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世界樹のはやぶさ  作者: 相良義人
第一章
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第三話 実戦

どうも、吉良義人です。

何か無理をして書き進めてみたら、二日連続投稿が出来てしまいました。

こんなペースでの投稿は……身体にきついものがありますね……。

では前書きもこの位にして、本編をどうぞ、よろしくお願いします。

 世界樹の根元に広がる街は、エーレンと呼ばれている。

 エーレンの街は、世界樹を囲むようにして出来ている巨大な街で、その内部構造は大きく分けて5つになる。

 一般人や冒険者の住む「居住区」、商人たちが商売をする「商業区」、貴族たちの屋敷が立ち並ぶ「特級区」、冒険者を志す若者や、世界樹の研究をする学者の住む「学園区」。そして、ウェルン教の信者が教会などを立ててきた「神殿区」だ。

 世界樹攻略成功の祈願をすべく、教会へとやって来たハヤトたちは、その神殿区にいた。

 神殿区の中でも特に大きなエーレン大聖堂と呼ばれる教会の前に来たテナたち。テナはそのまま教会に入ろうとするが、ハヤトは教会の前で立ち止まった。

「……? どうしたの、ハヤトさん? 早くお祈りしちゃおうよ」

 急に立ち止まり、そのまま動こうとしないハヤトに、テナは疑問の声をかける。

「……ごめんテナ。僕は信者じゃないから。ここで待っているよ」

 ハヤトの言葉に、テナは再び声をかけようとする。ウェルン教には信者でなければ入ってはいけないなどという規則は存在しないからだ。

 しかし、ハヤトの顔を見ているうちに、テナはその気持ちが薄れてくるのが分かった。

「……分かった。じゃあちょっと待ってて」

 そう言い残して、テナは教会の中へと駆け込んでいく。

 その後姿を見送ったハヤトは、教会の壁に背中を預け、世界樹を見上げる。この教会からは、ちょうど良い感じで世界樹を拝めるのだ。

 世界樹は途中で幾つもの枝を生やしながら、その巨大な幹を伸ばしており、遥か空の高い所にその頂が存在している。頂には濃い緑色が深く茂っており、枝の先には街のようなものがあるのが分かる。

 枝の先に出来ている街の中で一番低い位置にある街。それが今日の目的地、第10層に存在するテスタだ。

 それをしばらく見つめていたハヤトは、やがて世界樹の頂を見つめ、小さく呟く。

「……神の住む樹、世界樹か……」

 そして何か古い記憶を思い出そうとするように、ハヤトは目を閉じた。


     ××××××××××


 あの後、教会から出てきたテナと合流したハヤトは、世界樹の前まで来ていた。

 教会からは全貌を確かめることも出来た世界樹も、その目の前まで来ると頂などは見えない。深い緑色が茂っていることが分かる程度だ。

 世界樹の根元にぽっかりと空いた穴からは、かなり不気味な空気が流れ込んでくる。この穴の中を通っていって、冒険者たちは世界樹の頂を目指すのだ。

 一般人なら怯えるであろう不気味な空気も、冒険者にとっては慣れ親しんだものでしかない。一部の熟練の冒険者にとっては、その雰囲気がかなりの興奮を促すらしい。とはいえ、やはりこういった空気を目の当たりにすると緊張するものである。

「……さて、そろそろ行くか」

 ハヤトの声に、テナはこくんと頷く。

 来る前まで見せていた明るい笑顔は消え、その顔には緊張が浮かび、表情は固くなっている。

「あまり固くなるなよ」

 ハヤトの言葉に、テナは顔をぺたぺたと触り、揉みほぐそうとする。そんなテナの様子が何となくおかしかったハヤトは、小さな笑みを浮かべる。それを見たテナは照れたような笑みを浮かべ、頬をかく。

 ここまでの流れで緊張が大分ほぐれたのか、先程までよりも断然余裕のある表情で、ハヤトとテナは世界樹の中へと入っていった。

 世界樹に入ったハヤトたちの目にまず入ってきたのが、ぼんやりと発光する数多の石や苔、虫だ。

 世界樹の中は当然洞窟のようになっており、光のような物はほとんど入ってこない。だが、こういった発光するもののおかげで、冒険者は比較的明るい中で、攻略をする事ができるのだ。

 その中を歩いていくテナの手には、一枚の地図があった。

 この地図には世界樹内部の構造が図示されており、1層ごとの面積が異常な程広い世界樹の中では必需品となっている。

 世界樹攻略では必需品なその地図だが、当然、冒険者が攻略を済ませていない所は書かれていない。

 この世界樹内部の地図を作るための測量などを行うのは、世界樹攻略最前線で戦う冒険者たちである。

 未知の地を歩いていく、という行為は危険であるため、世界樹攻略には本当の実力者しか集まらない。

 しばらく歩いていたハヤトたちだったが、その目の前に、数匹の、犬のような形をした動物が現れた。が、普通の犬にしてはその目は酷く濁っており、口からぼたぼたと涎を垂らしている。

「グルルル……」

「……魔物か……」

 そう低く呟いたハヤトは、腰の剣を抜き、その魔物に構える。そんなハヤトに遅れて魔物の存在に気が付いたテナも、急いで地図を懐にしまい、剣を抜いて構える。

 既に戦闘態勢を整えたハヤトたちに向かって、一匹の魔物が飛び掛る。

 その動きは速かったが、目を見張るほどでもない。

 冷静にそれを見切ったハヤトは、魔物が飛び掛ってくるのに合わせて足を振り上げ、魔物の顎を蹴り上げる。「きゃうん」と悲鳴を上げた魔物の声を無視し、魔物の顔面から腹部にかけて剣を斬り下ろし、魔物の息の根を止める。その途中、ハヤトの手に脆い石を砕くような手応えが伝わり、その感覚にハヤトは少し笑みを浮かべる。

 ふと、もう一度魔物の方を見ると、もう一匹がテナの方へと飛び掛っていくのが見えた。

 が、テナはそれを軽くいなして、斬り伏せた。

 この調子なら、テナの方も心配ないだろうと判断したハヤトは、再び、飛び掛ってきた魔物を斬り伏せていく。


     ××××××××××


「……よし、魔物はこれで全部か。早く行こう、テナ」

 そう言ったハヤトは、すたすたと歩き始める。

 魔物、というのは、世界樹の中を闊歩する存在で、その身体には魔結晶と呼ばれる石が埋め込まれている。

 この魔結晶についてはまだまだ謎の多い部分があり、研究者たちの中では一つの課題となっている。これまでの研究で分かっていることといえば、魔結晶の硬度と魔物の強さは比例するような関係にある事、ただそれだけだ。

 というのも、魔結晶が万全の状態で研究者の元に届けられない事が関係している。

 魔物とは魔結晶を核として誕生した存在だ。そのため、その存在を消滅させるには、魔結晶を割るなり砕くなりする必要があるのだ。

 当然、魔結晶の欠片を研究者たちに届けるのは、冒険者の仕事の一つだ。

 この魔結晶は高値で取引されているため、冒険者の私財が潤っている理由は、ここにあったりする。

 すたすたと歩いていくハヤトの後姿を見ながら、テナは一つの疑問を抱き始めていた。

 エレックの話では、ハヤトは凄腕の冒険者だったらしい。そう呼ばれていた時期から2年間、普通の人間として暮らしていたとしても、今魔物と戦っていたハヤトの腕は普通すぎた。

 確かに、危なげも無く魔物を葬っていくハヤトの腕前は、冒険者としては十分なそれだ。しかし、だとしても平凡すぎる強さではなかったか。

 本当に、ハヤトはエレックの言う通り、凄腕の冒険者だったのだろうか? 本当は、自分がエレックに騙されているのではないか。

 そんな疑問がテナの頭の中を駆け回り、テナは立ち尽くしていた。そのため、

「…………テナ……おい、テナ?」

「……へ、何?」

 いつの間にか戻ってきていたハヤトの言葉を聞き逃し、テナは思わずハヤトに聞き返す。

 「ヘ? ってお前なぁ……」と、何やら呆れていたハヤトは、再びテナに尋ねる。

「だからな、現在地がどこか、教えてくれないか?」

「あ。うん……」

 ハヤトの質問に対し、懐から地図を取り出して、現在地を答えようとするテナ。しかし、そこでテナの動きが停止した。

 先程まで頭の中を駆け巡っていた雑念のせいで、自分たちがどう通ってきたのかが思い出せないのだ。

「……テナ?」

「あ、うん。えっとね……」

 ハヤトに事の真実を伝えようと、意を決したテナ。

「……わ……」

「……わ?」

「……分かんなくなっちゃった」

 そう言った後、可愛らしく、頭を横から小突く仕草をして「てへっ」とまで言うテナ。

「………」

「………」

「………じゃ……」

「……?」

 その場を包んだ長い沈黙の後、目を伏せながら小さく呟いたハヤトの言葉が聞き取れず、小さく首を傾げるテナ。

 その直後、世界樹の中を、ハヤトの雷のような大声が轟き、響き渡る。

「『てへっ』じゃないぞーーー!!」

「わーーっ! 本当にごめんなさいーーっ!!」


     ××××××××××


 日はすっかり沈み、空は夜の色にどっぷりと沈んだ頃。

 世界樹第10層から延びる枝の先に出来ている街、テスタの入り口に、二人分の人影が現れた。背の高い者と、低い者の二人だ。どちらも、その姿から疲れたような雰囲気が滲み出している。

「……もう大分暗いぞ……」

 恨みがましい声を上げたのは、背の高いほうの人影、ハヤトだ。その声を聞いて縮こまっている背の低いほうの人影は、当然テナだ。

「……すみません」

 テナの、もはや涙声となりつつあるその声を聞いたハヤトは「はぁ……」と、大きなため息を吐く。

「……本当なら、暗くなる前には着くはずだったんだけど……」

 そう言ったハヤトは、再び「はぁ……」と大きなため息を吐き、後ろで縮こまっているテナの方を向く。

「……もう夜になったからね。早いとこ、夕食にしようか」

 ハヤトの言葉に、テナは大きく頷く。

 そのまま二人がテスタの食堂の方向へと歩き出そうとした時、

「……あら? そこにいるのは、テナ?」

 という少女の声が、二人の耳に入ってくる。

 「うん?」と言いながらテナの方を見るハヤトに対し、テナはその声の主の方を見つめて動かない。


「……アリア?」


 テナに声をかけた少女、アリアは、テナの言葉に大きく頷いた。

「世界樹のはやぶさ」の弾三話、如何だったでしょうか。

割と頑張ってみているつもりですが、まだまだ至らない所は無数に存在していると思いますので、ご指摘などありましたら、感想として書き込んでいただけると幸いです。

では、今回はこのくらいで切り上げます。

次回の更新の際もご一読して頂けると幸いです。

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