反省と期待と改善と!
戦闘を終えた俺たちは警戒しながらダンジョンの奥へ進んでいる。
今日は川をさかのぼるように進むつもりだ。
せっかくの火耐性が消える前に進んでおきたい。
リンの盾は炎に炙られたものの、表面が少し煤けた程度。
体のほうは無傷で済んだ。
リンが興味深そうに俺に尋ねてくる。
「ゼンジさん。
さっきは、霧で索敵していたんですかー?」
「そうなんだが、奥のほうはハッキリ見えないな。
少し離れただけでぼやけた感じになるんだ」
リンがなにか嬉しそうにうなずく。
「それ、私の魔力知覚もおんなじですー!
離れるほど感じ取れなくなっちゃうんですよねー」
「へー、キリでもわかるんスねー!
索敵能力は便利っス!」
「分身を先に歩かせてもいいんだけど、分身には感覚がないんだよな。
分身知覚みたいなスキルがあればいいんだけどさ」
「ないんスか?」
スキルリストにはなかった。
これまで見かけたことはない。
しかし、ないのかと改めて聞かれると……。
ふーむ。
俺はステータスウィンドウを確認する。
取得可能なスキルのリストは、と。
「ふむ……やっぱりないな。
だけど、分身系統にも知覚能力はあるべきだよな!」
「あったらいいですよねー!」
可能性はある!
あったらいいねが、あってくれ!
一応、そういう意識を持って期待しておく。
頼むぞ分身!
俺の基本とも言えるスキルだからな。
自律分身には人間と同じ感覚がある。
意識まで備わっている。
ステータスすら持っているんだ。
普通の分身にだって、そういう機能を持たせられるはず。
スキルにはそれができる!
頼むぞ、忍者の可能性……!
「感知や探知のスキルを取っていれば、いずれ分身系スキルにも生えてくるかもな。
それを期待しつつ、今日は水忍法で索敵していくぞ!」
「もやもや索敵っスね!」
「私は、どうしたらいいでしょうか?」
いつもならリンが索敵係だ。
今日は俺がやると言ったので、どう動けばいいか迷っているのだ。
「リンとトウコも敵に気づいたら教えてくれ。
俺の索敵だけじゃ怪しい。
それだけを頼りに進むのは危ないからな。
さっきはリンがフォローしてくれたおかげで、助かったよ」
「リン姉、ナイスっス!」
「えへへ、ありがとうございまーす!」
リンがはにかむ。
「そのあと、トウコの素早い攻撃で、槍の投擲を阻止できたのもよかったぞ」
トウコがどや顔で鼻を伸ばす。
「へへー、さすがあたしっス!
落とさせてバーン、ってなるかと思ったのに爆発しなかったっス」
「落としたくらいじゃ爆発しないのかもな。
赤ゴブリンの魔石が集まったら、引き換えた武器で検証しよう」
「ゼンジさんの水忍法のカッコよかったですー。
しゅばばーって感じで!」
俺の走操水刃の術は……まあまあってところだ。
威力はいいが、やや遅い。
銃と競い合えるほどのスピードはない。
「ぜいたくを言えば、ゴブリンが投げる前に阻止したかったけどな。
盾の使い勝手はどうだった?」
「前より大きいので、しっかり守られてる感じがしますー!
少し汚れてしまいましたが、後でちゃんと修復しますので!」
「ゴブリンの武器は、盾で受けても爆発するんだよな。
避けても地面にぶつかって燃え上がるし……」
「あの爆発は、ほとんど熱みたいですねー。
小さな石も飛んできますが、あまり勢いはないみたいです」
リンは透明な盾を構えて、間近で爆発を見たのだろう。
破砕手榴弾のように、破片をばらまく武器ではないのか?
「ほう?
爆発じゃなくて、燃焼がメインってことか」
「なら、ナパームグレネードっスね!」
「火炎瓶やナパームよりは持続性が低い気がするな。
たぶんもっと瞬間的で……。
熱水晶が砕けると熱が放射されて、それで盾が燃えてるのか……?」
「そうですねー。
私も、そんな感じだと思います」
「そうなら、俺は前回みたいに水の壁で受けたほうが良かったかもな。
あるいは、ナタでも投擲したほうが効率的だったかも……」
【水忍法】を使う意識が強すぎたんだな。
霧の索敵もそうだ。
そればかりに意識を割いていては、全体が見えなくなる。
いつもなら低階層で練習するんだけど、今回はその工程を飛ばしてしまった。
実戦で学ぶのもいいけど、まずは準備と練習だ。
コツコツ積み重ねた検証と訓練が俺の強みだからな!
「まー、倒せたんだからいいじゃないっスか!」
「まあ、そうだけどな。
次に向けて考えてるんだよ」
リンも考え込むような顔になっている。
「私も……盾が燃えてびっくりしちゃって……。
私が余計なことを言わなければ、ゼンジさんは避けれたと思います」
「いや、しっかり防いでくれたから次の行動に移れたんだ。
あれでいいと思うぞ!」
「やっぱリン姉は火に強いっス!
ぜんぜんダメージないんスよね!」
「うん、平気だったよー」
相手も火耐性を持っていそうだが、こちらにもあるのだ。
今日は俺にも一時耐性がある!
「俺のところにも少し炎の余波が来たけど、火傷はしないで済んだ。
まあ、リンが大部分を防いでくれたおかげだな」
リンがホッとしたように胸をなでおろす。
「ちゃんと防げてましたか?
それなら、よかったですー。
あ、そういえば霧で火を消してくれたんですよね!
自分で消せるのを忘れちゃってました!」
いつもはできることも、緊急時にはできなくなる。
自分ですぐ【消火】を使えれば、もっとよかった。
しかしそれはあくまで結果論。
実際の戦闘では理想通りには動けない。
「慌てるのは仕方がないさ。
次は落ち着いて、それでいて素早く動けるようにしよう!」
さて、反省完了!
この経験を活かして、どんどん攻略していくぞ!




