関口陽/違法「正義の味方」アータヴァカ (4)
あたしらの仲間で、中国の風水で言う「龍脈」の「気」を操る事が出来る「エメラルド・ダイナソー」が、膨大な量の「気」を送ってきてくれた。
辺り一帯の「龍脈」が緑色に輝いて見える……と言っても、いわゆる「霊視」で、今は日本で待機中の、あたしの相棒みて〜に霊感が完全に0の奴には、何も見えね〜し、何が起きてるか判んね〜だろうけど……。
『マズい事が起きた』
と、その時、肝心の「気」を送ってくれたエメラルド・ダイナーから慌てたよ〜な声で無線通話が届く。
はっきり言って、あいつは「龍脈の気を操る」能力の御蔭で、技量はともかく、パワーだけなら、下手な「魔術結社」の総帥クラスも裸足で逃げ出すレベルだ。
そんなアイツが慌ててるって、何が起きてる?
『そっちに送った「気」の一部を奪ったヤツが居る。それも複数人』
「嫌な予感しかしないな。ここまで目立つ術を使ったら……気付く奴も出る。予想して然るべきだった」
さっき、ビルの上階から下りてきた仲間のミラージュが、そう言った。
「だが、あの邪気を浄化するには十分だ。このままやるか?」
韓国チームのリーダーの「玄武」が、そう言った。
「そうだな」
「あたしも賛成」
「同じく」
「派手にやりますか」
「私も賛成だ」
あたし含めた日本チーム2名と、韓国チーム4名は、全員同じ意見。
「オン・マリシエイ・ソワカ」
「オン・バサラ・クシャ・アランジャ・ウン・ソワカ」
日韓合せて6人は、次々と呪文を唱え……。
あたしの守護尊である金剛蔵王権現の姿。
ミラージュの守護尊である摩利支天の姿。
韓国チーム4人の守り神である朱雀・玄武・白虎・青龍の姿。
もちろん、実体は無いし、霊感の有るヤツにしか見えないが……それらが空中に姿を現わし……。
金剛蔵王権現と朱雀が炎を放つ。
摩利支天がオレンジ色の矢を撃つ。
玄武が緑色の、青龍が青の、白虎が白の光を……それらが、ビルの上階の邪気を消し去り……。
「お……終ったの?」
日本のレンジャー隊の副隊長兼パワー型が、そう言った。
「いや……マズい事になった」
ミラージュが、そう答える。
次の瞬間、爆発音。
犯罪者達の間で「狙撃手の潜伏位置を推定するアプリ」が出回ってるんで……多分、そこが狙われたんだろう。
「ま……また……このパターンかよ……」
日本から来たレンジャー隊は……別名「呪われた小隊」。
ここに居る4人を除いて、次から次へとメンバーを補充する度に、すぐに補充メンバーが殉職する、という酷いジンクスが有る連中だ。
しかし、毎度のように何故か生き残る4人は、その分、どんどん修羅場を潜り続けた経験豊富な精鋭と化してるんで、連中の上層部も馘にしたり、現場から外す訳にはいかないらしい。
「仲間死に過ぎて、感覚、麻痺してません?」
「今更、何、言ってんだ……」
「それより……来たぞ……」
「えっ?」
そして……次々と、黒いSUVが近くに停車し……。
「単なる……違法駐車じゃなさそうだな……」
SUVの一台から出て来たのは……バカデカいモフモフの……狸人間。
反対側からやって来た別のSUVからも……明る目の茶色の熊人間が3匹。
「おい、この中に、『熊おじさん』と『モフモフ』の親玉は居るか?」
あたしは、後方支援チームに、そう訊いた。
『悪い。大概の顔認識ソフトは、変身前の人間の顔にしか対応してない』
後方支援チームからはツレない返事。
他にも2つの犯罪組織の戦闘要員が次々とSUVから出て来る。
そして……熊と狸どもの体から立ち上るのは……。
「こいつらか……あたしらの仲間が送った『気』をガメやがったのは……」
『あと、3匹の熊さん達は、かなり厄介な相手だぞ』
「判ってるよ。全員、物理的なパワーは、あたしが着てる強化装甲服より上で、『気』の量も、1人1人が味方のを合わせたのより上で……」
『加えて……』
「加えて? 何、まだ、マズい事有るの?」
『その熊達は……こっちの推測が正しけりゃ……』
「だから、何?」
『連携技が得意な連中……下手したら「熊おじさん」本人より厄介な「熊おじさん」直属の親衛隊だ』
おい、待て。
単なるチート熊じゃなくて……群で行動するチート熊かよ?




