第二話 結成
まず初めに謝罪を。
「作品の投稿は一週間ごと」とか第一話の後書きで書きましたが、不定期更新になりそうです。
……現に、1月8日になっていないのに、第二話を投稿していますから……。
改めて書かせて頂きますと、作品の投稿は不定期。しかし、少なくとも一週間に一話投稿という形にさせて頂こうと思います。
それでは第二話、よろしくお願いします。
「私と、パーティーを組んでください!」
そう言って頭を下げたテナに、ハヤトは驚きの混じった顔を向けていた。
冒険者という職業は、その仕事の関係上、その立場はかなり高いものになる。そのため、冒険者が一般の人間に頭を下げるといった事は、珍しいものなのだ。
「……テナ=レスターさんと言いましたか、頭を上げてください」
ハヤトの言葉に従って頭を上げたテナは、ハヤトのことを真剣な顔で見つめてくる。
思わずテナと目を合わせてしまったハヤトは、テナの瞳の奥に不安と、焦りのようなものが見えた気がした。それを認識すると同時に、ハヤトは強い既視感を感じる。だが当然、ハヤトとテナは初対面の間柄である。
「……どうして、僕となのですか? ……僕なんかより適任の冒険者は、他にもたくさんいるでしょう?」
自分の頭をガンガンと鳴らすその既視感に眉間をしかめながら、ハヤトはゆっくりと言葉を紡いだ。
ハヤトの言葉に少し俯いていたテナは、小さく呟いた。
「……他の人たちには、みんな断られました……」
そう言いながら、テナの表情はどんどん沈んでいく。それを見たハヤトの心の中には、どこか居心地の悪い感情が芽生えていた。いうなれば、罪悪感、といった感情に近いものだ。
テナの言葉から察するに、自分は最後の砦か、もしくはそれに準ずる物なのだろう。となれば、かなり断り辛くなってくる。自分がテナの頼みを無為に拒めば、少女は必ず落胆し、その顔を曇らせるであろうから。
本当につい先程出会ったばかりの少女だが、この少女を悲しませる事を、自分の心は防ごうとしていた。先程感じた既視感が、その感情を生み出したのだろうか。
そんな事を考えながら、ハヤトはテナに尋ねる。
テナの言葉だけでは、自分の所に来た完全な理由にはなっていない。
「……僕が冒険者だった事は、誰から聞いたんですか?」
「……エレック雑貨店の、店主、エレック=オリマーからです」
テナの告げた名前を聞いた瞬間、ハヤトは自分の頭を抱えて、座り込みたくなった。
エレック=オリマー。かつてはハヤトの仲間のものであったその名前は、ハヤトに懐かしい感覚を味あわさせる。エレックであれば、自分の住所を伝えることなどは造作も無いだろう。
だが、エレックは若干、間の抜けたところのあった青年であったが、それ以上に慎重な性格だった。そんな彼が、容易に人の、しかもかつては仲間だった者の名前を伝えるとは思えない。
なんらかの、エレックの思惑が存在すると考えていいだろう。
テナの頼みを聞くつもりは無かったが、そこにエレックが絡みだすならば話は別だ。
はぁ、と息を吐いて、ハヤトはテナに告げる。
「分かりました。あなたの言う通り、あなたとパーティーを組みましょう、レスターさん」
ハヤトは頼みを断るものだと思っていたのだろう。
ハヤトの答えを聞いたテナの表情はどんどん明るくなっていき、顔に大きな花が咲いた。
「ありがとうございます!」
テナの言葉を聞きながら、ハヤトは一言、付け足そうとする。
「……レスターさん、あなたも知ってい――」
「あ、私の事はテナ、で呼んでください。苗字で呼ばれるのは慣れていないんです。それと、私に敬語を使うのも。すごくむず痒いです」
テナはにこにこと、そう言った。人に苛立ちを与えない、とても気持ちの良い笑顔だと素直に感じる。先程までの沈んでいた表情が噓みたいだ。
他人を下の名前で呼ぶのはいつぶりだろうか、という事をぼんやりと考えながら、ハヤトは改めてテナに告げた。
「……テナ。お前も知っているだろうけど、僕は2年前に引退している。だから、あまり期待はしないでくれよ?」
「はいはーい。分かりました」
……本当に分かっているのだろうか? と、ハヤトの言葉を聞いても少しも表情を変えず、相変わらず笑っているテナに、ハヤトは若干の不安を感じる。
とりあえず話はまとまったため、ハヤトはテナを戸口まで送っていく。
「……今日はもう夜になるから、明日の昼頃にエレックの店で集合にしよう」
「はい、分かりました。じゃあ私は帰りますね」
その言葉と綺麗な笑顔を残して、テナはあっという間に去っていく。
ややそんなテナの勢いに呆然としながら、ハヤトは自室に戻る。その途中、ハヤトは心の中で自問自答をしていた。
結局、何故、自分はテナの頼みを引き受けたのだろうか? エリックの知り合いだから? だがそれも動機としては弱い。ただ、あのテナという少女を放っておくのが、何となく躊躇われたのだ。
自分の感情に、これまでに無いほどの戸惑いを感じながら、ハヤトは自室のベッドに倒れこんだ。
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世界には、一本の巨大な樹が立っていた。
頂上が地上からでは見えないほど大きなその樹は、人々からは「世界樹」と呼ばれていた。
その世界樹は不思議な事に、人の持てる力の全てを尽くしても、皮に傷一つ付けることが出来なかった。
また世界樹の中に、地上から入れる空洞を見つけた人間は、その空洞を探検し、そして幾つもの発見をした。
その空洞は、世界樹の上へ上へと続いている事。そして、その空洞の中には、不思議な力を持った数多の動物が生息しているという事だ。
その動物を人間は「魔物」と呼び、多くの人々は世界樹の空洞を通っていく事で、世界樹の上へ行こうと試みる者が多数、現れた。
彼らは互いに手を取り合って、世界樹の攻略を現在まで続けている。この攻略者たちは、一般的に「冒険者」と呼ばれるようになった。
人類に理性が生まれ、互いに手を取り合うようになってから長きに渡って攻略され続けていたが、未だに世界樹の頂上を見てきた者は、誰もいない。
いつしか、世界樹の頂上は神の住む神聖な領域である、という話まで生まれるようになったのである。
××××××××××
ハヤトと出会った次の日、テナは昼前にエレック雑貨店へと向かっていた。
ハヤトの言う「昼頃」を、一般人が昼食を食べる頃の時間と認識したテナは、ハヤトを待たせまいと、集合より早く到着するようにしたのだ。
テナがエレック雑貨店の前まで来たとき、中から賑やかに談笑する声が聞こえてきた。
エレックの店は、お世辞にも客入りの良い店とは言えない。要はあまり繁盛していない店のため、談笑の声が聞こえてくるのはかなり稀であったりする。
誰か来ているのだろうか、と思いながら店の扉を開けたテナは、予想外の光景を目の当たりにする事となった。
エレックとハヤトが、楽しげに談笑していたのだ。
いや、エレックとハヤトは2年前までチームを組んでいたのだから、こういった光景はあっても当然なのだが、ハヤトよりも早く来ているつもりだったテナにとっては、こういう光景は予想外のものなのだ。
「おっ、テナちゃんか。思った通りの時間に来たな」
店に入ってきたテナに気付いたエリックが、挨拶をしてくる。
それに気が付いたハヤトも、テナを視界に納めると、軽い会釈をしてきた。
「あ、こんにちは……」
自分の方がハヤトよりも遅かったのが、少し悔しいような気がするが、約束通りに来てくれた事が少し嬉しいような気もし、若干複雑な気持ちになっていたテナは、はっきりと返事を返す事が出来なかった。
その時、目に入っている光景に若干の違和感を感じたテナだったが、すぐにその原因が判明する。
ハヤトが武装していたのだ。
テナの武装と同じく、普通の服の上から、体の急所のみを覆うタイプの鎧を身につけている。腰には、やや細身と感じられる程度の剣が一振り、吊るされている。
一目で使い込まれていると判断できる鎧を身につけたハヤトの姿は、歴戦の冒険者だと言われれば納得できるだけのそれになっていた。人である以上、身につけている物が変わってくると、その印象も大分変わってくるものである。
そんなどうでもいい思考を外に追い出しつつ、テナはハヤトに話しかける。
「すみません。待たせましたか?」
「いや、僕が好きで早く来ただけだから、気にする事はないよ」
本当に、昨日のときは接客のための柔らかい言葉だと感じていたのが、鎧を着るだけで頼れるリーダーのような感じを漂わせるのだから、身につけている物というのは重要である。
「……それで、今日は第何層に行くんだい?」
「あ、今日はとりあえず第10層のテスタまで行こうと思います」
テナの言葉に、ハヤトは「それが妥当なラインか」と呟き、そしてテナに対して頷いてみせた。
世界樹の内部には途方も無く巨大な空間が広がっているが、その空間が幾つもの巨大な板のような物で仕切られているのだ。
これを便利に思った人は、その仕切られた空間を下から順に第1層、第2層、第3層……、と名称を付けていったのだ。
そして、世界樹はかなり巨大だとは言っても、やはり樹であるため、無数の枝が存在する。
世界樹の内部から行く事の出来た枝の上に、人は世界樹攻略の拠点となる街を幾つも築いてきたのだ。
つまり、第10層のテスタは、世界樹第10層から行く事の出来た枝の上に築かれた街なのだ。
攻略の方針がまとまったハヤトとテナは、エレックに別れを告げて、店の外に出る。
「……さて、あまりゆっくりしていても仕方が無いからな。そろそろ世界樹に行くか」
「……え? 教会には行かないんですか?」
テナから返された疑問の声に、ハヤトは少しの間、ポカンと間の抜けた顔をした後、
「……あぁ。そうだったな、悪い。俺は信者じゃないから……」
と、思い出したように言った。
そんなハヤトの様子に不思議そうな顔をするテナだったが、やがて納得したのか、教会の方へと歩き出した。
冒険者という仕事は必然的に命をかける事となるため、大抵の冒険者はウェルン教と呼ばれる宗教の信者となって、教会へと赴き、攻略から無事に帰還できることを祈願していくのだ。
ただ、それも冒険者全員が信者というわけでは無いため、ハヤトは信者でない冒険者の一人だったのだとテナは解釈したのだろう。
教会の方へと歩いていく二人を、特に客も来ないため暇なエレックは見送る。
「……教会、か……」
そう呟いたエレックの声は、街の人々の喧騒の中に飲み込まれ、ハヤトたちに届くことは無かった。
今回は特に書く事もないですが、小説に関しての批評や感想、気になったことなどは大歓迎ですので、どんどん書いて頂けると幸いです。
それでは、この「世界樹のはやぶさ」を今後も引き続き、よろしくお願いします。




