関口陽/違法「正義の味方」アータヴァカ (2)
どんどん、擬似ゾンビの「気」が高まっていく。
こいつの目が見えてるかどうかは判らねえ。
しかし……多分、真ん前に、あたしらが居る事は「気」で認識出来てる筈だ。
そして、さっき、自分にブチ当たった霊力を込めた弾丸を発射した奴の存在も……。
「気」や「霊力」を込めた武器を、魔物や悪霊が肉体を持つ存在に取り憑いたヤツに使う場合……一定時間、その「武器」が体内に留まってくれないと効力が落ちる。
さっきの弾丸には結構な霊力が込められてた。
けど、弾丸の……何つ〜か物理的な威力もデカ過ぎた。
体を貫通したせいで効力は半減し……「どこから発射されたか?」の情報だけが残った。
あたしにとっても初体験の事だ。「魔法や呪詛を遠くから使った奴の場所が(魔法的な意味で)特定される」って事は良く有る話だが、「霊力を込めた飛び道具を遠くから使ったら、使った奴の場所が(これまた魔法的な意味で)特定される」なんて初めて見た。
そして、この「気」の量……多分、この擬似ゾンビは、自分をブチ抜いた弾丸を放った奴が居る辺りに、結構洒落いならねえ量の「邪気」をブチまけるつもりらしい。
マズい。
狙撃手と……あと、多分、着弾観測者が死ぬだけじゃ済まねえ。
狙撃手が居る辺りが「邪気」で汚染され、ちょっとした心霊スポットになりかねねえ。
あたしも「気」を高め……。
「があッ‼」
「吽ッ‼」
あたしと擬似ゾンビの叫びが、ほぼ同時。
だが、あたしが「気」を放つのが一瞬だけ先だった。
擬似ゾンビは、狙撃手を攻撃するのに使つもりだった「気」を防御に回してくれた。
助かった……けど……あたしも「気」を消耗。地面に膝をつく。
擬似ゾンビは……多分、これは「体が覚えてる」だけなんだろう。
けど、隣りに居るレンジャー隊の姐さんは、前に進んで来た擬似ゾンビと両手を組み合わせて……。
ああ、やっちゃったよ。
あっさりと持ち上げられた。
擬似ゾンビが押し合う事を選択してても……多分、その押し合いでも負けてただろう……。
「前から思ってましたけど、それ、ど〜考えても欠陥品でしょ……。パンチ力上げたり、重い荷物を持ち上げられるよ〜に成りたけりゃ、腕だけ鍛えりゃいい筈がねえっすよッ‼」
「判ってるよ、そんな事はッ‼ でも、欠陥品と判っても、新しいの導入すんのに、何年もかかんのッ‼ お前らと違って、お役所はフットワークが軽くないのッ‼」
「わかりましたよ……じゃ、あと、1分だけ持ち堪えて下さい。その間に、何とか回復しますんで……」
クソ……回復するまで、1分で済むのか?
また、このパターンかよ。
例の「魔薬」は大概のヤツには普通の「麻薬」だ。それも、オーガニックな無農薬・有機栽培の植物由来成分100%の……。
でも、「魔法使いのなりそこない」がキメちまうと、霊力や霊視能力が暴走し、魔物や悪霊を招き寄せてしまう。
つか、かなりの確率で、危険い「異界」への門まで開いちまう。
ついでに、「魔法使いのなりそこない」は、あたしら「魔法使い」より……多分、数が多いし、どこに居るかも判んねえ。調べりゃ判るだろうけど、とんでもない手間がかかる。
多分、今回も、他の「組」の縄張りで、んなマズいクスリをさばいてた奴らが──クスリ売って金儲けするのが目的じゃなくて、敵対組織の御膝下で「霊的な人間爆弾」を大量生産する為で、早い話が商売の皮を被ったテロ攻撃だ──地元の恐いお兄ちゃん・お姉ちゃん達に襲撃されて、一か八かで自分で「魔薬」をキメちまった、って訳だ。




