秘技! 水圧マッサージ!
トウコは何かたくらむような顔だ。
「店長、水圧ってマッサージに使えそうじゃないスか?」
「マッサージ?」
トウコが悪戯っぽく笑いながら、自分の肩を指差す。
「水圧でもみもみするんスよ!」
なるほど、面白い発想だ。
圧力をリズミカルに変化させれば、ジェットバスのような効果が得られるか。
「試してみようか。
肩まで湯に浸かってくれ」
俺はトウコの周囲に【水圧】を作用させる。
ただ圧をかけるだけじゃない。
指圧のように凝り固まった筋肉を的確に捉え、水の圧力という見えない指で揉みほぐすイメージだ。
強すぎず、弱すぎず。
心地よい刺激になるように、圧力をかけたり抜いたり、リズミカルに繰り返す。
もみもみ。
うーむ。
何をさせられているんだ、俺は。
人間マッサージ機じゃないんだぞ。
「あー、そこそこ!
うへへ、これは極楽っス……!」
トウコがとろけたような顔で、だらしなく体を弛緩させる。
肩だけでなく、腰や足も揉んでやろう。
もみもみ……。
トウコは満足げに顔をゆるめている。
わざとらしい口調でトウコがリンに語りかける。
「いやー、これはリン姉も絶対やってもらったほうがいいっス!
疲れが全部ふっ飛ぶっスよ!」
「う、うん」
リンがちらり、と俺の顔を見ている。
非難しているわけではなく、期待のまなざし……。
「リンもやってみるか?」
「はいっ、おねがいしまーす!」
リンが居住まいを正して、マッサージを待ち受ける。
トウコがしたり顔で、リンの近くに陣取る。
「普通にやっても面白くないっスよね、店長!
今こそ全身鎧でマッサージっス!」
何かたくらんでいると思ったが、これを狙っていたのか!
完璧な前振りによる自然な流れ!
俺も自然と乗り気でうなずく。
「おう!」
「ひゃっ!?」
おっと、素早く湯を動かしすぎたな。
もっと丁寧に動かそう。
俺はリンの首元までゆっくりと水を這わせていく。
水膜で覆って、じわじわと圧力をかける。
ぎゅっと絞めたり、緩めたり。
リズミカルに……!
もみもみ、もみもみ。
たゆんたゆん。
そしてその【圧力】を【水探知】で感じる……!
これはスキルの検証だ。
水の反発係数や張力、粘性をリアルタイムで観測しているにすぎない。
やましい気持ちなど……少ししかない!
なんと素晴らしい……!
押し返す柔肌の弾力、いや圧力……!
俺の内圧も高まってしまうぞ!
リンが明るい声で言う。
「わあ……!
あたたかくて、心地よく包まれるみたいで……。
それに、なんだか水に守られてるみたいで、すごく安心します。
すごーく、気持ちいいですねー!」
そんなリンをベストアングルから眺めてご満悦のトウコ。
「うへへ……!
極楽の眺めっス!」
「うむ……!
これは新たな境地が見えてきた!」
って、何をしているんだ俺は!?
我に返りかけた俺だが、別にやめる理由はなかった。
それぞれが、違った観点で圧力を楽しんでいる。
悪いことなど何もない!
なんて楽しい術なんだ、【水圧】!
しばらく【検証者】にセットしたままにしておこう!
これなら熟練度もすぐに貯まるだろう!




