にょろにょろ索敵! 無線でダメなら有線で!
霧での索敵は名案に思えた。
ちゃんと霧を感じ取れたし、見えない位置の地形も把握できた。
だけど、思ったほどではない。
まず、霧の操作が難しいんだよな。
霧の性質上、どうしたって密度が薄くなる。
ふわふわしていて感じ取れないのだ。
もっと便利だと嬉しいんだけど……。
まあ何事も、そう都合よくはいかないよな。
「というわけで【操水】を使って索敵するぞ!」
「霧じゃなくて、お水を使うんですね!」
「その通りだ!
――【操水】」
川からまとまった量の水を岸に上げる。
そのままスライムのように地を這わせ、通路を進ませる。
「む、探知範囲はここまでか」
ある程度離れると感知できなくなってしまう。
せいぜい四、五メートルだ。
スキルレベルが一段階ではこんなものだろう。
距離が短すぎて目で見たほうが速い。
その上、かなり不鮮明な感覚だ。
「うーん。
感知範囲が狭すぎるし、感じ方も薄いなぁ……」
「私も遠くを感知すると、そうなっちゃいます」
リンはもっと遠くの敵を見つけている。
スキルレベルの高さと、サポートシステムのおかげだろう。
詳しい感覚はどうなんだろう?
ここはひとつ、先輩に聞いてみよう。
「そういうときはどうしているんだ?」
「システムさんに近づいてもらっています。
私から遠くても、システムさんの近くならよく見えますのでー」
リンの場合は【サポートシステム】を使って索敵範囲を延長している。
「ワイファイ中継器みたいで便利っスね!」
「たしかに便利だな。
とはいえ、俺にはサポートシステムがないからなぁ……」
「あとからは取れないみたいっスね」
初心者救済のための機能みたいだし……。
ダンジョンのシステムは案外、ユーザーフレンドリーである。
とはいえ今更、俺やトウコが取れるものではない。
ないものねだりをしても仕方がない。
できる方法を考えようじゃないか!
俺には中継器がない。
となれば……。
「中継できないなら、有線で繋げばいいな!」
「どういうことっスか?」
【操水】で操る水を細長く伸ばす。
細長い蛇のような形状だ。
「こういうことだよ!」
一方を自分の足に触れさせ、逆側を伸ばす。
「あっ!
触れたまま、伸ばしていくんですねー!」
「にょろにょろ索敵っス!」
伸ばした先端をヘビのように、にょろにょろと動かす。
そうしないと動かせないわけじゃあない。
まっすぐ動かすと索敵できる範囲が限られるからだ。
蛇行させることで道の両端を探れる、というわけ。
「よし、これなら少し先までハッキリ見える!
と言っても、せいぜい五メートルだけどな」
トウコが半眼で言う。
「それってショボくないっスか?」
おいおい!
あんまりストレートに言うなよ!?
俺の【水探知】君は便利なんだからね!
水忍法の核になるパーツだから!
「まあ、開けた場所で使っても意味は薄い。
でも、横穴や曲がり角の先を確認するには便利だぞ!」
トウコが感心したようにうなずく。
「たしかにっス!
角待ち芋カマキリとかを倒せるっスね!」
「そういうことだ!
頑張れば壁面も探れるが、上方向に動かすのは難しいんだよな」
何度も言うが、【操水】は水を移動させる術だが浮遊はできない。
壁を這い上がるには勢いをつけて慣性で登るか、パワーを使って水を固めるイメージで使う必要がある。
攻撃のように瞬間的に動かすのと違って、継続的に時間をかける索敵では魔力消費がバカにならない。
壁や天井の索敵には向かないな。
リンがあっと、思いついたように言う。
「これなら、罠を見つけやすいかもしれませんねー!」
「お、そうだな!
罠探しローラーの代わりになるかもしれないぞ。
今度、試してみるよ」
時間があったら迷宮階層で罠を探してみよう。
持ち込む道具が減れば、それだけ身軽に動ける。
魔力消費は【瞑想】でカバーすればいい。
ん……?
視界の端、上のほうに違和感がある。
俺は足を止め、手で二人に停止を合図する。
「あそこの岩の隙間、ちょっと怪しいな」
岩陰に目を凝らすが、ぼやけてよく見えない。
これはおそらく【隠密】のようなスキル効果だろう。
岩石探知のナイフがなければ気づけなかったところだ。
隠れてるトカゲがいるぞ!
誤字報告ありがとうございます!




