第十三話 憤怒
こんにちは、作者の吉良義人です。
今回の話は過去最短です。(とは言っても、これまで10話くらいしか投稿していませんが……)
読者の皆様を満足させる事が出来るのか不安ですが、どうぞよろしくお願いします。
「……エルダ、よくもぬけぬけと……!!」
ルイは憤怒の表情を顔に浮かべ、額に青筋を立てながら、早口に何事かをまくし立て始めた。所々聞こえてくる言葉から考えてみるに、恐らくはエルダに対する罵詈雑言だろう。
「……は?」
「一体何をやったんだ?」と言いたげな表情をハヤトはエルダに向ける。
ルイの鬼のような形相と剣幕に、うんざりとしたような顔をしていたエルダは、ハヤトのそんな顔に気が付き、小さな声で言ってくる。
「私が学園区で教師をやっている事は話してあるだろう?」
「本当だったの!?」
「……まだ信じていなかったのか……。それはともかく、前にここの娘、アリア=フェルノの担任をした事があってな。その時に私がアリアに厳しく接していたら目を付けられたようでな。事ある度に敵視されるんだよ」
「……なるほど」
「おい! 聞いているのかエルダ!」
ルイの怒鳴り声に、エルダは明らかな苛立ちを顔に浮かべる。
「……何だよジジィ……」
「誰がジジィだ誰が!! 貴様はいつもそうだ。この前だって……」
額に青筋を浮かべながら、ルイは再び、エルダの悪口を早口にまくし立て始めた。
明らかに面倒くさそうに、エルダとハヤトはうんざりとしていたが、やがて後ろから聞こえてきた声に振り返る。
「教官にハヤトさん!? 来ていたんですか!?」
「……? ああ、フェルノさん。もう戻ってきていたんですか」
「あ、はい。昨日の夕刻頃、家に戻りました。ハヤトさんは?」
「……僕も夕方辺りまではこの家の前にいたんだけど……。すれ違いだったのかな……?」
昨日の自分の行いを後悔し始めているハヤト。そんなハヤトの様子を見ていたエルダは、気が付いたように言った。
「ハヤトが新しくパーティを組んだっていうのは、アリアとだったのか……」
「いや、元々はテナって奴と組んでいたんだ。アリアとは第10層のテスタで会ってね。そこから成り行きでパーティを組んだんだ」
「……へぇ。テナと……」
何やら考えている様子のエルダを不思議そうに見るハヤト。そんなハヤトの耳に、恐ろしく殺気の込められた声が聞こえてくる。
「……貴様、アリアとパーティを組んでいると言ったな……?」
「え、えぇ……。まだ期間は長くないですが、一応第10層から第21層まで、一緒に攻略しました」
何だか面倒くさそうだと、諦めの篭もった溜め息を小さく吐いたハヤトに、ルイは俯き、小さく震えながらゆっくりと声を出した。
「……アリアが怪我をした事について、何か知っているか……?」
「え、あ、その事は……」
ルイの問いかけに対して、咄嗟に誤魔化そうとしたハヤトだったが、すぐにそれを諦める。
ルイは大が付く程の名家の頭領だ。人の噓を見破る事に関しては、人一倍得意だろう。そうでなければ、商売などでここまで金を作る事は難しい。
「第21層のカナレアの直前で、僕たちは一体の魔物と交戦状態に入り、そしてフェルノさん……紛らわしいですね、アリアさんは負傷を負いました」
「……負傷を未然に防ぐ事は出来なかったのかね?」
「申し訳ありません。僕の力がもっとあれば、それも可能だったのですが……」
「いいさ、別に。冒険者にとって、攻略中の負傷などは日常茶飯事だからな。それが分からないほど、私は落ちぶれていない」
ルイの言葉に、ハヤトは密かに安心したような息を吐く。
心の中では、アリアを負傷させた事を知ったルイが、自分に向かって報復のような事をやらないかと恐れていたからだ。どうやらそれは、いらぬ心配だったようだが。
何やら俯いていたルイは、先程の凄味の篭もった声で、再びハヤトに尋ねてきた。
「ところで君、アリアとパーティを組んでいると言ったが、間違いのような事は、起こってないのだろうね?」
「……間違い?」
「お父様!? 何を言っているのですか!?」
ルイの言葉に、アリアが頬を紅潮させながら抗議の声を上げる。
「いやだって~、気になるじゃないか~」
「だからって、娘の前でそういう事を聞きますか普通ッ!?」
「それで、実際の所、どうなのかね? ええと……」
「あ、ハヤト=シラキと言います」
「あの、聞いているのですかお父様ッ!?」
ルイは、アリアの抗議の声を徹底的に無視する構えを取る事にしたらしく、何一つアリアに対して言葉を発しない。
「そもそもですね、ハヤトさんは冒険者とはいえ平民の一人ですから、貴族の私がそういった事が出来ない事はお父様を分かって……」
そう言いながら、アリアの顔が切なげにゆがめられる。
それを見たルイは、何かに気が付いたように目の色を一変させ、ハヤトとアリアの姿を交互に見る。そして「ぐぬぬ……」と何やら呻き声を上げながら、拳をわなわなと震わせる。
「……ハヤト殿」
「な、何でしょうか。ルイさん」
「……このルイ=フェルノ。一生に一度の頼みがあります」
「……聞きましょうか」
ルイの全身から発せられてくる、妙な迫力に気圧され、ハヤトはごくりと唾を飲み込みながら、ルイの言葉を待つ。
何度も深呼吸を繰り返したルイはやがて、きっ、と目を力強く見開いてハヤトを見据え、そして言った。
「この私と、決闘して頂きたい!!」
「……お父様?」
アリアの呆然としたような声が、部屋の中に響いた。
『第十三話 憤怒』、如何だったでしょうか。
僕は個人的に、こういった親バカな大人が激怒をする、といった展開が結構好きだったりするので、こういう場面は書いていて楽しいです。
それでは次回も、どうぞよろしくお願いします。




