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世界樹のはやぶさ  作者: 相良義人
第一章
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第五話 遭遇

こんばんは、作者の吉良義人です。

暇なため、連続投稿をやっています。一週間、いけるかな……?

ところで最近、OLの正式名称がきになりました。

office ladyで良いのかな……?

どうでも良いですね、反省しています。

それでは第五話、よろしくお願いします。

 翌朝、清々しいほどに晴れ渡った青天の下、ハヤトたちはテスタの入り口に向かって歩いていた。

 世界樹の葉を静かに揺らしながら吹いていく穏やかな風と、雲一つない空から差し込む暖かな日の光が、道行く人の心を明るく開放していくのに対し、ハヤトの心の中は、開放的なそれとは言えなかった。

 それは何故か、という問いに持ち合わせている答えは唯一つ。世界樹攻略が、憂鬱な時間となる可能性が高いからだ。

 「はぁ……」と大きな溜め息を一つ吐いたハヤトは、テスタの入り口に立つ少女の姿を遠目に認める。

 その身体には、昨日会った時には無かった鎧を身に付けており、その手には巨大な弓、腰には数多の矢が収められている矢筒が吊るされている。

 普通に立っているだけでも優雅に見えるその少女、アリアは、世界樹へと向かっていく冒険者の注目を集めており、ハヤトから急速に声をかける気を削いでいく。

 横に立っていたテナの顔を見る限り、それはテナも同じようだ。しかし、その理由までが同じとは限らないのだが。

 さてどうしたものかと立ち尽くしていたハヤトたち。だが、そんなハヤトたちに気が付いたアリアは、大きな声でテナたちを呼ぶ。

「やっと来ましたか! 早く来てください!」

 アリアの声のせいで、余計な注目の視線がハヤトたちに突き刺さる。

 (あの男、あんな綺麗な娘を待たせているのか。というかもう一人一緒にいるぞ。どういうつもりだあの野郎!!)とでも言いたげな、敵意の多分に含まれた視線を受けて、かなり居心地悪そうにしながらハヤトはテナを連れてアリアの下に歩いていった。

 ハヤトたちが来た事を確認して、アリアは言い始めた。

「……やっと来ましたね。まったく、私をどれだけ待たせる――」

 アリアの言葉を遮る形で、ハヤトは呆れたような様子で言葉を重ねる。

「……いや、悪かったとは思うけれど、この仕打ちはあんまりだと僕は思う」

「……? 何のことですか?」

 ハヤトの言葉に、目を白黒させながら首を小さく傾げるアリア。

 どうやら本気で自覚が無いらしいという事を思い知ったハヤトは、小さく溜め息を吐きながら、世界樹の方へと歩き出す。

 背後からアリアの愚痴がぶつぶつと聞こえてくるが、全て無視して歩き続ける。これは無視しなければ、自分の精神力がもたないと判断したためである。

 攻略の始まる前から精神力を削られまくったハヤトは、攻略が無事に終了するのか、一抹の不安を抱いていた。


     ××××××××××


 発光する鉱石や植物によってぼんやりと照らされている世界樹第15層の中。

 特に魔物も見当たらず、ただ歩いていくだけの作業が辛くなってきていたハヤトは、自分よりやや後ろを歩くテナの方を見る。

 テスタまでの時は結構積極的に話してきたテナだったが、今は黙りこくっている。テナの後頭部で結われた髪が、心なしか萎れているように見えるのは、ハヤトだけではないだろう。

 どうにも、アリアと集合した時から、パーティの間に気まずい空気が流れているようにハヤトには感じられ、どうも落ち着かないのだ。

 段々と胃が痛くなってきた頃、ハヤトはアリアの弓に刻まれている、一つの紋章に気付く。

 エーレンにおいて大きな勢力を持つ貴族、フェルノ家の家紋に似ているが、少しだけ違うそれは、フェルノ家が中心となって製作された品に刻まれる、一種の証のような物だ。

「その弓、フェルノ家で作られた……」

 ハヤトがぼそりと零した言葉に、アリアはしっかりと反応を返してくる。

「はい。あなたの言った通り、この弓はフェルノ家、つまりは私のお父様が中心になって製造した物です」

 そう言ったアリアの顔は、何処か誇らしげだ。

 余程、アリアの父親の、フェルノ家頭首の事を敬愛しているのだろう。

 そんなアリアを微笑ましく思いながら見ていたハヤトだったが、ふと自分の腰に提げられている剣を目を走らせる。

 細身な長剣だが、しっかりと幾重にも渡って鍛錬されたため、丈夫な品として完成当初は仕上がっていたそれも、今では幾多もの使用によって刀身が磨り減り、鈍い輝きを放っている。

 そろそろ剣も新調しなくちゃなぁ……。と考えながら、ハヤトの頭に一つの疑問が浮かんだ。

「……そういえば、フェルノさんはテスタまで一人で来たんですよね?」

 突然声をかけられたアリアは、不思議そうな顔をしながらハヤトに言葉を返す。

「……? そうですけど、それがどうかしましたか?」

「……いや、その武装では、テスタまで来るのも苦労したんじゃないかなと思ったんです」

 ハヤトの視線の先にあるのは、アリアの握っている弓。通常はパーティの後方支援のために使われる武器だ。そのため、弓を持っている者は一人で世界樹攻略をしようとはなかなか思わない。

 そう言われたアリアは、軽く苦笑いをしながら、ハヤトに答える。

「確かに危険ではありましたけど、この辺り程度ならば、警戒を怠らなければ問題はありませんでしたわ」

 さも当然のように答えたアリアだったが、ハヤトはアリアの言葉に目を丸くしていた。

 世界樹の中は視界が不鮮明である上、入り組んだ構成をしている所が多いため、常に警戒をしているとなると、尋常ではないほどの精神力を削っていく事になる。

 要は、アリアのやってきた行為が普通の人間ならば無茶の類として捉えられるそれだという事だ。

 アリアとの話も尽き、再び気まずい空気が流れ出した事を感じたハヤトは、ちらっ、と後ろにいたテナの方を見る。すると、テナは先程見た時よりも、明らかに表情暗くして俯いてしまっている。

 まずい話題を出してしまったなぁ……。と反省したハヤトは、口を噤んで歩く事に専念する。

 その時、低く獰猛な唸り声を上げながら、暗がりの中から8匹程の魔物が現れる。

 そのいずれも、二足歩行の狼のような風貌をしており、額の中心に、真紅に輝く魔結晶が埋め込まれている。

「……さて、ようやく魔物が出てきたな……」

「あなたの実力、見せてもらいますよ。シラキさん」

 魔物が出てきたにも関わらず、ほっ、っとしたような息を零したハヤトは、ゆっくりと腰の剣を抜き、中段に構える。そのハヤトと並ぶ形でテナも出てきて、剣を構える。

 アリアは背中を壁に預ける形になるように後退する。

 弓という武器は「防御」という手段が使えないため、その立ち回りは相手を一切近づけないか、相手の攻撃の全てを避けきるかのどちらかとなる。

 今回、アリアは相手を近づけない、という戦い方をする事にしたのだろう。

 魔物たちは一斉に飛び掛ってこようとするが、アリアが矢筒から引き抜き、流れるような動作で放った矢が、額に埋め込まれている魔結晶に命中。砕かれはしなかったものの、魔結晶は欠け、魔物は大きく仰け反る。

 その大きな隙を見逃さず、アリアは続けざまに三本の矢を射て、その魔物に止めを刺す。

「おぉ……」

 アリアの弓の腕前に、ハヤトは感心したような声を上げるが、他の魔物が飛び掛ってきたため、それに対処せざるを得なくなる。

 ハヤトを斬り裂こうと、鋭く迫ってくる魔物の爪を、一旦後退する事で避ける。そして魔物が体勢を立て直す前に、身体全身を使った突きを、魔物の中心を目掛けて放つ。

 ハヤトの、全体重をかけた突きは、魔物の腕を貫き、胸を貫通させる。

 そのままの勢いでその魔物に体当たりを食らわせたハヤトは、後ろの方へと倒れこんでいく魔物の動きに合わせて、剣を引き抜く。

 倒れた魔物は、魔結晶は砕かれていないものの、身体に大きな穴が空き、もはや戦闘不能状態だ。

 テナの方は何やら手こずっていた様子だったが、アリアの援護射撃もあって無事に倒せたようだ。

 いきなり仲間を三匹も殺された魔物の方は、さすがに警戒をあらわにするが、それはもはや手後れと言って良いほどだった。

 アリアは一気に矢を射て二匹を始末する。そしてハヤトとテナは、混乱している魔物を一匹ずつ始末した。

 仲間を全て殺され、魔物は恐れをあらわにして逃げ出そうとするが、アリアが放った矢に背中を射抜かれ、地に倒れた。

「……ふぅ。これで全部片付いたか」

 戦闘不能状態ではあるものの、魔結晶は砕かれていなかった魔物の魔結晶を砕いて歩きながら、ハヤトは小さく溜め息を吐いた。

 全ての魔結晶を、必要最低限の力で砕いたハヤトは、まだ固体として残っている魔結晶を拾っていく。少しでも固体として残っていれば、街に着いた時に高値で売り払う事が出来るからだ。

 魔結晶の欠片を拾い終わったハヤトは、立ち上がってテナとアリアの様子を伺う。

 すると、魔物との戦闘以前まで流れていた、気まずい空気が再び流れ出していた。

 テナは暗い表情で俯き、アリアはテナの方をちらちらと見ている、という状態だ。

 小さな溜め息を吐いたハヤトは、「もう行こうか」と二人を促し、足早に歩き始めた。


     ××××××××××


 世界樹第21層の中。ここをもう少し歩いていけば、世界樹の枝の上に設立された都市の一つ、カナレアに到着するという所である。

 前を歩いていくハヤトの姿を見ながら、アリアはずっと心の中でテナの事を考えていた。

 何度もテナに話しかけようと心の中で決心し、そして声をかけようとするが、ちょうどその時にハヤトが現在地を確かめてくる。それに答えているうちに、テナに声をかける機会を失い、そしてまた心の中で決心して――、繰り返しが延々と続いている。

 そもそも、テスタでテナたちと再会した時に「世界樹攻略に同行する」などと言い出したのも、その場の勢いに似たようなもので、後から考えてみても、何故そんな事を言ったのかが思い出せないのだ。

 だが、この世界樹攻略の間に何らかの行動を起こして、テナとの関係を変えなければならない、という気がしていた。

 再び、テナに声をかけようと決心したアリアは、口を開きかける。が、

「……おっ? 明かりが見えてきたぞ……」

 ハヤトの言葉に、思わず開きかけていた口を閉じて前の方を確認してしまう。

 いつの間にやら大きな広間のような所に出ており、確かにハヤトの言う通り、先の方に小さな明かりが漏れてくるのが分かる。

 それを確認した途端、ハヤトの歩く速度が少しばかり速くなった。やはり、外に出られる、という事は大きいのだろう。

 いつもなら、自分もそれに便乗して足早に抜けていきたいところなのだが、今回は訳が違った。

 世界樹から抜ける事よりも、テナとの関係の修復を早急にこなすべきだと、心は言っていた。しかし、一体何を言えば良いのかが、さっぱり分からなかった。

 そうこうしている間に、明かりはどんどん近づいてくる。

 とりあえず、行動だけでも起こしておくべきだと判断したアリアは、口を開く。

「あ――」

「……止まって」

 が、一言も言えぬままに、ハヤトに言葉を重ねられる。

 ハヤトに反論を返そうとしたアリアだったが、とある事態に気がついた。

 外へと繋がる明かりだが、そのすぐ脇の暗がりに潜むような形で、何かがいるのだ。そして、その何かからは途轍もなく嫌な予感が感じられた。

 自然と、弓を握っている左手には力が入り、右手は矢筒の方へとのびていた。

 ハヤトとテナも腰の剣を抜き、構えながらじりじりとその何かへと近づく。

 その時、その何かは動き出し、そして外からの明かりに照らされるような形で出てきた。

「…………っ!?」

 思わず息を呑んだハヤトたちの前に出てきたそれは、全てを飲み込むような漆黒の鎧を纏った大柄な戦士だった。

 いや、その身体に纏っている気配は、明らかに人の持てるそれではない。恐らくは、人間の戦士と同じような形をした魔物なのだろう。

 漆黒の鎧は、その魔物の身体全てを覆い隠し、異様な雰囲気を纏わせている。そして、魔物の手には巨大な両手剣が握られていた。

 刃渡りはハヤトの身長以上はあると言え、その刀身の放つ濁ったような鈍い輝きは、その剣に獰猛で凶暴な印象を与えていた。

「………」

 その魔物は唸り声一つ上げず、更には息をするような音さえも聞こえてこない。

 明らかに他の魔物とは一線を画する雰囲気を纏っているそれに、ハヤトたちは背中に嫌な汗を流す。

「………これは、本格的に危険だぞ……!」

 ハヤトの言葉を合図にしたかのように、その魔物は剣を身体の前で構えた。

『第五話 遭遇』、如何だったでしょうか。

個人的には、テナの台詞が少なくなった事が気になっているのですが……。

……大丈夫かな……?

感想や批評その他諸々、お気軽に書き込んでください。

それでは、また次回の更新もよろしくお願いします。

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