頭上からの急襲!
「ウギギッ!」
「アギーッ!」
頭上から響く、赤ゴブリンの甲高い声。
盾を失い、体勢も整わない最悪のタイミングだ!
「フギッ!」
岩場の上からゴブリンがなにかを投げた。
熱手榴弾だ!
おいおい……!?
この狭い足場で避けきるのは難しい。
水の壁を張るか?
いや、水量が足りない……これでは防ぎきれない!
「ゼンジさん!」
リンが決然とした表情でフライパン盾を上に向けて構える。
しかし手榴弾は逸れて、俺たちの少し上で爆発する。
パラパラと破片が降り注ぐ。
「ゴブリンの投擲の腕はイマイチだな……!
にしても、これはちょっとマズい状況だぞ!?」
リンの表情も曇っている。
「た、盾も一つしかありませんし、魔力知覚の範囲外です!」
「あーっ!
ここからじゃ、狙いにくいっス!」
と言いつつ、トウコが拳銃を連射する。
岩壁に弾丸が跳ねる硬質な音が響く。
当たらなかったようだ。
だが、ゴブリンはやかましく騒ぎながら、頭を引っ込めた。
「アギャギャ!?」
頭上でざわめく声。
声からして、数が多いぞ。
「四匹以上いるか……?」
「二パーティいるかもっス!」
となると、投げモノの数も増える。
段差を乗り越えて接近するのは難しいか?
「トウコ、牽制射撃を続けてくれ!」
「あいあいさーっ!」
トウコが段差から顔を出し、ショットガンを放つ。
「――【濃霧】!」
俺たちの頭上、および周囲に濃い霧を発生させる。
こちらから上はほとんど見えなくなった。
つまり、相手からも姿を隠せたわけだ。
直後、霧を突き抜けるように投げ槍が数本現れた。
しかし、視界を遮られたせいか、狙いは大きく逸れている。
槍は俺たちの遥か後方の岩壁に突き刺さり、小規模な爆発を起こした。
「外れたっスね!」
「ゼンジさんの霧のおかげですね!」
「とはいえ、まぐれ当たりがあるかもしれん。
足場も悪いし、近くに撃ち込まれたらマズいぞ」
爆発に耐えられても、衝撃で転落する危険がある。
これだけの高さから落下したら無事では済まないだろう。
全身を岩にぶつけて大ケガだ。
運が悪ければ死ぬ。
「ゴブリンのくせに生意気っス!」
トウコがいまいまし気に言って銃に弾丸をこめる。
「地の利をわきまえてやがるな……!」
高所の有利というやつだ。
下からは攻めにくい。
「ど、どうしましょう!?」
リンが不安そうな、それでいて期待するような顔を向けてくる。
もちろん、どうにかする。
さて、どうするか。
俺は考えを巡らせる。
敵は多数。
おそらく二パーティー分。
このまま耐えていれば、いずれ投げモノはなくなる。
せいぜい五、六発。
もう半分はしのいだだろう。
運が良ければ当たらない。
だが、運が悪ければ……?
俺は運など頼らない。
より確実な手を打たねば。
「俺が近づいて倒してくる。
トウコは威嚇射撃で敵の意識を引きつけてくれ」
「りょっ!」
リンが盾を掲げて、頼もしく言う。
「では、私はトウコちゃんを守りますね!」
「頼むぞ!」
そう言うと俺は岩壁に張りつくように身を隠し、上へ登っていく。
さらに霧を追加で出して、自分の周囲に展開する。
【隠密】の【隠術】と【消音】もかけておく。
ときおり、背後で爆発音が響く。
だが振り返らない。
足を止めてはいられない。
早く敵を倒せば、それだけ脅威が減るからだ。
攻撃は最大の防御なり!
腕に力を込め、壁走りの術を使って素早く岩を登る。
霧に【水探知】をかけ、警戒も怠らない。
火トカゲが潜んでいる可能性もあるのだ。
慎重に、だが着実に。
じりじりと霧に溶け込んで進む。
ゴブリン達の気配はもう近い。
霧がゴブリンを捉えた!
安定した広い足場に八匹のゴブリン!
こちらには気づいていない。
さて、後は始末するだけだ!
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