正しいフタの使い方!?
天井の高い、広い空間へ出た。
俺は目の前の地形を見て唸る。
所々にある熱水晶のおかげで、上まで続いているのが見える。
ううむ、かなり高低差があるぞ。
「段差か……」
巨石が連続して積み重なっている。
登山なら鎖場の難所だな。
こういう地形は前にもあった。
少し厄介だ。
階段というには一段が高い。
腰丈ほどから、背丈ほどの段差。
この岩を登らないと進めない。
「ゼンジさん。
ここを登ってみますか?」
かなりの高さだ。
とはいえ、俺にとっては簡単だ。
【壁走りの術】や【登攀】があるからな。
しかし、リンとトウコにはちょっと大変かもしれない。
「戻って他のルートを探す手もあるが……」
「戻るより進むほうがいいっス!」
「じゃ、登ってみよう。
敵がいるかもしれないから慎重にな」
「はいっ!
索敵、がんばりますねっ!」
リンが頼もしく微笑む。
俺も【水探知】で索敵するつもりだ。
とはいえ、常に見つけられるとは限らない。
敵もスキルを使って隠れている場合があるからな。
火トカゲは隠密持ちだ。
俺は作戦を伝える。
「ここは俺、リン、トウコの順で進む。
俺とリンは索敵。
トウコは後方警戒だ」
「はーい!」
「リョーカイっス!」
低い段差はそのまま乗り越える。
段差が高くて視線が通らない場合は、水蛇を上段へ進ませてチェック。
リンが警告の声をあげる。
「あっ!
ゼンジさんの上あたり、少し怪しいです!」
「む……?」
上の段はチェック済だが……。
しかし俺が調べたのは床だけだ。
さらに上、その上の段へ向かう壁面を探る。
水蛇が何かに触れた。
「なにかいるぞ!」
「キュッ!」
水の感触に驚いたのか、小さな鳴き声があがる。
これは……火トカゲだな。
水を固めて掴もうとするが、トカゲはするりと抜け出してしまう。
トカゲはそのまま、さかさかと素早い動きで壁面を登って行く。
「撃て!」
トウコが銃を向け、首を振る。
「ムリっス!
ここからじゃ狙えないっスね!」
トウコの位置からは岩が邪魔で射線が通らないようだ。
リンが言う。
「では私がやりますっ!
ファイアウォールっ!」
トカゲの逃げ道を塞ぐように、炎の壁が降りる。
上から降り注ぐ滝状の炎だ。
【火魔法】はこういうときにも便利だな!
炎に炙られ、行く手を遮られたトカゲが方向を変える。
トカゲの足が水に触れる。
薄く広げて、水たまりのようにしておいたのだ。
捉えた!
「捕まえたぞ!」
水を硬質化してトカゲの脚を掴み、段差の蔭から引きずり出す!
これで射線が通った!
「あざっス!
カーブショット!」
マグナム銃から弾丸が放たれる。
弾道が湾曲する。
そして、やや狙いづらい場所にいたトカゲを撃ち抜いた。
弾丸が見えたわけじゃないけど、そうだと推測する。
「ギィィッ!?」
トカゲが大きく身をよじらせる。
まだ致命傷には至っていない。
水からその感触を得て、更に引く力を強める。
そこに、なにかが落ちてきた。
げっ……尻尾だ!
赤熱し、赤く輝いている。
もう爆発寸前だ!
水を戻して防御する……!?
いや、フルスイングで弾き飛ばすか!?
するとリンが動く!
「えいっ!」
トンファー盾の片方、フタを尻尾に被せた!
いや!
大きな尻尾は収まりきらず、少しはみ出している!
リンがフタトンファーを片手で押さえ、もう一方の盾で隙間を塞ぐ!
爆発!
「きゃあっ!?」
「リン姉ーっ!?」
爆風でリンの体が浮き上がる。
吹き飛ばされた盾が、がらんと音を立てて床を転がる。
がらがらと、岩壁にぶつかりながら落ちていく。
岩棚からリンが落ちかける。
俺は素早く手を伸ばし、リンの手を掴む。
「リンっ!」
「あ、ありがとうございますっ!」
リンは無事だ!
俺は手に力を込め、リンを立ち上がらせる。
トウコが銃を上へ向け、引き金を引く。
「んなろっ!」
「ギッ!」
銃声が連続し、何発かが命中。
これが致命打になった。
短い叫びを残し、トカゲは塵になって消えた。
「ふー、倒したっス!」
「よし……!
リン、大丈夫か!?」
リンは辛そうな顔だ。
むむ……どこか痛めたのか!?
リンは眉をひそめ、悲しげな顔で言う。
「大丈夫、なんですが……。
盾が落っこちちゃいましたー!」
トウコが頭を手で押さえて言う。
「あちゃー。
下まで落ちちゃったっスねー」
けっこう登ってきたからな……。
「すみません……」
リンがしょんぼりと肩を落とす。
俺はその肩を叩く。
気を落とすことなんてない。
ケガがなくてよかったし、むしろファインプレイだった!
「いや、助かったよ。
おかげでみんな無事で済んだ!
じゃあ、盾を拾って――」
帰ろうか、と言いかけたところで上から声が聞こえた。
耳障りな、興奮した声。
「ウギギッ!」
「アギーッ!」
赤ゴブリンだ!
騒ぎを聞きつけてやってきたらしい!




