている!

 分身の術と入れ替えの術でも似たことができるが……。

 水忍法バージョンもいいよな!


 リンが怒りをにじませる声で詠唱する。


「このっ……ファイアラーンス!」


 特大の炎の槍が飛ぶ。

 それはクモに突き刺さり、一気に炎上させる。


 炎はそのままクモを包み、ごうごうと燃える。

 クモにはもうヒットポイントがないのだろう。

 初手の一撃で、かなりのダメージを稼いだはずだ。


 ヒットポイントの防護膜は作用せず、火は消えない。

 クモはそのまま黒ずんだ塊となり、塵になって崩れ去った。

 倒した!


 リンが激しい呼吸であえぐ。


「はあっはあっ……!」


 って、おいおい。

 火力を高めすぎて腕が燃え上がっているじゃないか!


「リン!」


 レバーを引いて水を放ち、リンに水をかける。

 ふう……なんとか鎮火したな。


「よし、倒したな。

 腕は大丈夫か、リン!?」

「大丈夫です。

 ゼンジさんは大丈夫でしたか!?」


 リンが心配顔でばっと俺の顔を見る。

 俺は余裕の笑顔で装う。


「もちろん、ケガひとつないぞ!」と俺。

「クモの怖さは糸や毒だから、けっこうギリギリだったけど……」と自律分身。


 自律分身のつぶやきは小さく、俺の耳にしか届いていない。

 俺も同じことを考えていたから聞き取れたようなものだ。


 まったくその通り。

 あの局面では、分身で防げばよかった。

 それでも防げた攻撃だ。


 糸を食らってしまえば、動きを封じられてしまう。

 そして、そのまま毒を浴びせられたことだろう。


 動きが鈍ったところをじわじわ捕食される……。

 ぞっとしない末路だ。


 【水忍法】縛りで戦うのはちょっと危険だった。

 こだわってはいけない。


 隠密に頼っても、分身に頼っても、忍法に頼ってもいけない。

 広い視野を持って立ち回らないとね!



<熟練度が一定値に達しました。スキルレベルが上がりました!>

<【暗殺】 3→4>


「おっ、暗殺のスキルレベルが上がったぞ!」

「おめでとうございまーす」


「致命の一撃は上がらなかったか。

 もう少しか?」と自律分身。

「どうだろうな。

 発動条件に違いがあるのかもしれん」と俺。


 条件によってスキルが発動すると、なんとなくの手ごたえがある。

 暗殺が発動した! などと思うわけだ。

 でもハッキリわかるわけじゃない。


 【致命の一撃】と【暗殺】の区別はついていないのだ。

 効果は似ているが、別のスキルなんだから、なにかが違う。


 説明があいまいだから、いまだに違いがわかっていない。

 成長速度の違いから、【暗殺】のほうが発動しやすいようだけど。


 これを検証するのは難しそうだ。

 まあ、放置でいいか。


 近いうちに【致命の一撃】も成長するはずだ。

 期待して待ってるぜ!

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― 新着の感想 ―
【暗殺アサシン】は、ターゲットの知覚外からの攻撃が成功して、最終的に倒せれば経験値がゲットできて、【致命の一撃クリティカルヒット】の場合は一撃で致命傷を与えることができれば、経験値がゲットできるのかな…
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