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君は何度でも嘘をつく  作者: じゅん
水星支配編
5/9

4話 「閃光」

「あっ、おかあさーん!起きたよ!」

 目を開けると、そこには小さな女の子がいた。コメットではないな。

 その少女は黒髪で、おしとやかな感じだ。

 この子が同級生にいたら、俺は鼻血を出して貧血で救急搬送されていたことだろう。

 俺は少しデジャブを感じた。

 しかし、今回は記憶を失っていない。だから大丈夫だろう。


「えっと、ここは?」

 少女は宇宙人が喋った!!とでも言うような目で見つめてきた。

「す、水星です⋯」

 少女は恥ずかしそうに頬を赤らめながら言った。

 俺に惚れた?嫌、ないな。多分、ただ恥ずかしがり屋なだけだろう。

 というか、ここは水星なのか。

 そしたらこの子にとって俺は宇宙人なのかもしれない。

 水星人も、見てくれは地球人と全く変わらない。


「な、名前を聞いてもいいかな?」

「それは個人情報なので⋯。すいません」

「そ、そうか」

 少女は名前すらも教えてくれなかった。

 俺が嫌われてるのかな。

 そんな事を考えたが、多分違うだろう。

 ただ人の家にいる見知らぬ人に名前を教える義務もない。

 この子は人と絡むのが苦手なだけなんだろう。


「まあ、一緒にいる人の名前を知らないのはなんか嫌だし、俺の名前は教えておくよ。俺の名前はディープルート・アーサー。気軽にアーサーとでも呼んでくれ」

 まあ、本音はこんなかわいい子に呼び捨てされるなんてなんかいい!からだが。

「アーサー⋯呼び捨てで呼んでもいいんですか?」

 少女はモジモジしながら聞いた。

 その表情が本当にかわいい。

 小学生の頃ならほんとに死んでいたかもしれないな。

「別にいいよ。そんな気にしないし」

「では、よろしくお願いします。アーサー」

 少女は少し照れくさそうにしながら言った。

 かわいい。漫画でよくある、ハートの目に今なっているかもしれない。



「なんか、アーサーが名前を教えてくださったのに、私が教えないのも失礼ですかね」

「いや、別にそんなことはないが⋯」

「わ、私の名前はラブロック(Lovelock)エリス(Eris)です」

 少女、いやエリスは、俺の言葉を無視して名前を教えてくれた。

 聞こえていなかっただけかもしれないが。

 だが、これは結構な進展だ。

 さっきまで俺に結構な塩対応だったが、名前は教えてくれた。

 ちょっと気を許してくれたと見ていいんだろうか。



 ドンドンドン

 誰かが階段を登ってくるような音がした。

「あ、起きた?」

「おはようございます」

 俺は一応挨拶をしておいた。

 見知らぬ人だろうが、俺はちゃんと挨拶をする礼儀の正しい人なのだ。

「ご、ごめんなさい、アーサー。紹介しますね。この人が私のお母さんです」

「よろしく」

 エリスのお母さんは、俺に優しく手を振って言った。

 エリスのお母さんも容姿端麗だ。

 家族揃って美女ばっかり。遺伝の力というのは恐ろしいものだ。


「エリス、お母さんこれから仕事だから。朝ごはん下に置いとくね。あ、アーサー?さんも一緒に食べてって」

「分かった!お母さん!いってらっしゃい」

 エリスはお母さんに対しては敬語じゃないのか。

 やっぱり、ただエリスは新しく人と関わるのが苦手なだけのようだ。

 けっして俺のことが嫌いとかそういうわけではないだろう。

「うん、いってきます」



 エリスのお母さんは部屋を出ていく前に俺に手招きをした。

 近くにエリスがいたから、最初はエリスに対してしているのかと思った。

 でも、エリスは反対側を向いて、窓の外の景色を眺めている。

 この状況から察するに、俺はエリスのお母さんは俺に対して手招きしているのだと判断した。

 俺はエリスのお母さんのところに行った。


「なにか俺に用ですか?」

「いや、特にそういうわけじゃないんだけどさ。アーサーさん、今日一日ここに泊まってく?」

「多分、そうしますかね」

 俺は曖昧に答えた。

 正直ここがどこかも分からないし、エリス達を信用していいのかもわからない。

 それに、コメットとアネットの行方も心配だ。

 今日中にも状況を把握したらでていくかもしれないしな。


「まあ、じゃあ泊まってくってことで一旦はいいかな?」

「はい」

「そしたら、ちょっとエリスについて話しておきたくて⋯」

 エリスのお母さんはなにか含みをもたせた言い方をした。

 俺からみて、エリスはそんなにヤバイやつには見えない。

 強いて言うなら人見知りなことぐらいだろうか。

 でも、全然普通にいそうな感じだ。子供なら尚更だろうし。


「実はね、エリスって極度の人見知りなの」

「そんなことなさそうですけど⋯?」

「まあ、アーサーさんから見たらそう見えるよね。でも、それはアーサーさんに対して特別なだけ」

「というと?」

「あの子、普段なら初対面の人に話しかけられたらその人と3mぐらい距離を置くの。目を合わせようともしないし、何を聞かれても自分から言葉を発そうとはしない。なんというか、ずっとハレー様に監視されているような感じかな」

「ハレー⋯様?って誰ですか?。」

「あぁ、そっか。アーサーさんは知らないのか。えっと、ハレー様はこの国の支配者って言うのかな。あんまりいいたくはないんだけど、恐怖で人を支配しようとしてるから、星民に慕われているのと同時に忌み嫌われている人。まあ、私はいいところもたくさんあると思うけどね」

「なるほど。ということは、エリスの人見知りは相当なものっぽいですね」

「そう、普段なら絶対にエリスから話すことはない。というか、アーサーさんを助けて家に連れて行こうとしたのも、エリスなの。それに、自分の部屋に寝かしておくなんて、おかしいと思わない?アーサーさん、エリスになにかした?」

 エリスのお母さんからは、すごい気迫を感じた。

 今にも押しつぶされてしまいそうだ。

 それほど、エリスのことを大事で、心配しているんだろうな。

「いや、特に俺からは何も。というか、そもそもエリスにここにつれてこられた時、僕記憶ないですし」


「まあそうだよね。じゃあ一つだけ。なんでエリスはアーサーさんのこと呼び捨てで呼んでるの?エリスの性格的に、それだけは絶対にありえないと思うんだけど」

「そ、それは名前を教えたときに呼び捨てでもいいよと言ったら呼んでくれただけです」

 俺は、自分の癖に刺さるからそう呼んでほしかったなんて言えるわけがない。

 でも確かに、話を聞いている感じ、エリスが俺に対しておかしいのは事実だ。

 俺が話しやすいやつだと思われているのか、はたまた下に見られて舐められているのか。

 後者は多分ないだろうが、そうだったら悲しいな。

「そっか」

 エリスのお母さんは少し心配していそうなテンションで言った。

 いいお母さんだなあ。

「もうこんな時間か。私、もうそろそろ仕事行くから。アーサーさん、エリスを任せるね」



「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。泊まっていくなんて言ってな⋯」

 そう言おうとした時には、エリスのお母さんはいなくなっていた。

 今日一日だけ仕事ってわけでもないだろう。いつもはどうしているんだろうか。


「何話してたの?」

 エリスがドアの隙間からかわいい顔をのぞかせて聞いてきた。

「特に何もないよ。そうだ。エリス、今日はエリスの家にお世話になるから、よろしくね」

「アーサー、泊まっていくんですか。よ、よろしくお願いします」


「エリス、一つ聞きたいことがあるんだけどさ」

「な、なんでしょうか?」

「俺の仲間を知らない?」

「仲間⋯ですか」

「アネットとコメットって言う人。」

「知らない⋯です。私がアーサーを見つけた時は、アーサー1人しかいませんでした」

「そうか⋯」

 正直、俺はアネットから作戦の説明をされたがいまいちよくわかっていない。

 もし水星を壊すとかだったりしたら、エリスと交友関係を結んでおくと心が痛くなる。

 そこら辺の話を、アネットからもっと詳しく聞きたいんだがな。


「あ!でも、そう思えば⋯」

「お、エリスなんかわかるのか?」

「はい、アーサーを見つける前少し変なことがありました」

「それはどんなことだ?」

「えっ、えっと、少し、長くなるので下で朝ごはん食べながら喋りませんか?折角お母さんが作ってくれたのに、冷めちゃうと美味しくなくなっちゃいますし」

 エリスは少し汗をかいている。俺が顔を近づけすぎて緊張したのかもしれない。

 俺にはちょっと心許してる?ってだけでもともとはめちゃくちゃ人見知りなんだもんな。

 俺がエリスにテンションを合わせていかないといけないよな。反省。

「そうだな。そうしよう」


 そう言って、俺とエリスは階段を降りてリビングに向かった。

 リビングのテーブルには美味しそうなご飯がおいてあった。

「あの日に水星で事件が起こりました」

 エリスが話し始めた。いつもよりも真剣に話しているように感じた。


「その事件の名前は"閃光事件"です」

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