第一話 出会い
初めまして、この作品の作者の吉良義人です。
今回の作品は、僕にとっての初投稿となります。
まだまだ至らないところがあるとは思いますが、よろしくお願いします。
新聞や食器、パンといった物が所狭しと机の上や棚に置かれた部屋の中。それぞれの品の前に値札がある事から考えるに、恐らく雑貨店かそれに類似した店だろう。
その雑貨店の中、一人の少女が不機嫌そうに、机の前に置かれている椅子に腰かけていた。
その少女は普通の服の上から、人体の急所となる、胸や腹部といった所のみを覆う鎧を身につけている。また、その腰には細身の剣が吊るされており、人目で戦う事を生業としているのだと分かる。
顔は美しく整っており、目が大きいこともあって人に活発そうな印象を感じさせる。彼女の後頭部で一つに束ねられた栗色の髪の毛は子馬の尻尾を連想させ、活発そうな印象を強めている。
普段なら明るい笑顔を浮かべているのであろうその顔を、少女は現在、不機嫌そうにしかめ、唇を尖らせていた。
そんな少女に苦笑いを浮かべた男が、部屋の奥から出てくる。
不機嫌そうにしている少女よりもよっぽど戦いに向いていそうな厳つい顔と、刈り上げたのか、光沢を放ってキラキラと輝く坊主頭がよく似合っている。
「テナちゃんよぅ……。一応、今は商売中なんだけど……」
厳つい顔の割りに、情けないような弱々しい声を出したその男を、テナと呼ばれた少女はむぅ、と見上げた。
「……その割りに、お客さんは来ていないのね?」
「あたっ! 痛い事言われたなぁ~……」
少女の言葉に顔をしかめたその男は、真面目な顔になってテナを見る。
「……アリアちゃんとはいつ仲直りするんだい?」
「知らないよ、あんな奴……」
男の言葉に、反抗するような言葉を言いながらも、テナの顔は少し陰りを見せる。
後頭部で束ねられている髪も、心なしか萎れているように見える。
そんなテナの様子に、やれやれと肩をすくめながら、男は話を変える。
「それで、パーティーを組んでくれる人の目星はついたのかい?」
「……いいや。即戦力になりそうな人は一人も……」
そう言ってから、テナは「はぁぁ……」と、深く息を吐く。
そんなテナを見つめていた男だったが、何か良い事でも思いついたのか、ニヤッ、と人の悪い笑みを浮かべる。そして、あくまでさりげなく話し始めた。
「……そういえば、俺の昔の知り合いに一人、世界樹攻略をやっていた奴がいてな……。今は現役引退をしているんだが……」
男の言葉に、机にべったりと倒していた顔をガバッ、と音が出そうな勢いで上げたテナは、男に尋ねる。
「……その人の事、教えてくれない?」
そんなテナの様子に、心の中でニヤリと悪い笑顔を浮かべながらも、実際はいつも通りの表情を作って、男は言葉を続ける。
「ハヤトって野郎なんだがな、そいつが冒険者をやっていたのは2年前までだ。俺が冒険者として戦っていたときに、俺のチームのリーダーだった野郎だ。俺が知る中じゃあ、そいつは一番強かったな」
「……その人、今何歳?」
「今か? あの時は17だったから、今は19かな?」
テナの質問に答えた後、初めて男はニヤッ、と顔に笑みを浮かべる。そしてテナの方に顔を寄せ、秘め事を話すときのように、小さな声でテナに尋ねる。
「……そいつの住所、教えて欲しいか?」
男の言葉に、テナはこくこくと勢い良く頷く。
素直な娘だなぁ、と思いながら、男はそのハヤトの住所をテナに伝える。
それを聞き終わった瞬間、テナは勢い良く部屋を出て行き、先程とは違うたったっと元気な音を立てながら走っていった。
少女の走っていく音を聞きながら、男は小さく呟いた。
「……ハヤト……。お前が責任を負うことなんて、無いんだぜ……」
そう呟いた男の顔は、何処か悲しげでもあった。
××××××××××
「はぁ、はぁ、はぁ。……ここが……」
恐らく走ってきたのであろう、息を切らしたテナは、一軒の家の前に立っていた。
その家は、割合綺麗に整備されているものの、そこら辺の家との違いのよく分からない物だった。
冒険者という仕事は、他の職業と比べると収入はかなり多いため、その住居は結構大きなものである事が多いのだ。
そのためやはり、その家の周りに立ち並ぶ家の中には、明らかに大きなものも存在する。
これには冒険者の職業がどういう物かという事がかなり関係してくるのだが、この話は後にしよう。
軽く息を整えたテナは、手をゆっくりと上げ、その家の扉を叩いた。
5秒、10秒と経過し、もう一度扉を叩こうかとテナが思い始めた頃、中から声が聞こえてくる。
「……はい、何でしょう?」
「私、テナ=レスターといいます。ハヤト=シラキさんですか? あなたに話があって来ました」
テナの言葉に、ゆっくりと扉が開かれる。
武装しているテナの姿に、目を鋭くさせる青年。明らかにテナの事を警戒している。
しかしテナは、青年のその姿に対して驚きを感じていた。
雑貨店の男から聞いていた情報では、ハヤトという青年は2年前まではかなりの腕を持つ冒険者だったらしい。それが突然冒険者を止めたのだから、てっきりテナは、ハヤトは腕や目を失っていて、義手なり義眼なりを使っているものと考えていたのだ。
それが実際は、ハヤトは義手や義眼がないどころか、特に特徴の見当たらない、いたって平凡な風貌の青年だったのだ。あえて特徴を挙げるとするならば、その髪が、ここら辺ではあまりいない黒だったことだろうか。
本当にハヤトという青年は冒険者だったのか、心の中に不安が芽生えるテナだったが、すぐにこの考えを取り消す。
人を見た目で判断するのは、愚かな行為だという事を思い出したからだ。
「2年前まであなたが冒険者だった事を聞いて来ました」
テナの言葉に、ハヤトは明らかに目付きを険しくさせる。
何かを言おうとしたハヤトだったが、何を思ったのか、開きかけた口を閉じる。
恐らくはここでテナを追い返して、余計な騒ぎを生み出すことは避けようと考えたのだろう。
「……どうぞ、入ってください」
と、テナを自分の家の中に招き入れた。
家に通されたテナは、その家が意外と綺麗に整えられていたことに驚きながら歩く。
ハヤトに連れられてロビーまで案内されたテナは、話を切り出した。
「私が話したいのことは、一つだけです――」
テナの言葉に、ハヤトは怪訝そうな目を向ける。「何を言い出すんだこいつは?」とでも言いたそうな顔である。
それを無視して、テナは言い放った。
「――私と、パーティーを組んでください!」
どうも、吉良義人です。
この作品が初投稿なので当然ですが、小説の後書きを書くのも今回が初めてです。
何を書こうかな……?
とりあえず、今回の作品について少し。
今回の字数は2000文字を少し越えた程度でしたが、次回からは5000文字以上を目標に書いていこうと思っています。
また、この作品の投稿は一週間ごとの予定です。
ですので、次回の投稿は一週間後の1月8日の午前0時を予定しています。
では、そろそろ締めを。
この作品「世界樹のはやぶさ」をご一読いただき、まことにありがとうございます。
作者はこの作品についての批評や感想、気になった事なども大歓迎の姿勢で臨んでいくつもりですので、気軽に感想欄に書き込んでください。
では、今回は本当にありがとうございました。




