新装備の実地試験! 遠隔クビキリの術!
転移モノリスを経由して六階層へやってきた。
迷宮階層だ。
「この階層はひさしぶりですねー」
「リンはそうなるか。
俺は間引きで来ているから、毎度のことだ」
クラフトしている合間に、自律分身を送り込んでいる。
この階層なら自律分身一人でも踏破できる。
ダブルワークである!
ちょっと働きすぎかな?
でも、スキルのクールダウン時間を遊ばせておくのはもったいない。
やらない手はない。
使えるものは使わないとね。
リンがうなずく。
「そうなんですねー。
ボスクモさんも分身さん一人で倒せちゃうんですか?」
俺は首を横に振る。
「いや。
自律分身一人だと、たまに事故って負ける。
フィードバックが辛いから最近は挑まないな」
俺も加わって二人でなら、ほぼ間違いないだろうが、万が一が怖い。
俺のダンジョンでは、負けは死を意味する。
安全第一で考えると、なかなか踏み込めない。
それでいいと思っている。
見えている危険に、わざわざ踏み込むべきではないのだ。
挑むときは最善の状態で挑むべきだ。
「そうなんですねー。
じゃあ、今日は倒しちゃいましょう!」
リンが頼もしい感じ力こぶを作るポーズをとって笑う。
頼もしさより可愛さが勝る。
俺も笑い返す。
「そうだな。
リンがいれば万全だ!」
火魔法ならクモボスの糸を焼き切れる。
俺の場合、うっかり粘着糸を食らうと身動きが取れなくて死ぬ恐れがある。
回避型の俺とは相性悪めなんだよね。
ま、それも今日までのこと!
水忍法で解決できるだろう。
ボス戦が楽しみだ。
まずは雑魚戦で新装備と水忍法をチェックしていこう。
リンが通路の先を指差す。
「ゴブリンさんが来ます!」
「んじゃさっそく、新装備の出番だな!」
通路の角から姿を現したのはゴブリンの一団だ。
斥候ゴブリンがこちらに気づいて騒いでいる。
「ウギッ!?」
「くらえっ!」
俺は右手のレバーを握り込む。
弁が開放され、【操水】と【水圧】によって水が勢いよく流れていく。
ホースの先端のノズルから細く絞られた水流が迸り出る!
何かを叫んでいる斥候ゴブリンの口元へ鋭い水流が突き刺さる。
ガボガボと口中に水を溢れさせ、斥候がのけぞる。
ただの高圧水流に殺傷力はない。
窓や外壁の掃除が捗りそうな感じだ。
だが、水が届けばそれで十分!
このまま溺れさせても倒せるが、時間が惜しい。
「遠隔クビキリの術!」
「ゴボッ……」
【操水】で首を締めあげつつ、小さな刃を形成して喉を切り裂く。
斥候ゴブリンが吐いた血で水が赤く染まる。
おっと、血が混じったせいで術を操る手ごたえが悪くなってしまった。
【操水】で血は操れない。
混じるだけでもノイズになる。
俺は【操水】を解除してただの水に戻す。
「フガアッ!」
飛び出してきたのは盾持ちゴブリンだ。
盾を前に掲げ、タックルをかけようと突っ込んでくる!
そこへ、リンが火球を放つ。
「えいっ!
ファイアボールっ!」
「ウガァ!?」
盾持ちゴブリンが粗末な木の盾でそれを受ける。
だが盾が燃え上がる。
そのまま体へと引火して火だるまと化す。
もだえ苦しむ盾持ちゴブリン。
その陰から飛び出してきたのは呪術師ゴブリンだ。
既に魔法は準備され、杖の先に炎が渦巻いている!
呪術師ゴブリンが詠唱する。
いつもなら割り込んで攻撃するか、回避行動を取るところだ。
しかしあえて見逃し、魔法が放たれるのを待ち受ける。
「……ゴブブァァーゥ!」
「水盾!」
俺はノズルを拡散モードにしてレバーを絞る。
ノズルから幅広く散水する。
そしてその水を硬めて、薄い水の盾を形成。
盾は火魔法を受け止め、霧散させる。
よし、うまくいった!
「ゴブッ!?」
それを見たゴブリンが目を広げて驚き、地団太を踏む。
コミカルな奴。
水盾の硬質化を解き、水蛇のように変化させる。
にょろにょろと這い進んだ水が呪術師ゴブリンに届いたところで――
「【水刃】!」
足元から突き上げた水槍がゴブリンを貫く。
最後の一匹、剣士ゴブリンが走り込んでくる。
「ファイアボールっ!」
しかし、近づく前に火球の餌食となって倒れた。
「こいつで最後か」
「はい、通路の奥も安全です!」
よし、戦闘終了だ。
新装備と水忍法だけでも十分に戦えると確認できた!




