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【新章開始】社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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新観光スポットは熱湯の大滝で!

「おぉ!」


 俺は壮大な熱湯の大滝を見上げ、感心の声を上げた。

 リンは目の前の光景に圧倒されたように、トウコは興奮気味に、それぞれ声を上げる。


「わあ……!

 すごい光景ですねー!」

「スゲーっ!

 でもめっちゃ暑いっス!

 まるでサウナみたいなんスけど!」


 目の前に広がる光景は、まさに圧巻の一言だった。

 ごうごうという轟音を立て、断崖絶壁から膨大な量の湯が一直線に流れ落ちている。

 滝壺(たきつぼ)で砕けた湯は、もうもうと湯気を立ち上らせ、この広い空間全体を熱気と湿度で満たしていた。


 そして、滝が流れ落ちる岩壁には無数の赤い結晶――熱水晶が鉱脈のように埋め込まれ、不気味な赤い光を放っている。


 俺は赤い水晶群を指差す。


「この熱水晶のせいで、川の水が湯になっていたわけか。

 これだけの量があれば納得だな」


 滝の水が熱水晶に触れると、水晶が光を増す。

 熱を放っているのだ。


「滝の裏に何かありそうだな」

「いかにも隠し通路がありそうっス!」


 近くに寄ってみると、滝の裏には空洞があるとわかった。

 リンが【サポートシステム】を送り込む。


「あっ、ありましたー!

 後ろに通路が伸びていますよ!」


 俺は滝の向こう側、水のカーテンの奥に目を凝らす。

 湯気で視界が不鮮明だ。


 逆に、その湯気を【水探知】で感じ取ってみる。


 ほうほう。

 背後に空間があるようだ。

 通路になって、奥へ続いているな。


「俺にも奥の空間が感じ取れる。

 進めそうな広さだな!」


 トウコが(あご)に手を当てて思案顔で言う。


「んー。

 でも、あんなところ、どうやって行くんスかね?

 ここでもお湯がはねてアツいのにっ!」


 トウコは薄着だからなぁ……。

 むき出しの腕や(もも)に湯の飛沫がかかって熱いのだ。


 リンが盾を構えながらトウコを呼ぶ。


「トウコちゃん、こっちにおいでー」


 トウコがリンに近寄っていく。

 そして、するっと盾とリンの間に潜り込んだ。


 そこ!?

 普通、後ろに隠れるだろ!?


「いやー助かるっス、リン姉!

 こんなところに癒しのスポットがあるとはっ!

 まるで砂漠のオアシスみたいっス!」

「う、うん……?」


 リンは何かがおかしい、という顔で困惑気味だ。

 俺もおかしいと思うよ!?


「んで、ここを突っ切るんスか?」

「いや、熱湯のカーテンを突っ切るのは無謀すぎるだろ!

 火傷じゃ済まないっての」

「さすがに無理だよトウコちゃん!

 きっと、他の方法があると思うなー」


 正面突破は無謀だ。


 俺たちは周囲を調べ、滝の横手に回ってみる。

 お、こっちから通れそうだな。


「滝の横側から回り込めるようだぞ。

 滑りそうだが、足場もちゃんとある」


 滝の裏にくぼみがある。

 濡れていて滑りそうだが足場もある。


「よし、ちょっと行ってみるか」

「大丈夫でしょうか?」


 水流を直接浴びるわけではないが、湯気や飛沫が跳ねてくる。


「湯気は【濃霧】で防げそうだな。

 だけど飛沫は防げそうにない」

「ヤケドしそうっスねー」


 【操水】は空中を飛んでくる水は防げない。

 雨粒や飛沫は操れないのだ。

 なにしろ、浮遊させられないからね。

 念動力とは違う。


「なら水で壁を作って……。

 いや……待てよ?

 これなら……!」


「何か思いついたんですか?」

「ああ。

 薄い水の(まく)で体を包むんだ。

 こんなふうにな!」


 俺はペットボトルの水を自分の腕に降りかけ、(まと)わせた。

 それを見てトウコが目を輝かせる。


「おーっ!

 ウォーターシールドっスね!

 涼しそうっス!」

「どちらかと言うとウォーターアーマーかな?」

「水の鎧ですねー!」


 常温のぬるい水だ。

 だけど高温多湿の滝付近では、むしろ冷たく感じられる。


 膜で空気を遮り、水飛沫も防げる。

 ぜんぜん熱くない!


「なかなか快適だぞ!」

「どうせなら、全身鎧にしたいっスね!」


 腕を包む水を引き伸ばして、肩から胴体へさらに()ばそうと試みる。


「やってみるか。

 ふむ……これは、なかなか難しいな」

「ゼンジさん、頑張ってください!」


 (うす)く伸ばそうとすると途端(とたん)に難しくなってくるのだ。

 パワーよりテクニックが求められる感じ。

 かなり集中すれば更に引き伸ばせないこともないが……。


 いや、ダメか。

 ペラペラの薄い膜では強度が足りずに崩れてしまう。

 その状態を維持して素早く動くとなると……。


 なら水を増やしてみるか。

 少ない水を引き伸ばしているから難しいのだ。

 量が多ければ簡単になる。


 【水生成】で水を足し、厚みを保ったまま全身を覆って……。

 よし……!

 顔は呼吸のために開けておこう。


「できたぞ!」

「うまくいきましたねー!」


 リンがパチパチと拍手を贈ってくれる。

 かなり苦労したが、全身を覆う水鎧の完成だ!


 トウコがふざけて笑い、俺を指差す。


「出たっスね!

 妖怪水男(みずおとこ)っ!」

「ん、そんなにヘンか?」


 リンが首を横に振る。


「いえいえ、カッコいいですよー!」

「そうか……?」


 それはさすがに……色眼鏡が過ぎるだろ!?


 水を(まと)った状態で動いてみる。

 ふむ、なんとか維持できそうだ。

 鎧は崩れず、ちゃんと体についてくる。


 ほう……これはなかなか。

 何かこう、可能性を感じるな!


 トウコが手をくいくいさせて催促する。


「店長、あたしにもプリーズっス!

 はよはよ!」

「急かすなよ……【操水】!」


 自分の分を維持しながら、更にさらに水を生成し、操る。


 トウコの体を水が覆っていく。

 だが、水は安定せずに波打ってしまう。


「うへへ。

 くすぐったいっスよ!?」

「むむむ……。

 これは難しいぞ……!」


 右手で空中に丸を書きながら左手で三角を書くような作業だ。

 その上で左右の足で複雑なステップを踏むような……。


 頭がこんがらがってくるな!

 俺は息を吐き、術を止める。


「ふう……ムリそうだ!

 どうにも、二人分を維持するのは難しい」

「えーっ!?」


 トウコが不満げに口をとがらせる。

 リンが誇らしげに盾を掲げて言う。


「私は盾があるので大丈夫ですよー」


 さっそく盾が役に立っているじゃないか。


「なら、水の膜はトウコに集中させよう!

 俺はボディースーツ装備だから飛沫がかかっても大丈夫だ」


 俺は自分の周囲からトウコに水を移していく。


「おーっ!

 涼しいっスね!

 これでバッチリっ!

 じゃあ出発進行(しゅっぱつしんこー)っス!」


 トウコが元気よく滝の裏へ向かっていく。

 俺はそれを指差し、笑みを浮かべる。


「ああ、行こうか……妖怪水女!」

「ふふっ」


 リンが小さく吹き出す。

 俺たちは(なご)やかに、滝の裏へ歩みを進めた。

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