いざ出発! 冷感グッズでダンジョン攻略!
俺たちはクローゼットダンジョンの拠点で装備を身につけている。
今日は二十一階層を攻略するつもりだ。
暑さ対策のために吸水速乾あるいは吸汗速乾素材の冷感グッズを用意している。
水を吸いやすく、乾きやすい素材でできている。
触れるとひんやりするアレ。
これは市販品だ。
「さて、出発するぞ。
二人とも、冷感グッズを用意したから適当に選んでくれ」
トウコがタオルを手に取る。
「ふつーに売ってるタオルっスか?」
「そうだ。
使い勝手を見て、あとで加工するつもりだ。
服に組み込んだりな」
「ふーん。
こんなの、効果あるんスかねぇ?」
「それを試すんだよ!」
「じゃあ、私はこれを使わせてもらいまーす」
「お、ヘアバンドか」
リンが頭にヘアバンドを巻く。
「おっ、これは清楚っスね!」
何を着ても清楚に見える。
そして何を着てもかわいい。
トウコは何気ない様子でタオルを首に巻いている。
「トウコちゃんも似合ってるよ!」
「タオルに似合うとか、あるんスかね」
「あるだろ。
スポーティーな感じで、似合ってるぞ」
部活少女っぽい感じ。
爽やかで、元気な印象が増す。
「今日はマフラーをやめて、手拭いにしよう」
真夏にマフラーを巻くヤツはいない。
さすがに首元が熱いのだ。
コウモリも出ないし、問題なかろう。
「手拭いもマフラーみたいで、似合ってますねー!」
「いつにも増して地味っスけどー」
「忍者は地味でいいんだよ!」
いつものマフラーに比べると短い。
ひらひらした動きがなくなるから、より地味になる。
ちょっと物足りなさを感じる。
忍者にはマフラーがないとね。
実用性がなくても忍者はみんな着けている。
なぜかって?
欠かせないアイテムだからさ。
そして俺は実用性も持たせたいタイプ!
せっかくだから機能的な冷感素材マフラーを作ろう!
俺たちは転移モノリスを使って二十一階層へやってきた。
階段で火鳥の卵を使った料理を食べる。
おにぎりと玉子焼きの、ごく普通の弁当だ。
シンプルな料理だが味は格別。
卵もいい味付けで、素材の味も活きている。
食事を終え、ステータスウィンドウでスキルリストを確認する。
「よし、ちゃんとスキルがついてるな!」
「はい、【火耐性(一時)】の効果が出ましたね」
「あたしは元から【火耐性】あるんで、つかないっスね!」
「じゃあ、ここから一時間はボーナスタイムだ。
なるべく先へ進んでおこう」
「はーい」
「ガンガン進むっス!」
「それで、今回は俺に索敵役をやらせてくれ。
見つけたら知らせるから、二人は遠距離攻撃を頼む」
岩石探知のナイフも俺が身につけておく。
目とアイテムと水忍法の三段階で索敵するつもりだ。
「はーい!」
「リョーカイっス!」
熱水の川に沿って進んでいく。
この川の水はしっかり探知できている。
と言っても、かなり近い距離だけだ。
水に手を突っ込めば、もっと強く感じ取れるはずだ。
だけど火傷してしまうから、それはできない。
近くの水中に敵がいないことはわかるが……。
水がない場所はわからない。
岩石探知のおかげで壁面や床が感じ取れる。
足元がしっかり見えるので転ぶ心配はないな。
火トカゲがいれば、浮き上がって見えるはずだ。
今のところ火トカゲの姿はない。
しかし川沿いは相変わらず蒸し暑い。
トウコが肩を落とし、気だるげに言う。
「はー、あづいっスー。
店長、やっぱりタオルなんか意味ないっスよぉー」
俺の手拭いも、もう温くなってしまった。
汗は吸ってくれるが、乾くのが追いついていない。
湿度が高いこともあって冷えないのだ。
もちろん、これは想定通り!
「そこで水忍法の出番だ!
――指水鉄砲の術!」
「わひゃっ!?」
俺の指先から飛び出した水がトウコの首元に降りかかる。
水圧が弱いのであまり遠くへは飛ばない。
トウコは口をとがらせて抗議し、しかし心地よさそうな顔で親指を立てる。
「不意打ちはナシっすよ、店長!
でもこれなら涼しいっス!」
リンが感心したように笑う。
「おもしろいですねー!
【水生成】と【操水】を使っているんですか?」
「そうなんだ。
これだけじゃ攻撃には使えないけど、ちょっと飛ばすくらいはできる」
【操水】は水を移動させる術だが、飛行させる術ではない。
空を浮遊させることはできない。
勢いをつけてジャンプするように、少し飛ばせるだけ。
「あたしは水噴射のシャワーのほうが好きっス!」
「今やったら目立ってしょうがないだろ!」
モンスターを間引いた後の帰り道ならいいけどね。
リンの視線を感じる。
「ん、どうした?」
「あの、私も暑くなってきちゃいましたー」
そう言って、やや頭を傾け、ちらりとこちらを見るリン。
なにか色っぽい。
「ひゅー!
積極的っスね、リン姉!
顔面ぶっかけ要求っス!」
やめたまえ!
よくわからんが卑猥だぞ!?
よくわからんが!
「じゃあヘアバンドを狙うぞ!」
「ぴゅぴゅーっ」
トウコが口で変な効果音をつける。
やめないか!
俺は手を伸ばし、リンのヘアバンドに水をかける。
髪も濡れるが、涼しくはなるだろう。
「ありがとうございます。
涼しくなりましたー」
まあ、水をかければ涼しくなるのは当たり前。
冷感とか速乾とか関係ないな。
「まだまだここからが本番だぞ。
いざ――濃霧!」
しかし普通に水をかけただけでは終わらない!
暑さ対策のために風呂で修行した技である!




