クローゼットダンジョン・二十二階層!
自律分身が戻ってきた。
偵察の結果を聞いた限り、二十一階と大差ないという。
術を解除して意識のフィードバックを受ける。
ふむふむ。
たしかに大きな違いはない。
洞窟で、暑くて、ゴブリンやトカゲが出る。
自律分身が進んだルートは行き止まりだったようだ。
熱水の川はなかった。
途中で赤ゴブリンと遭遇して、これを倒している。
スキルのない自律分身は、体術や剣技だけで戦っている。
もちろん俺もスキルなしで同じことができる。
だけど、心構えだけは違う。
自律分身は死んでも俺の意識に戻るだけ。
つまり死を恐れず大胆に戦えるのだ。
俺は安全マージンを十分に取って、被弾を避けて戦う。
この違いが大きい。
俺は階段を出て、進む方向を決める。
「さて、出発だ。
自律分身がチェックしたルートは行き止まりだったから、別ルートを進むぞ!」
自律分身が進んだルートは手元の地図に書き込んである。
二人が元気よく返事を返す。
「はーい!」
「リョーカイっス!」
休憩のおかげで、俺の魔力はほぼ回復している。
まだ全回復ではないが、まあ問題なかろう。
盾を構えたリンを先頭に、俺、トウコが続く。
このルートには川や水溜りがない。
リンが暗がりを見通そうとしているのか、目を細めている。
「うーん。
小さな脇道が多いですねー」
索敵する場所が多くて大変かもな。
「ひとまず、広い道をこのまま進むぞ」
脇道のほとんどはすぐに行き止まりだ。
いちいち進んでいてはキリがない。
まずは太い道を進む。
「さっきの階と比べたら、暑さがマシっスね」
「湿度が低いんだろうな」
そんな話をしながら、洞窟を進んでいく。
前方に水蛇を出し、床を調べる。
洞窟階層に罠はないと思うが、念のため。
【操水】と【水探知】の練習でもある。
別の体をもう一つ操るような感覚。
分身の操作に通じるものがある。
それでも人間の形と流体ではかなり勝手が違う。
その差を埋めるためには、練習あるのみだ。
トウコが耳をそばだて、鋭く小声で言う。
「ゴブリンの声がするっス!
あっち!」
トウコが前方を指さすが、見える範囲にゴブリンの姿はない。
俺の耳にもゴブリンの声が届いた。
だが、反響して位置が掴みにくい。
リンが言う。
「脇道から来ます!
もうすぐ出てきますよ!」
「りょっ!
チャージ中っス!」
トウコが構える銃が光を蓄え始める。
そこへ、二匹の赤ゴブリンが現れた。
「アギッ!?」
「ギギッ!」
先頭のゴブリンがこちらを指差し、警告するような声を上げる。
それを合図に、戦闘が始まる。
トウコが引き金を引く。
俺も負けじとナタを投擲。
「チャージショットーっ!」
「ていっ!」
チャージショットが放たれ、そのゴブリンを打ち抜く。
ナタが二匹目の肩口に突き立ち、よろめかせる。
「ファイアラァーンスっ!」
よろけたゴブリンをかすめるように火槍が飛ぶ。
炎の槍はゴブリンを炙り、さらに背後へ。
そして横道から顔を出したゴブリンに命中して燃え上がらせる。
ゴブリンが体をばたつかせ、悲鳴を上げる。
「アギャァァ!」
「ウギッ!」
炎に巻かれたゴブリンの蔭からゴブリンが踊り出てくる。
そして何か投げようと振りかぶる。
槍だ!
しかし遅い!
水蛇はもう、ゴブリンの足元へと忍び寄っている。
足を掴んで強く引き、ゴブリンのバランスを崩す。
「グゲッ!?」
ゴブリンがつんのめる。
これで投擲は防げた。
さらにトドメにもう一丁!
「――【水刃】!」
俺から奴へ伸びる水蛇は、発射台であり滑走レールだ。
水に沿うように【水刃】が滑っていく。
刃がゴブリンを貫く!
「ガハッ!」
ゴブリンは赤い顔を苦痛にゆがませ、吐血。
そのまま塵になって消える。
刃を水に戻し、その水で脇道を索敵――
――しようと思ったが、感知できる範囲外だ。
【操水】のほうが【水探知】より効果範囲が広い。
リンがふうっと息を吐く。
「今のゴブリンさんで最後でしたー!」
「よし、今回は先手を取れたな!」
「もう赤ゴブの相手は余裕っス!」
先に見つけて攻撃すれば、赤ゴブリンは脆い。
盾持ちがいないから一気に倒せるのだ。
投げモノさえ封じれば、なんてことないな!
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