第九話 明朝
こんにちは、作者の吉良義人です。
今回の話、上手く書けているか非常に不安です……。
……どうでも良いですね、反省しています。
あと最近、こういった前書きしか書けない事に少し焦っています。
他の事も書けよ僕の指……!!
それでは『第九話 明朝』、よろしくお願いします。
薬品特有の刺激的な匂いが鼻腔を刺し、ハヤトは目を覚ます。
目に入ってきたのは、見覚えの無い、木造の高い天井。どうやら、自分は寝かされているようだと判断したハヤトは、身体のすぐ脇の布団から、茶色の毛の束が生えている事に気が付く。
「……何だ……これ……?」
掛け布団を外し、その毛の束の正体を確かめたハヤトは、微かに笑みを浮かべた。
テナが、ベッドに突っ伏すような形で寝ていたのだ。
どうやらベッドの脇にある椅子に座っていたようだが、次第にうたた寝を始めて、終いにはベッドに頭が落ちてしまったのだろう。
上半身だけを起こしたハヤトは、外の様子を部屋の中から伺うが、外は既に夜の闇に完全に包まれている、という事しか分からなかった。
完全な静寂に包まれた部屋の中で、ハヤトは寝ているテナの方を見下ろす。
頭を完全にベッドに預けているテナは、規則正しい、穏やかな寝息を立てて寝ている。その顔は安らぎに満ちており、ハヤトに心地よい安心感を与えた。
ふと、軽い悪戯心が沸いたハヤトは、寝ているテナの頬を軽くつねってみる。テナは起きるような気配を見せない。
テナが起きてこない事を確かめたハヤトは、テナの頬をいじる。
テナの頬は柔らかく、ハヤトの指の動きに合わせてくにくにと形を変えていく。
段々と楽しくなってきたハヤトは、続けてくにくにと頬の形を変えて遊んでいた。そのため、テナが「う、うん……」と身動ぎをした事に気付く事が出来なかった。
これで最後と、ハヤトがテナの頬を左右に伸ばした時、テナの目がぼんやりと開き、ハヤトの顔を見た。
「……あ……」
「……ふぇ……?」
思わず硬直するハヤトと、徐々に目を大きく見開いていくテナ。
「……ふぁやと(ハヤト)……しゃん(さん)……?」
頭の覚醒と共に、自分の現状に理解が追いついてきたテナは、頬をどんどん紅潮させていく。
「あ、いや、これは……」
あたふたと何故か慌てながら、これまた何故か言い訳のような事を言い始めるハヤト。そんなハヤトの様子に、テナは何を勘違いしたのか、更に頬を紅くさせていく。
そして、
「…………ハヤトさん、えっち……」
「本当にすみませんでした!!」
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「まったく、寝ている時に悪戯をされるのって、すごく恥ずかしいんだよ?」
「……はい、本当に悪い事をしたと思っています」
テナのにそう諭され、ハヤトは素直に頭を下げる。
そんなハヤトの様子に「はぁ……」と小さく溜め息を吐いたテナは、ハヤトに現状の説明を始める。
「あの魔物をやっつけた後、ハヤトさん気を失っちゃったから、カナレアの病院で休ませてもらっていたの」
テナの言葉に、ハヤトは不思議そうな顔をして、尋ねた。
「……魔物をやっつけた? 誰が?」
「………覚えていないの?」
テナの言葉に、ハヤトはこくんと頷く。そんなハヤトに呆れたような顔を向け、そしてテナは俯いて、小さな声でごにょごにょと言う。
「…………ハヤトさん、格好良かったのに……」
「……? 何か言った、テナ?」
「いーや、何でもないよ~」
テナの様子に首を傾げながら、ハヤトは確かめるように言う。
「それで、魔物を倒した後、気絶した僕は、テナに運ばれてカナレアの病院に行って、そして今に至る、と」
「うん。ハヤトさんを運ぶの、すごく大変だったんだから!」
そう言って、テナは顔を綻ばせ、肩を大きく回す。
「そうか、それは悪かったなぁ~……」
「だからこの分は、今度何か奢って返して下さい」
テナの現金な希望に、ハヤトは苦笑いを浮かべながら、「分かったよ……」と返す。
ハヤトの言葉に、テナは嬉しそうな顔をしている。
「……そういえば、フェルノさんはどうしたんだ?」
「……アリアは、ちょっと怪我が酷かったから、お医者さんたちが治療中。終わったらすぐに知らせてくれる、って言ってたけど……」
ハヤトの言葉に答えながら、テナは明るかった表情に陰りを見せる。
話の振り方を間違えた、と少し後悔しながら、ハヤトはテナにかけるべき言葉を模索し始める。が、
「……治療、終わったみたいだよ」
通路を歩く人の足音を聞き取ったのか、ハヤトはそうテナに言う。
ハヤトの言葉に、テナはがばっ、と頭を上げて、部屋の扉の方を見つめる。
通路を歩く足音は徐々に大きくなっていき、そして部屋の前まで来たと思われるところ止まる。そして、
「テナ=レスターさん。アリア=フェルノさんの治療は終了しました。もう目も覚めて、いつでも面会できますよ」
「はい、分かりました!」
テナの返事を聞いたのか、その足音は再び響き始め、そして今度は徐々に小さくなっていく。
テナはハヤトの方を向き、そして言う。
「……私はアリアのお見舞いに行くけど、ハヤトさんはどうする?」
ハヤトは少し悩むような素振りを見せるが、やがてテナに言った。
「……僕はもう少し休んでから行くよ。まずはテナ一人で行ってきたら?」
ハヤトの言葉に、テナはためらうような顔をするが、ハヤトが再び促すと、頷いて部屋を駆け出ていった。
テナが出ていって、再び静寂に包まれた部屋の中、ハヤトは再び、外の様子を伺う。
先程確認した時は完全な夜の闇に包まれていた外も、今は徐々にその顔を覗かせつつある太陽から差し込む僅かな光によって、ぼんやりと明るくなっていた。
夜明けが、近づいてきたのだ。
これから後少し、時間が経てば、人が活動を始め、すぐに日常の喧騒が戻ってくる事だろう。
夜の静寂が消え去るという事が、少し寂しいような気がして、ハヤトは無言で夜明けの空を眺め続けていた。
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大きなベッドが一つ置かれているだけの、寂しい部屋の中。
ベッドに寝かされているアリアの肩には、何重にも包帯が巻かれており、痛々しい印象を見る者に与えている。
ベッドの上から、僅かに顔を見せ始めた太陽に照らされて、瑠璃色になっている夜明け空を見上げながら、アリアは小さく憂鬱そうな溜め息を吐いた。
何故、テスタでテナと再会した時に「同行する」などと言い出したのか。世界樹の中で悶々と考え続けてきたその疑問の答えは、今になって考えてみれば至極単純なものだった。
自分は、テナと仲直りして、再び二人でパーティを組みたかったのだ。しかし、実際にはテナはハヤトとパーティを組んでいて、二人で再び組むにはそのハヤトを追い出す必要があった。
どうやってハヤトを追い出すのか。それは、ハヤトよりも自分の方が頼りになるという事を、テナに見せ付けたかったのではないか。それと同時に、テナと攻略中に仲直りが出来れば、などという事も考えていたのだ。
それが実際は、魔物の手によって自分は重症を負い、そして魔物はハヤトが倒すなり撃退するなりしたのだろう。
自分は結局、今回の攻略の間は何も成し遂げていないではないか。
そんな自虐的な思考が、アリアの頭の中を占めていた。
その時、部屋の扉がコンコンと叩かれる音が、アリアの耳に入ってくる。
「……どうぞ、入ってください」
アリアの言葉を聞いて、扉はゆっくりと開いた。そして顔を覗かせてきたのは、テナだ。
アリアの死ぬほど憂鬱そうな声を聞いて、何か勘違いでもしたのか、テナはアリアに心配そうな顔を向けている。
「……どうしたのですか?」
「あ、さっきアリアの治療が終わったって聞いたから、お見舞いに来たんだけど……」
そこまで言ったテナは、アリアの顔を心配そうに凝視して言った。
「……何か、問題でもあったの?」
「いえ、何も問題はありませんでした」
アリアの言葉に、テナは不思議そうな顔をする。
「でも、何か大変な事があったみたいな顔をしているし……」
「少し、考え事をしていただけですよ」
そう返したアリアは、そのまま押し黙ってしまう。テナも同様だ。
互いに何を言うでもなく、時間はどんどん経過していく。
ここで、自分はテナに言わなければならない。ただ一言「ごめん」と言えば良いのだ。それで、全てが丸く収まる。
そう決意したアリアが口を開きかけた時、
「アリア、話があるんだけど……」
と、テナが言い出した。
何を言うつもりなんだと、アリアが戸惑っている間に、テナは話を続ける。
「この前の事があってからね、私、分かったんだ」
「……分かったって……。何がですか?」
テナの言葉が理解できていないらしく、不思議そうな顔でアリアはテナに尋ねる。
アリアの問いを聞いたテナは、ゆっくりと深呼吸をして、そしてアリアの目を真っ直ぐに見ながら言った。
「私、やっぱりアリアと一緒にやっていきたい。だから……」
そして、僅かに目を逸らし、頬を紅くしながら、テナはアリアに言った。
「……もう一度、私と組んでくれないかな?」
テナの言葉を聞いたアリアは、ゆっくりと目を見開いていき、そして目の端に涙を溜めながら、返した。
「ええ……。こちらこそ、よろしくお願いします」
そして、これまで見せた中で一番、華のある笑顔を咲かせた。
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ベッドから起き上がったハヤトは、アリアの見舞いに行くためにアリアの部屋を探していた。しかし、
「……何でこんなに広い……?」
完全に、アリアの部屋が何処にあるのか分からなくなっていた。いや、それどころか、自分が今何処にいるのかさえも分からなくなっていた。
とりあえず、分岐する通路も見当たらないため、通路を前へ前へと進んでいくが、何処にアリアの病室があるのかが全く分からない。
部屋から出る前に医師にアリアの部屋の位置を尋ねた事には尋ねたのだが、どうもその答えが胡散臭かった。そもそも、無精髭を生やし、葉巻を室内で吸いながら歩いていた辺り、本当に医師だったのかどうかが疑わしい所だが。
しばらく病院の中を彷徨い歩いていたハヤトは、やがて露台へと出る扉を見つけ、開く。
露台からは日が昇りかけ、瑠璃色というよりは茜色に近い色になった空が望める。
しばらくそれを眺めていたハヤトは、後ろからかけられた声に反応し、振り返る。
「……シラキさん、ですか?」
「……あ、フェルノさん。もう出てきて大丈夫なのですか?」
ハヤトの懸念の言葉に、アリアは微笑み、肩を軽く回しながら答える。
「この程度の怪我など、私には何の問題にもなりませんから」
肩を回しながら、アリアが小さく呻き声を上げていた事、そして腕が痛みに震えていた事を、ハヤトは見て見ぬ振りをした。
そのまま黙って、地平線から出てくる太陽を見ていたハヤトとアリアだったが、ハヤトはやがて話を切り出す。
「そういえば、テナはどうしたんですか?」
「あぁ、テナは私の病室で寝ています。疲れていたんでしょうね……」
アリアの言葉に、ハヤトはテナが自分の病室でも寝ていた事を思い出し、思わず顔に笑みを浮かべる。それを見たアリアは、気味の悪い物を見たような顔をしたが、それを言葉には出さない。
やがて、ハヤトは一番気になっていた事をアリアに尋ねる。
「……テナとは、また組むのですか?」
「え……? 聞いてたんですか!?」
ハヤトの言葉に、アリアは驚いたような声を上げた。
「あぁ、いえ。ただ、大体話の内容は予想できましたから」
ハヤトが当然のように返した言葉に、アリアは脱力したように肩を落とし、そして痛がった。
そんなアリアを心配そうに見つめながら、ハヤトは言葉を続ける。
「……それで、僕は抜けた方が良いですか?」
「いえ、テナはあなたにいて欲しいようですから。それに、私もあなたなら良いと思っています」
アリアの言葉に、「そうですか」と返しながら、ハヤトは露台から立ち去ろうとする。しかし、その途中で何かを思い出したのか、ハヤトは扉のすぐ近くで、アリアに背中を向けながら言葉をかけた。
「フェルノさん。今回の攻略、成功したのは僕だけの成果じゃない。みんなの成果です。そして、僕があの魔物に勝てたのは――」
そこで一度言葉を切ったハヤトは、アリアの方に向き直る。
「――あなたがいたから、ですよ」
そして、ハヤトは足早に病院の中へと戻っていき、元来た通路を戻っていく。
それを見送ったアリアは「ふぅ……」と小さく息を吐き、そして誰にも聞こえないような小さな声で言った。
「……今の言葉、告白みたいでしたね……」
そして、アリアは再び空を見上げる。
太陽は大分姿を現し、空は清々しいと感じるほどの青い輝きをアリアに見せている。
アリアも露台から立ち去りながら、満更でもないような顔で呟いた。
「……ただまあ、悪い気はしませんでしたね……」
『第九話 明朝』、如何だったでしょうか。
今回の話で、世界樹のはやぶさ第一章は終了となります。
これまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
これから第二章へと突入する訳ですが、私は学生の身分です。
これまでは長期休暇中だったため連日投稿が出来ましたが、さすがにこれからも同じペースを保つのはつらいです。
ですので、更新が遅れてくる事が多々あると思いますが、「まあどうでも良いか」程度に考えていただけると幸いです。
それでは、これからも世界樹のはやぶさをよろしくお願いします。




