3話 「水星の子」
ここは太陽系第一惑星の水星。
「余はこの星の最高権力者のシャドウミア・ハレーである」
「諸君、道を開けよ」
星民達はその声を聞いた瞬間、すぐさまハレーのための道を作った。
みんな地面にひれ伏しており、誰も反逆しようとはしていない。
ハレーはいつもどうり、とても満足そうに道を歩いた。
しかし、ハレーは不機嫌になった。
星民の1人が、ハレーの行く道を防ぐように前に立っている。
「なんだ、お前は。下民の分際で余を見つめるでないぞ?」
「まさか余に惚れてしまったのか」
「だが、すまない。余は結婚を考えていないもので」
「違う!!お前、さっき俺の娘に何をしてきた!」
「この星の最高権力者にお前とは失礼な。下民に教える義理はないが⋯」
「ふむ、だがそんなに気になるのなら見せてやろう」
ハレーは走り出し、反逆してきた星民の肩に手をおいた。
星民の顔が強張る。
「ダークリベレーション」
闇が星民を覆い、突き刺すように体に入っていく。
その闇は体を貫通し、星民にたくさんの穴を開けた。この間、約0.1秒。
星民から血が吹き出た。星民は遺言を残す暇もなく死んだ。
これを見て、星民達はさらに頭を深く下げた。
全員、恐怖で神経が機能していない。
「あの下民も娘と同じ結末を辿ってさぞ嬉しいことだろう」
「他の下民も、そんなに深く頭を下げれるのであれば最初からそうせい。地面を壊してもよいのだから。もちろん、弁償するのはお前らだがな」
ハレーはハッハッハッハッと笑いながら去っていった。
「やはり、あの子は君主に向いていない」
「もし私が標的になったらどうしよう⋯」
「恐ろしい子じゃのぉ、『水星の子』は」
ハレーが立ち去った後、ここぞと言わんばかりに星民のハレーに対する罵詈雑言が飛び交う。
薄々ハレーもこの事に気づいていた。
しかし、ハレーの独裁が続いているのは彼の圧倒的なパワーのおかげだろう。
星民たちは、こんな不満を抱えながらも、ハレーに従うしかなかった。
「お坊ちゃま、おかえりなさいませ。お父様がお呼びですよ」
ハレー側近のメイドが、ハレーのことを出迎えた。
「なぁ、メイド?いい加減そのお坊ちゃまという呼び方をやめてくれ」
ハレーはもうすぐ18になり成人する。
「分かりました、坊ちゃま」
「はぁ⋯」
ハレーはため息を付いた。
ハレーがため息をつく相手はこのメイドぐらいだろう。
というか、つけるほど仲がいいのは、このメイドの他にはいない。
「で、なんだ?その父の要件というのは」
「詳しくは聞いておりません。行って直接聞くのが得策かと」
「分かった。だが、下民の血がついたせいで服が汚れてしまってな」
「少し身だしなみを整えてから行くとしよう」
「ませてますね。お父様に会うだけなのに、年頃の中学生のデートですか」
「まさか、お父さんが坊ちゃまの好きな人⋯?」
「なわけないだろ!!」
「あら、そんな焦って。図星でしたか?」
ハレーはめんどくさがっている顔をした。
メイドはそれを見てものすごく愉悦に浸っている。
「⋯もういい。俺の部屋に行くぞ」
「あら、お父様ではなく私をデートに⋯?おうちデートなんてまた派手なことを」
「なんでいちいちそうなるんだ!いつものことだろ!」
ハレーはメイドの口が動きかけたのを見た。
しかし、もうこれ以上聞きたくないと思ったのか、自分の部屋に向かって歩き出した。
少し歩き、ハレーはハレーの部屋に到着した。
メイドも少し後ろでついてきている。
「おい、メイド。服を取ってこい。普通ので頼む。普通のだぞ!」
フラグがたった。こんなことを言われて、あのメイドは黙っちゃいない。
やはり、といったところだろうか。メイドはチャイナドレスを持ってきた。
真っ赤な布に花やら草やらの模様が描かれている。
「坊ちゃま、お洋服をお持ちいたしました」
「普通のっていったよな?」
ハレーは少し怒っているかのような顔でメイドを睨みつけた。
「おかしいですね。坊ちゃまはこういうものが好みだと思っていたのですが」
「ふっ、そういうのが好みなのはメイドの方じゃないのか?」
「余がチャイナドレスを来た姿を拝みたかったのであろう!」
ハレーは勝ち誇った魔王の様な雰囲気を醸し出している。
いつもは何も言い返せずただ負けていたが、今回は言い返してきてあのメイドも驚いているだろうと言わんばかりにハレーはメイドのことをニヤニヤ見ている。
「では、昨日部屋で見ていたあの動画はなんだったのでしょうか」
「ギクッ」
ハレーは昨日、夕ご飯の少し前に、部屋でチャイナドレスのロリっ子が流行りのダンスを踊っている動画を見て、少しニヤニヤしていた。これは紛れもない事実だ。
メイドは、その光景を部屋の外で見ていた。
夕食を持っていくところだったが、思わず収穫があり、小さくガッツポーズをしていた。
「あのチャイナドレスの動画の履歴は⋯」
「あーあー!もう降参だ!」
ハレーは少し涙目になっている。
メイドはその表情を見て少し満足気にしていた。
「次は本当に普通のを頼む」
「分かりましたよ」
メイドは一瞬裸エプロンでも持ってきてやろうかと思ったが、流石に自重した。
「こちら、お洋服です」
メイドは、今度はちゃんとした服を持ってきた。
金属の刺繍に豪華なレース、黒色の質の良いシルクを使った服。
中世ヨーロッパの貴族が来ていた服のようだった。
「今度はちゃんと持ってきたか」
「では、メイド、服を着せてくれ」
そう、ハレーはこの貴族服が自分で着れないのである。
いつもの普段着なら問題はないのだが、この服は例外。
ボタンとかがいろいろあり、ハレーにとっては難しすぎるのだ。
もちろん、メイドもこのことを認知している。
だからこそ、この服にしたのだろう。
「相変わらずおこちゃまですね。坊ちゃまは」
ハレーは言い返すことができなかった。
メイドはそのなんとももどかしいハレーの表情を見て満足していた。
「坊ちゃま、こんな感じでよろしいでしょうか」
「ふむ、まあいいだろう。では、父のところに行くとするか」
ハレーはため息をつきながら部屋を出た。メイドもその後に続く。
ハレーの部屋から、ハレーの父の部屋まではまっすぐ100メートルほどある。
いつもハレーはわざわざ自分の方から行かなければならないのにイライラしていた。
「うわっ!!」
ハレーが突然段差も何もないところで転んだ。
それに対し、メイドはハレーが転びきる前にハレーの手を掴んだ。
「危ないですね」
「あ、ありがとう。今回は感謝するぞ」
ハレーは少し照れくさそうだった。
「うわっ!!」
メイドは感謝されもう満足したのか、はたまたハレーをからかうためなのか、掴んでいたハレーの手を離した。
「すみません、坊ちゃま。ちょっと手が滑ったもので」
「絶対嘘だ。じゃあなんでそんなニヤニヤしているのだ」
「少しは見直したと思ったのだが。はぁ⋯」
「まぁ坊ちゃま、そんなことはどうでもいいじゃないですか」
「それよりも早くお父様のところにいかないと、怒られてしまいますよ?」
「別に怒られてもいいし、怒られる筋合いもないんだが。まぁいい」
そう言って、ハレーはまた歩き出した。
今度は何事もなく、ハレーの父の部屋にたどり着いた。
「私は外にいますね。坊ちゃまはお父様とお二人の時間を楽しんできてください」
「その含みのある言い方はやめてくれ」
ハレーはドアを開け、部屋に入った。
「おーい、父。ハレーが来たぞー」
「やっと来たのかハレー。遅かったな」
「まぁいろいろあったもんで。それよりも、早く要件を言え」
「分かった分かった。まあまずはこれを見てくれ」
そこには一隻の宇宙船が写っていた。中にはぼんやり3人の人影が見える。
「宇宙船が見えるだろ?多分、この宇宙船は水星に向かってきているんだ」
「ほう」
「それで、この宇宙船を撃ち落としてもいいか?」
「もちろん、いいに決まっているであろう」
「よかったよかった」
「もしこれがハレーのものであったらわしは殺されていたかもしれんからな」
「では、わしは屋上に行って撃ち落としてくる」
そして、ハレーの父は屋上に向かった。
そして、屋上にて
「よし、あれが標的か」
ハレーの父の視力は常軌を逸している。
軽く視力1000は超えているかもしれない。
「蒼海泡裂」
蒼海泡裂は、水を一点に圧縮し、それを標的に飛ばす。
その後圧縮した水を落とし、圧縮を解除、そして爆発させるという能力だ。
蒼海泡裂は見事、アーサー達の宇宙船に命中した。
そして、宇宙船は跡形もなくなった。
「よし、やったか」
主人公は今回なしということで!




