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君は何度でも嘘をつく  作者: じゅん
水星支配編
6/9

5話 「閃光②」

「確か昨日だった気がします。」

 エリスが閃光事件について話し始めた。

「私はその時寝ていたのでよく覚えていないんですが⋯」

「知ってる情報だけでもいいよ」


「で、では、おかあさんとニュースから聞いた情報から私が推測して話しますね」

 エリスは声が少し震えていた。

 エリスは極度の人見知りなんだ。

 自分から話してくれるなんて相当珍しいことなんだろう。

 でも、本当になんで俺にはこんなに話してくれるのだろうか。

 エリスが考えていることはよくわからない。

「分かった」

 正直、少しでもその"閃光事件"について知りたい。

 もしかしたら、俺の意識がなかった理由やコメットとアネットの行方もわかるかもしれない。



「多分、12時頃です。事件が起こったのは」

「てことは、エリスはお昼寝してたのか?」

「そ、そうですね」

 エリスは少し動揺していた。

 俺がそこに突っかかってくるとは思っていなかったのだろう。


「その日は、エリス1人でいたのか?」

「いや、その日もおかあさんとおとうさんは仕事に行っていたのですが、執事がいたので⋯」

「執事って⋯エリスはお嬢様なのか?」

 とても家が宮廷などのようには見えない。

 それに、エリスの身なりは至って普通だ。

 お嬢様とは思えないな。


「まあ、そんなところ、なんですかね。訳あって、今は人目につかないように少し外れたところに住んでいるんです。」

 訳、とはなんだろうか。

 そう気になったが、俺は聞かないことにした。

 俺でも分かる。

 エリスはとても話したくなさそうな顔をしていた。

「いつもおとうさんは家に帰ってこないし、おかあさんは年中無休で仕事に行ってるんです。だから執事がいたんですが、今日は多分来ません。アーサーがいるので」

 エリスはいつもより少し嬉しそうに言った。

 執事とはそんなにつまらないのだろうか。

 アニメとかだと、執事は家事とかするだけで、特に遊んであげたりはあんましていないイメージがある。


「すいません。少し話がズレてしまいましたね」

「いや、エリスのことについて知れたし、俺は全然大丈夫だよ。というか、俺から振った話題みたいなもんだし⋯」

「い、いえ、私が話を広げてしまったので⋯」

 暫くの間沈黙が流れた。

 俺も多少人見知りではある。

 人見知り同士だとどうしても沈黙の時間が長くなるのはなんとかできないのだろうか。



「で、では、本題に入りますね」

 俺は一つも情報を聞き逃さないように身構えた。

 傍から見たら、まるで俺は事情聴取をしている警察のように腕を組んでいた。

 エリスもそう感じたのか、少しだけたじろんでいるように思えた。

「え、えっと、12時頃のことです。あ、ここまでは説明しましたね」

「そうだな」


「突然、空から光が降ってきたんです」

「空から、光⋯?」

「はい、光って言ってるんですが、目で見えたらしいんです。映像にもちゃんと周りの光と比べて一段と光ってる感じ⋯と言うんでしょうか」

 光と聞くと真っ先にコメットが浮かび上がってくる。

 俺は嫌な予感がしたが、気にせずエリスの話を聞き続けることにした。


「えっと、落ちた場所は⋯ここから1キロ程先の商店街の中ですね。窓から見えると思います」

 エリスは隣にある窓からその商店街に指を指した。

 商店街は非常に美しいものだった。

 建物は中世ヨーロッパの雰囲気がある。

 オレンジ色の屋根にベージュやグレーの壁。

 そんな家が、ギチギチに詰まっている。

 エリスの言い分を聞くところ、ここは田舎のようなものだと思う。

 水星は地球よりも発展している星なのかもしれない。

 他にも、「水」星というだけあって、街の中には水路などが多く作られている。

 地球の町で言う所の⋯どこだっけな⋯


「ベネツィアだ!」

 俺は何を思ったのか声に出していってしまった。

「ベネ⋯ツィアって、なんですか⋯?」

 エリスは困惑している。

 そうか。エリスは水星に住んでいるからベネツィアを知らないんだ。

「うーんと、街の名前だよ」

 地球にある街ということはあえて伏せておいた。

 確か戦争中なんだよな。

 エリスが俺を地球人だと知ると俺にとって不利になるかもしれない。

 最悪通報されたり⋯。

「そうなんですね⋯」

 また暫くの間沈黙が続いた。


「ごめん。また話遮っちゃったな。続けてくれ」

「いえいえ、私もつっかかっちゃったのが悪いので。」

 エリスはいつもどうり謙遜した。

 俺は別にそんな謙遜しなくてもいいのにと思ったが、言うのは辞めておいた。

 言ったところで、どうせまた謙遜するだけだろう。



「えっと、ど、どこまで話しましたっけ⋯?」

「確か商店街に落ちたってところまで」

「そうでした!思い出しました」


「えっと、商店街に落ちたのは別に問題なくて⋯それだけでは事件にならないのですが」

「誰かに当たったとか?」

「そ、そうなんです」

 エリスは「え、なんでわかったの?」みたいな顔をしている。

 これに関しては本当にたまたまなだけなんだが、エリスに俺がすごいと認識されたいので、「意図的に当ててやったぜ」みたいな勝ち誇った顔をしておいた。


「王族の一人に当たったらしくて⋯今犯人は裁判中です。ハレーさんが怒ってたので有罪にはなると思いますが⋯」

「え、犯人捕まってるのか」

 俺はなぜだか知らないが、犯人は今も逃亡中なのだと思っていた。

「は、はい。光が落ちてきたところのすぐ横に倒れていたみたいで、すぐに連行されました」

「エリス、その犯人の写真とか、あったりしないか?」

「ちょっ、ちょっと待っててくださいね。今ネットで調べます」


 エリスはスマホをポケットから取り出した。

 あまり慣れていない手つきでスマホを操作している。

「あ、あのー⋯検索履歴とか覗き見しないでくださいね?」

「流石にそんなこと⋯しないよ」

 俺も少しは見ようか頭によぎったが、俺はいいやつなので見るわけがない。

 というか、見られてはいけない検索履歴があるのだろうか。



「み、見つけました。この人です」

 エリスはスマホを見せつけた。

 そのスマホに写っていたのは⋯コメットだった。


「は?」

「ど、どうかしたんですか⋯?」

「エリス、本当にこの人が犯人で間違いないんだよな?」

「は、はい。調べたらその人がたくさん出てきたので間違いないと思います」

 エリスの顔からは困惑と恐怖の感情が見て取れる。

 俺が急に勢いよく話して、動揺したのだろう。

 だが今は、それよりも閃光事件の方が問題だ。

 コメットが犯人ならば、コメットには当然判決が下されることとなる。

 最悪、王族を殺したのだから死刑になる可能性だってありえる。

 短い時間しか関わってはいないが、流石に死ぬとなると心にくるものがあるし、この作戦とやらも失敗に終わるかもしれない。


 「光」というのも、コメットが起こしたものなら納得だ。

 これは俺の予想でしかないのだが、コメットは宇宙船が攻撃された時に、俺とアネットを救うために能力を使って水星に着陸したんだろう。

「この人、判決どうなると思う?」

「ハレーさんが過去に例を見ないくらい怒っているので、多分死刑でしょうか」

「⋯」

「アーサー?どうかしましたか?」


 俺は今、エリスに俺も犯人の一員かもしれないということを話そうか、ものすごく悩んでいる。

 俺は覚悟を決めた。

 このまま何もしないで時間が過ぎていけばコメットは有罪判決になるだろう。

「実は、俺その犯人と知り合いなんだ。多分、記憶はないんだが、俺も犯人の一員で⋯」

 俺はエリスに正直なことを伝えた。

「そ、そうだったんですね」



「エリスは俺を通報したりしないのか?」

「す、するわけないじゃないですか!私からは、アーサーが悪い人には微塵も見えません!」

 俺は安心した。

 人生というものは意外となんとかなるものなんだ。

 このまま流れに身を任せていけばなんとかなると思えてきた。


「よかった。ありがとう、エリス」

「いえいえ」

 エリスは照れくさそうにしている。

 そんなエリスの顔を眺めながら、少し間をおいていった。


「エリス、通報しないでくれるなら、エリスは俺の味方って認識でいいか?」

「も、もちろんです」

「なら、コメットを無罪にするのを手伝ってくれないか?」

「それは⋯嫌です」

 前言撤回しよう。

 人生というものは、いつ何時も上手くいかないものだ。

 今、エリスがそれを証明してみせた。


「そ、そうか⋯。ちなみに理由は?」

「そんなの、決まってるじゃないですか」


「今日、アーサーには、一日中私と付き合ってもらうからです!」

本当は前の話でここまで収めたかったけど、長くなりすぎた⋯

次回はコメットの方に話が行きます!

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