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世界樹のはやぶさ  作者: 相良義人
第一章
6/47

第六話 黒戦士

こんにちは、作者の吉良義人です。

連続投稿五日目(?)に到達しました。

今回は書くのにすごく抵抗のあるシーンを書きました。

……上手く書けている自信が、全くありません。

……大丈夫なのかな……?

それでは『第六話 黒戦士』、よろしくお願いします。

 巨大な剣を抜き構えた魔物に、身がすくみそうな程の恐怖を感じながら、ハヤトは剣を向ける。

「先手必勝です!」

 そう言うが否や、アリアは素早く矢を手に取り、魔物の顔面に向けて射る。しかし、

「……おいおい……」

「……手で……掴んだ……?」

 魔物は、高速で迫ってきた矢を前に動じる事なく、あろう事か、その矢を剣を握っていない左手で掴み取ってしまったのだ。

 魔物はその矢を脇に投げ捨て、再び剣を構える。

「……テナ、僕があいつの気を逸らすから、その間に攻撃を仕掛けるんだ。フェルノさんはテナの援護を頼む」

 そう言い、ハヤトは一気に魔物へと接近していく。

 後ろからテナも接近してくるのを感じながら、ハヤトは魔物に向けて、剣を横向きに薙ぎ払う。

 明らかな殺意の篭もったその斬撃を、魔物は剣で受け止め、そして押し返す。

 魔物の馬鹿げた力に押し返され、体勢を大きく崩されたハヤトは、魔物が追撃を加えるべく、拳を固めて繰り出そうとしているのが見える。

「……まずっ!?」

 無理矢理体を横に飛ばして、それを避けようとするも、間に合わない。

 空気を切り裂きながら迫る魔物の拳を目の当たりにし、来るであろう衝撃に備えて身体を固くしたハヤトだったが、その腕をテナに掴まれ、引っ張られる。

 放たれた魔物の拳は、ハヤトが直前までいた空間を貫くが、ハヤトの身体には当たらなかった。

 結果、何とか魔物の拳を避けたハヤトだったが、テナと一緒に地面に倒れこむ。

 倒れこんだハヤトたちを見た魔物は、右手に握っていた巨大な剣を両手で掲げ、振り下ろそうとする。が、後ろから飛来した矢に、鎧の節目を狙撃され、後ろを振り返る。

 後ろを振り返った魔物の目に入ってきたのは、不敵な笑みを浮かべているアリア。

「どうかしましたか? 早くかかって来なさい」

 そう言って魔物を挑発しようとするアリアだったが、その顔には嫌な汗が流れている。

 先にアリアを片付けてしまおうと考えたのか、一歩踏み出そうとした魔物だったが、上げた足を、後ろから倒れている状態のハヤトに蹴り飛ばされ、大きく前に片足だけを出してしまう。

 後ろで転がっていたハヤトの方を見ると、既にテナと共に立ち上がっている。

「ここは一旦引こう! 大勢を立て直すんだ!」

 そう言って、一目散にハヤトは部屋を抜ける道へと駆け出す。

 後ろから付いてくるテナとアリアの気配を感じながら、ハヤトは喉の方に塩辛いような敗北の味を感じていた。


     ××××××××××


「……はぁ、はぁ……。何なのですか、あの魔物は!?」

 もう魔物の影も見えなくなるくらいの場所まで走ったハヤトたち。

 荒れた息を整えながら、アリアは不満を吐き出すように叫んだ。

「……っ。本当だよ……。ただ、カナレアに行くんだったら、あいつは倒さないといけないよな……」

 それに同意するように、ハヤトは疲れた様子を表しながら言い、更に言葉を続ける。

「僕としては、この後はテスタまで引き返したい――」

「当然です。またあの魔物と戦うのは、命取りだと思います」

 ハヤトの言葉に重ねるように言ったアリアに、苦笑いを浮かべながら、ハヤトは言った。

「……そうしたいんだけど、問題がありましてね……」

「……? 何かありましたか?」

 ハヤトは腰に提げてあった袋から地図を取り出す。そして、小さな声で言った。

「……………現在位置、分かります?」

 ハヤトの言葉に、アリアはたっぷりと時間を使って硬直する。そして、急いで自分も腰に提げてあった袋から地図を取り出し、確認する。ちなみに、ハヤトの持っていた地図は、昨日までテナの持っていたそれだ。

「……多分、この辺りではないかと……」

 自信なさ気に言うアリアの持つ地図を横から見て、アリアの指差す地点を見るハヤト。しかし、

「……僕は、この辺りだと思っていたんですけど……」

 とやはり、自信なさ気な様子で、アリアの地図の一点を指差す。

 アリアの指差した所と、ハヤトの指差した所。それは、互いに大分離れた所にあった。

「「「………」」」

 ハヤトとテナとアリア、揃いも揃って沈黙する。

「あ、さっきの魔物がいた部屋に行ってから、元の道を戻っていけば……」

「「それだ!!」」

 そのテナの言葉に、眼を輝かせたハヤトとアリアは、その魔物のいる辺りに目を走らせる。しかし、

「……何でこんなに道があるのですか……」

「……これでは、正しい道を見つけている間に、あいつにやられてしまいますね……」

 その魔物のいた部屋からは、無数に道が延びているのだ。ぱっ、と見るだけでも、20以上はあるだろうか。更に、その道が繋がっていた所からは、また無数に道が延びている。

 かなりの正確さを誇るその地図だったが、世界樹内部のぼんやりとした明かりでは、どの道が正しいのか、という事を調べるだけで一苦労だ。

 目の前がどんどん暗くなっていく事を感じながら、ハヤトはとある話を思い出していた。

 世界樹第21層では、いかなる危機に直面してもやってはいけない事がある。

 それは、自分の通った道を確認もせず、ただひたすら走り続ける、という事だ。

 そして、先程の自分たちの行動を思い出す。

 魔物から少しでも離れようと、道を確認しようともせず、ただ必死に走り続けていた。

 ……何て事をしていたんだ、僕は……!! と、自分の行動を悔いるハヤトだったが、いつまでもそうしていても仕方が無い。これからの方針を決めるべく、テナとアリアに話を振る。

「……それで、僕たちの出来る事は二つ。ここで野宿して、明日カナレアから出てきた冒険者と一緒に魔物を倒すか。それとも、僕たちだけであの魔物を倒すか」

 ハヤトの言葉に、テナとアリアも真面目な顔になる。

「……どうする?」

 そして続けられたハヤトの言葉を聞き、アリアは迷うような表情をしている。しかし、


「……私は、カナレアまで行きたい」


 テナが小さく、しかしはっきりとした声で零した言葉に、アリアは驚きを隠せず、テナの方を見る。しかし、テナはそれに反応せず、自分の考えを述べていく。

「……確かに、あの魔物は強かったけど、倒せないほどじゃないと思う。それに、世界樹の中で一晩過ごすのは、あの魔物と戦う以上に危険な気がする」

 テナの言葉に、ハヤトは「もっともだ」と呟く。

 世界樹の魔物は、神出鬼没の存在だ。

 出現する予兆などという物は存在しないし、何処に現れるかも分からない。そもそも、どうやって出現しているのかさえ判明していない。

 一応、世界樹の中で野宿も出来る事には出来るが、行うには相当の人数の冒険者が必要となってくる。

 いくら冒険者としての訓練を積んでいるからといって、一日以上、不眠不休で警戒を怠らない、などという事は出来ないからだ。

 テナの言葉を聞き終わったハヤトは、ゆっくりと言った。

「……というわけで、カナレアの方に強行突破する事になったけど……」

 そこまで言ったハヤトは、アリアの方を確認するように見る。

「……良いかな? フェルノさん」

 ハヤトに尋ねられたアリアは、小さな溜め息を一つ吐き、諦めたような口調で「分かりました」と言った。

 それを確認したハヤトは、テナとアリアに、新たな話をする。

「それで、あの魔物の倒し方についてなんだけど――」

 テナとアリアに向けて話しながら、ハヤトは感じていた。

 魔物との戦闘前まではあった気まずいような空気が、今では殆どなくなっている事に。

 やはり、共通の大きな敵と出会った時は、好ましくない者が相手でも、手を取り合うのだろう。そして更に良い事に、本人たちはその事を特に意識していない様子だ。

 ハヤトは、場違いだが一種の安心感のような物を感じ、少しだけ心が軽くなる。

 テナたちに戦いの方針を話し終えたハヤトは、ゆっくりと魔物のいた方向へと歩き出した。


     ××××××××××


 カナレアの街を目前に控えた所まで来たハヤトたちは、やはりそこに立っていた魔物の姿を目にする。

 巨大な剣は地面に垂直に突き刺し、魔物は穴を塞ぐような形で仁王立ちしている。

 魔物からの不気味な圧力を全身に感じながら、ハヤトたちはそれぞれの得物を手にとり、構える。それに反応する形で、魔物も組んでいた腕を解き、両手で剣を抜いて、構えた。

「……行くよ!」

 掛け声を上げ、ハヤトは一気に魔物へと接近するべく、駆け出す。そのハヤトを援護するように、アリアの矢が幾つも飛んでいく。

 アリアの矢は、一気に魔物へと迫るが、その全てが鎧に阻まれ、弾かれる。が、これはあくまでも牽制だ。

 ハヤトは魔物の目の前まで来ると、そこまでの走りの勢いの乗った突きを、魔物の胸目掛けて繰り出す。さすがにハヤトの突きを直撃するのはまずいと考えたのか、魔物はハヤトの突きの軌道上に剣を置き、突きを受け止める。

 突きを受け止められ、ハヤトの腕に尋常ではないほど大きな衝撃が襲い掛かる。

「……っ!!」

 腕に走った凄まじい痛みに、ハヤトは顔をしかめるが、魔物の反撃をかわすため、大きく後ろに飛びずさる。その直後、ハヤトのいた所を魔物の拳が貫いた。

 魔物の隙を突くように、アリアから矢が飛来し、テナも渾身の突きを見舞った。

 アリアの矢を鎧で弾き、テナの突きを腕で逸らした魔物は、そのままテナに拳を打ち出そうとする。そのテナへの攻撃を阻害すべく、ハヤトは剣を下段に構えた状態で突進する。

 攻撃を中止し、剣でハヤトの突進を止めた魔物は、剣を押し出してハヤトの体勢を崩す。そしてそのまま拳を繰り出そうとする。しかし、ハヤトを支援する形で飛来した矢から防御するため、その攻撃を中止する。

 その間に、ハヤトとテナは魔物から距離を取り、息を整える。

「……何とか、戦えているな……」

 ハヤトの零した言葉に、テナは同意するようにこくんと頷いた。

 息を整えた二人に、後ろからアリアが声をかける。

「まだ大丈夫ですけれど、矢の本数には限りがある事を忘れないで下さい!!」

「うん、分かった!」

 テナはそう言葉を返すのを聞きながら、ハヤトは再び、魔物に向かって駆け出す。

 それを見た魔物は、手にしていた剣を握り、半身になって剣を後方へと引く。機会を合わせて、ハヤトの身体を薙ぎ払うつもりなのだろう。

 それに対し、ハヤトは魔物の剣がぎりぎり届く距離まで来ると、今度は反転、後ろへと飛びずさる。それに合わせるように飛来した矢が、魔物の鎧の節目に刺さっていく。

 魔物と闘い始める前にハヤトが言った、戦いの方針。それは、攻撃を一度やったら、すぐに引いて体勢を直し、再び攻撃する。それを繰り返すという、ごく単純なものだった。

 もう何度目かは覚えていないが、体勢を立て直し、再び剣を構えたハヤトは、魔物の動きが若干鈍くなっているのを見た。魔結晶には一度も当たっていないが、身体に刺さった幾つもの矢や、ハヤトとテナの攻撃は確実に、魔物の体力を奪っているのだろう。

 動きがどんどん鈍くなっていく魔物に対し、ハヤトたちは勝利の兆しが見え始め、更に攻撃を苛烈なそれにする。


 勝利の兆しが見えたそれは、ハヤトたちに大きな希望を与えた。だが同時に、軽い油断をも誘った。


 ハヤトは、見えてきた希望に力を漲らせながら、再び魔物への攻撃を行う。攻撃を魔物に防御され、また後ろへ飛びずさったハヤトは、次の瞬間、驚きの光景を目にした。

 テナの突きを無視して、魔物が突然、飛びずさったハヤトに向けて手にしていた巨大な剣を投擲したのだ。

「――うおっ!?」

 無理矢理身体を大きく捻り、剣を避けようとするハヤト。

 しかし、剣は空気を斬り裂きながら大きく回転し迫る。

「ぐっ!」

 幸い、剣の柄がハヤトの左肩を痛打するに留まったものの、ハヤトの左肩には鈍い痛みが走る。だが、動かせないほどではなかった。しかし、

「……えっ?」

 大きく回転しながら飛んでいく剣の軌道上には、弓を構えながら大きく目を見開くアリアがいた。

 恐らくはハヤトの姿と剣が重なり、剣が飛ばされたのが見えなかったのだろう。

 空気を斬り裂き、高い音を上げながら高速で迫ってくる剣に、アリアはなす術無く、ただ見つめているしか出来ない。

「避けてアリアっ!!」

 テナが悲鳴のような声を上げるが、もう剣は避けられるような距離にはない。

 そしてハヤトは見た。


 剣がアリアの肩を大きく斬り裂き、赤い花のように真紅の鮮血を辺りに飛び散らさせたのを。


 剣は赤い飛沫を撒き散らしながら飛んでいき、地面にその先端が突き刺さる。

 そして、アリアは剣の勢いに押され、後ろに飛ばされ、そして地面に叩きつけられた。

「……嫌……」

 テナの口から、小さく言葉が漏れ、そして

「嫌ああぁぁぁーーー!!」

 今度は紛れも無く、断末魔のような大きな悲鳴が上がった。

『第六話 黒戦士』、如何だったでしょうか。

どうでも良い事ですが、僕はヒロインが傷つく描写を書く事にもの凄い抵抗があります。

……主人公なら、全然構わないんですけどね……。

毎回書いている事ですが、気になった事、感想、批評などは大歓迎ですので、お気軽に書いてください。

それでは、次回の更新もよろしくお願いします。

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